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幼馴染ともう一度  作者: BUG
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11才の誕生日前日

 子供たちだけでは許可が下りず、あの人が引率者となります。そうなると当然、競馬の話が出てくるわけですが・・・

 健太の提案で、廃止される予定の都電の写真を撮りに行こうということにはなったが、どこの家でも親の許可が下りなかったらしい。


 「ウチだけじゃなくって、さっちゃんや由美ちゃんと一緒だって言っても、お母さん、ダメだって言うのよ・・・」

 「私はお父さんに反対された。お母さんはまー兄が一緒ならいいって言ってくれたのに・・・」

 「健太君、しっかりしてるから大丈夫だよって言ったけど、変な人に絡まれたら、いくら5年生の男の子が2人いたって無理でしょ、だってさ・・・」


 うーん・・・ 俺のお袋は、なんか面白そうだからいいんじゃないって感じだったけど、親父が人様の娘さんを預かって責任が取れる年齢でもないだろうって、ガチガチに堅いこと言ってたな。


 そんなことを登校前に話していたら、そこに雪姉がやってきた。


 「だったら、的場のおじさんに頼んでみようか?」


 なるほど、大人が一緒なら、誰も文句は言わないだろう。だけど、あの人、日曜日は競馬じゃないのか?


 「場外から帰ってきてからなら大丈夫じゃない? ラジオがあれば実況は聞けるはずだからね。」


 そうなると、昼過ぎでないと無理かな? 夕方5時くらいには帰ってこないといけないから、そんなに遠くには行けないな。

 その日、由美乃達と下校すると、由美乃の家の前で的場さんが待っていた。この人、ちゃんと仕事してるのか?


 「雅哉君、話は聞いたよ。君が都電マニアだとは知らなかったけど、僕ならどうせ競馬を見てるだけだし、たまにはこういうのに付き合うのも悪くないから、ぜひ頼っておくれよ。その代わり・・・」

 「的場さん、今週は大きなレースはなかったはずだから、僕に意見を聞かれてもわかりませんよ?」

 「そうかい? 西のレースにタニノハローモアが出るらしいけど、こちらじゃ馬券は売ってないからねぇ・・・」


 今じゃすべての競馬場での全国発売は当たり前だが、この当時は重賞競走であっても関西圏のレースは関東での発売はされていなかったのだ。もっとも、今回のタニノハローモアは確か勝てなかったはずだ。関西圏がどういう決着になったかまでは覚えていないが、関東圏の、的場さんが買うであろう日曜日のメインレースは覚えている。なぜなら、その日はちょうど俺の11才の誕生日だったので、もともとの俺が過去のレースを調べていた時、たまたま自分の誕生日だったこの日のレース結果を見て、かなり印象深かったことを覚えていたからだ。


 「牝馬東京タイムズ杯・・・でしたっけ? 岡部さんの初重賞制覇・・・」 


 岡部さんは昭和を代表する名騎手だが、この時点ではまだデビュー2年目の若手で、重賞レースはまだ勝っていなかったが、ここで初重賞制覇を達成することになるのだ。しかも、勝った馬というのが、当時では珍しい芦毛のハクセツという牝馬で、たしか9番人気という低評価だったと思う。


 「岡部くん? うーん、いいジョッキーだとは思うけど、芦毛馬だろ? オークスを買ったルピナスとか、桜花賞2着のニットウヤヨイとかいるし、勝つのは無理じゃないかなぁ・・・?」

 「まあ、ここはハクセツの単勝を買ってみるといいですよ。ハクセツはルピナスと同じ1枠に入ってしまったので、枠番連勝式の配当は安いでしょうからね。」


 たしか、2着にはニットウヤヨイが入り、枠連は1-6になったはずだ。ちなみに、3着も同じ6枠のもう1頭が来ていて、これが11番人気だったから、今みたく3連単があったら、相当な高配当になっていただろうな。まあ、そんなこと言っても仕方ないんだけどね。


 「まあ、ルピナスとニットウヤヨイの組み合わせなら面白いし、1-6で勝負してみようかな? じゃあ、雅哉君には1番の単勝を500円買ってあげるよ。もし、来なかったら、また雪ちゃんに付き合ってあげてよ。」


 この人、どこまで本気なのか、よくわからん。


     *     *


 当時の俺、というか、一緒に登校していたグループの中では、誰かの誕生日をことさら意識したことはなかった。誕生日は家族の内で祝う程度でしかなかったのだ。いや、もしかすると、当時の俺の周辺だけが「そういうもの」だと思っていただけかもしれないが、あの京子ですら、俺に誕生日のプレゼントを贈ってきたことはないし、俺に至っては、皆の誕生日など知らなかったくらいだ。

