雪姉の思惑
2週間ぶり、今年最初の投稿です。本年もよろしくお願い致します。
もうちょっと更新間隔を詰めたいとは思ってますが・・・
もともとの俺はもちろん、1回目のタイムリープの時にも、こんな風に雪姉と話したことはなかった。これは2回目では的場さんとの接点ができたからに他ならないが、その的場さんから、これまで知ることができなかった雪姉の話をいろいろ聞かされた。
「雪ちゃんって、中学生になったばかりにしては大人びてるって思わなかったかい?」
確かにそうかも知れない。今の俺はもうすぐ11才になろうかというところだが、中味は60才だから中学生の女の子はそれなりの年齢としか感じられない。だが雪姉と小学校の同級生達とを比べると、2才しか違わないとは到底思えないのだ。もちろん、中学生にしては発育が良い胸とかの影響もあるが・・・
「小さい時に父親が亡くなってね。それに母親が、つまり僕の妹だけど、以前から病気がちでね。今も入院しているんだよ。」
今の家には、母方の祖父と、事実上二人暮らしだそうだ。つまり、的場さんは、自分の父親と姪の様子を定期的に見に来ている、ということらしい。
「親父もいい年だから、家事一切は雪ちゃんが1人でやっているのさ。だから、みんなと遊ぶ時間がないんだよ。」
栄治だけは、そんな雪姉と一緒にいようと頑張っていたが、やはり、まともに相手にはされていなかったみたいだ。そもそも、雪姉には勉強を教わっている、と言っていた割には、栄治の成績ははっきり言って下の下で、ちゃんと教えられているかどうかは怪しかった。もっとも、それ以前に、栄治自身の本当の目的が勉強ではなかったはずなので、身につくはずもないのだが。
「雪ちゃんは結構成績は良いほうなんだよ。こういう家庭環境じゃなければ、学年でも5本の指に入るくらいの成績を残せるはずなのさ。だから、僕が雪ちゃんを引き取って、普通の中学生の生活環境を与えたいって話を何度も持ちかけたんだけど、雪ちゃん、ここを離れたくないんだってさ。どうしてかな・・・?」
「的場さん、雪姉は本当に・・・?」
「うん。雅哉君は覚えがあるかと思うんだけど、庭で京子ちゃん達と遊んでいるのを見られていたことがあるだろう? 雪ちゃん、それを僕にうらやましそうに話していたんだよ。だから、雪ちゃんが雅也君のことを好きかもしれないって言ったのは、決して冗談なんかじゃないんだよ?」
雪姉が俺に好意を持っていることは、言われなくてもわかっていたが、俺にしてみれば困るだけだ。俺は由美乃が好きで、この先、由美乃と同じ道を歩きたいと思っている。1回目で、その願いは叶っていたのだが、記憶が欠落したことで2回目に至っている。この状況で、俺が由美乃以外の女の子に乗り換えるなんてあり得ない。だが、雪姉の事情を聞いてしまったり、雪姉の豊満な身体、由美乃とはまた違う甘い匂いなどを感じてしまうと・・・ 気持ちがぐらついてしまうのも仕方のない話だと、言い訳じみたことを考えてしまう自分がいた。
「由美ちゃんと2人きりで会いたいなぁ・・・」
雪姉に対して芽吹いた感情を抑えられるのは、やはり由美乃自身だろう。だが、今の俺には叶えられない。いったいどうしたら、この葛藤を解消できるんだろう?
* *
次の日曜日、理不尽だとは思いつつも、俺は雪姉の買い物に付き合うことになっていた。自宅の前には、既に雪姉が待ち構えていた。
「これでも気を使ってるのよ?」
雪姉は俺が由美乃と2人だけで会うことを禁じられていることを知っていた。俺が由美乃と会うには、京子達と遊ぶ中に由美乃が合流するしかないのだが、雪姉はこの日、京子にも声をかけていたそうだ。だが、家の事情とかで京子は留守にしていた。
「気を使ってくれるなら、京ちゃん抜きで由美ちゃんを誘ってくれてもよかったのに・・・」
「そんなことしたら、京ちