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幼馴染ともう一度  作者: BUG
18/49

健太の気づかい

 都電の撮影に出かけますが、雅哉の本音は、都電よりも由美乃を写したい、ですね。

 的場さんは、錦糸町にある場外発売所で馬券を買ってから、待ち合わせ場所の錦糸堀車庫前の上り停留所(須田町方面)に来るとのことだ。タイムリープ前の俺も、場外には大学生時代からよく通っていた。(学生は本来は馬券を買えないことになっていたが、身分証明書を提示するわけじゃないので、大学生だったとしても特に問題はなかったのだ)とは言え、さすがに小学生の身体で入れるわけもないので、しばらく記憶チートは使えない・・・ まあ、記憶を失わずに、由美乃と()()()()()()()()()()ができるまでは、そんな余裕はなさそうだけど・・・


 都電の写真を撮る、ということで、当日、俺は親父からカメラを借りた。もちろんデジカメなどは存在していない時代だから、フィルムカメラだ。フィルムは24枚撮りを2本つけてくれて、撮影後の現像費やプリント代を含めて誕生日プレゼントということにされた。


 「女の子が雪さんも入れて4人いるけど、さすがに都電ばかり撮影するわけにはいかないよな?」


 健太は24枚撮り1本しか持っていないので、できれば都電だけを撮影したいみたいだ。


 「いいよ、女の子達は俺の方で撮るから、健太は都電に集中しててよ。」


 1回目のタイムリープの時には、こんなお出かけイベントはなかったから、由美乃の写真を撮る機会などなかったのだが、今回は小学生時代の由美乃の写真を残しておけると期待していた。


 「本当はカラー写真が良かったんだけど・・・」

 「カラーフィルムは高いからなぁ・・・」


 もともとの俺がいた時代から、デジカメを持って来れたらなぁ・・・と、痛切に感じた瞬間だった。


 待ち合わせ場所の停留所は車庫の前だったので、的場さんが来るまでの間、車庫をバックに女の子達を撮影してみた。すると、健太が、俺と由美乃のツーショットを撮ってくれていた。


 「健太、よかったのか? 貴重な1枚を使わせてしまって・・・」

 「4~5枚は、雅哉のために使うつもりだったからいいのさ。誕生日プレゼントだと思ってくれたらいいよ。」


 どうやら、母親同士の話で、今日が俺の誕生日だということを知ったみたいだ。そして、俺と由美乃のことも、わかっていたようだった。


 「2人を見てればわかるよ。由美ちゃん、いつも雅哉にくっついてるもんな。」


 他の女の子、特に、雪姉に気づかれると面倒だな、と思っていたが、雪姉は健太がカメラを俺たちに向けると、すっと離れていったので、わざと知らないふりをしてくれてたみたいだ。


 時間通りに的場さんが現れると、俺達は予定通り、須田町を経由して、王子方面に向かった。


 電車の中での撮影とか大声で話したりするのは、他の乗客の迷惑になるので控えるよう事前に注意はしていたが、進行方向を見ることができる運転席脇を陣取る健太に、さつきがやたらに話しかけているのが気になっていた。さつき自身は都電のことには興味がなかったらしいが、健太と話を合わせようと、反対方から電車がくるたび、その系統番号について健太に質問していたのが、何か見ていて微笑ましかった。


 「まー兄、なに笑ってるの?」


 もともとの俺が健太と2人で撮影しに行った時には、今、健太が陣取っている運転席脇を俺が死守していたのだが、今回は健太に譲ったのだ。もちろん、由美乃とのツーショットを撮影してくれたことへの感謝もあるが、一度経験していて、そこまでする気になれなかったのと、由美乃と隣り合わせで座席に座れるということの方が勝ったからだ。

 ちなみに、由美乃は左側に、右側に雪姉が座ってきた。俺の目の前には、的場さんが吊革につかまって立っていた。


 「いいねぇ・・・ 雅哉君、両手に花だね?」


 だが、当の雪姉は、その右隣に座った弥生ちゃんに話しかけられていた。どうやら気に入られたみたいだ。


 「弥生ちゃんは、本当はお姉ちゃんが欲しかった、って前に言ってたよ。」


 俺から見ると2才年上だから、弥生ちゃんから見たら5才年上のお姉さんということになる。小1の時に小6だったから、1年間だけ同じ小学校に通っていたことになるのだが、そう近所というわけでもないし、雪姉自身があまり他人とかかわらないようにしていたこともあるから、まず接点はなかっただろう。

 