 今の俺は、さすがに由美乃の誕生日(2月1日)は知っていたが、他の女の子たちのことは知らなかった。俺自身がそんな調子だから、俺達が出かける予定の日が俺の誕生日であることは、由美乃以外は誰も知らなかったのは当然だ。


 「雅哉、明日はどこの写真を撮りに行く?」

 「うちの近所の路線が廃止されるのはまだ先だから、来年あたりに廃止予定の路線をめぐりたいけど・・・」

 「そうなんだけど、女の子達がついてくるから、都電に乗ってるだけだと文句が出そうだよ?」

 「的場さんは10時半ころ錦糸町に来てくれって言ってたけど、5時くらいまでには帰らないといけないから、結構厳しくないか?」


 健太は純粋に、乗ったことのない路線に乗ってみたいだけのようだが、俺は正直言って、由美乃が一緒だから、都電の撮影にはあまりこだわってはいなかった。どうしたら由美乃を退屈させないか、ということで頭がいっぱいだったのだ。


 「本当は、来年廃線になる渋谷の生き残りの34番とか、わざわざ変な道を通る新宿の13番とかに乗ってみたいけど・・・」

 「女の子たちを連れて、渋谷とか新宿じゃ、都電どころじゃなくなるぞ?」

 「じゃあ、王子の方は? あっちの方も、地図だけ見ると、道じゃないところ走ってたから気になってたんだけど・・・」

 「専用軌道だよね? 25番や29番の通った浅間前とか水神森とかと同じ感じだろ?」

 「都電が道路を走ってないのが、逆に新鮮なんだよね。」


 前日の土曜日の夕方、俺達はどの路線にするかを考えていた。この話については、最初は女の子3人の意見も聞こうかということになってはいたが、上記のようなマニアックな会話についてこれず、さつきと弥生ちゃんは早々に抜けてしまっていた。由美乃だけは、俺にピッタリ寄り添っていて、わからないながらも話に加わってくれていた。


 「道路を走らない都電があるんだ・・・」

 「由美ちゃんは、そういうの、乗ったことないの?」

 「私は、錦糸町から帰るときに乗った36番以外は知らないかな。」


 36番はうちの近所を通っているので、このあたりの住民なら皆知っているのだ。


 「やはり、王子の専用軌道は見てみたいから、19番で行こうよ。錦糸町からだと29番で須田町、そこから19番に乗り換えて王子に向えば、お昼前には王子につけると思う。」

 「お昼はどうするの?」

 「由美ちゃん、王子の方って知ってる?」

 「知らない。」

 「19番の終点なんだけど、その1つ前に飛鳥山っていう停留所があって、そこに大きな公園があるんだって。そこでみんなと一緒に遊ぼうよ。」

 「写真は撮らないの?」

 「飛鳥山で、32番の線路と合流するみたいだし、そこはどうやら専用軌道みたいだから、健太の目的もかなうからちょうどいいんじゃないかな?」


 健太には悪いが、27番と32番は廃止されないことになるから、写真撮影については急ぐ理由がない。当日は女の子達・・・と言うか、由美乃と過ごす方を優先させてもらうことにした。もちろん、そんなことは健太には言わないが。


 「的場さんがレース実況をラジオで聞いてから帰れば、5時を少し過ぎるかもしれないけど、いい時間じゃないかな?」

 「そうだな。それなら俺も文句はないよ。」


 話はまとまった。

 的場さんが入ってくれたおかげで、どこの家の親からも、反対はされなくなった。だが、雪姉が自分もついていくと言い出したのには、少し困ってしまった。また、栄治にはたかれそうだ。


 「雪姉、本当に来るの? 期末試験が近いんじゃ・・・?」

 「ふふふ・・・ 心配してくれるの? でもアタシ、これでも優等生なのよ? 日曜日に外出したくらいで試験に影響なんて出ないわよ?」


 そう言えば、的場さんもそんなこと言ってたな。まあ、的場さんがいる以上、雪姉が来るというのを止めることはできないか。

 芦毛馬と言えば、タマモクロスやオグリキャップがブームを作りましたが、本文中に出てくるハクセツも、(今回のレースでは評価が低かったですが)美少女と呼ばれ結構人気があったようです。昭和の「ソダシ」(ソダシは芦毛ではなく白毛ですが)と言ったところでしょうか・・・ 強力な追い込みを武器にしていたあたりは真逆ですが。


 なお、飛鳥山公園で女の子とデートした経験は残念ながらありません。

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