 そうこうしている間に、飛鳥山の停留所に近づいてきた。


 「雅哉、ちょうど専用軌道から出てくるぞ、32番だ!」


 目の前を32番の電車が合流してきたのを見て、健太が歓声を上げた。その役目、もともとは俺だったんだけどね。


 飛鳥山でいったん下車し、その後、反対方向の王子方面から来る32番を撮影してから、一旦、飛鳥山公園に入った。


 「ここは桜の名所らしいよ。どうせ来るなら、春休みに来れば花見ができたかも・・・」


 まあ、今回はこっちがメインじゃないからね。


 「どこかでお弁当食べようよ。」


 どうやら、女の子達が弁当を作ってきてくれたらしい。仕方ないので、一旦、公園内をしばらくうろついて、昼食後に王子駅の方に撮影をしに行くことにした。都電の写真が目的なので、的場さんに女の子達をお願いして、俺と健太の2人で行くことにしたのだが、由美乃だけは俺に同行すると言ってきかなかった。もちろん俺に異存はない。さつきが健太と一緒に行きたがるかと思ったが、雪姉と一緒に遊びたがる弥生ちゃんに引きずられる形で、さつきも公園に残ることになったのだ。


 飛鳥山公園を出て王子駅に向かった俺達3人は、王子駅前の停留所で、19番、27番、32番の3台が同時に止まる瞬間を狙って写真を撮りまくった。それを果たした後は、健太が車庫を見たいといったので、荒川車庫(32番の終点)に向おうとしたが・・・


 「時間があまりないから、手分けしないか? 俺が荒川車庫を撮影してくるから、雅哉は赤羽を見て来てくれないか?」


 これは健太と事前に確認していたことだ。赤羽は27番の終点だが、王子~赤羽間を廃止し、区間短縮されることが決まっていたので、終点の様子を撮影しておきたかったのだ。あと、その終点が「赤羽」となってはいたものの、国鉄(現在のJR)の赤羽駅からは離れていて、いったいここに何があってこんな場所を終点としたのかが知りたかった。もっとも、須田町なんかがその最たる例だが、国鉄の駅とは関係ないところが終点になっていたケースが多かったのが、正直謎だったのだが。


 「わかった。じゃ、俺と由美ちゃんは27番に乗って終点まで行ってくるよ。」


 時間がないので二手に分かれる、というのは確かにそうだったのだが、これは健太の気づかいだ。2人きりで会うな、という由美乃の父親の言葉には逆らうことになってしまうが、的場さんは健太が一緒に行動していると思っているはずなので、王子~赤羽間の往復の時間のことだけを秘密にしておけばいいだけだ。健太には大きな借りを作ることになってしまうが、健太が俺に提案したことだし、悪いようにはしないと思う。


 俺と由美乃は、赤羽行の電車に乗り、並んで座ったが、乗客はまばらで、一緒に来たメンバーもいない、2人きりの空間と言ってもいいくらいだった。俺は由美乃の肩を抱き、引き寄せてみた。由美乃の頭が俺の顎の下あたりに来て、髪の毛の甘い香りが鼻をくすぐる。ああ、このまま両手で抱きしめたい・・・


 「由美ちゃん・・・?」


 気がつくと、由美乃は眠ってしまっていた。もしかしたら、今日を楽しみにしてくれてて、あまり寝ていなかったのかもしれない。俺は終点につくまでの間、動けずにいたことは言うまでもない。

 30分ほどで終点についた。そのまま折り返して王子駅に戻ることを伝えれば、由美乃を起こす必要はなかったのかもしれないが、終点付近の撮影を健太に頼まれていたので、やむを得ず由美乃を起こし、一旦下車することにした。


 「ここ・・・ どこ?」


 寝ぼけ眼で周囲を見渡す由美乃の言葉がすべてを物語っていた。終点・・・何もない。(目だったものは、という意味で)

 俺は、終点の停留所で27番の電車をバックに由美乃を撮影した。ここまで撮影した中で、由美乃をソロで写したのはこれだけだ。デジカメと違い、現像してプリントされるまでは、ちゃんと写っているかどうかはわからないのが不安だが、問題なければ、おそらくこの写真は俺の一生ものの宝になるだろう。


 「そうか、もうすぐ廃止されるから、一緒に乗りに来たんだね。じゃ、カメラ貸してごらん。2人を写してあげるよ。」


 折り返し三ノ輪橋行きの電車に乗ろうとした俺達は、乗ってきた電車の車掌に声を掛けられ、ツーショットの写真を撮ってもらった。これもいい思い出になるな。 


 健太のはからいで、王子~赤羽間の往復の時間、由美乃と2人きりになれました。もっとも、一緒にいただけで何もしていないのと同じではありますが。

 ちなみに、作中の「赤羽」停留所は、現在の南北線「赤羽岩淵」駅のあたりになります。この駅も、なんでこんな不便なところに作ったんだろう・・・?

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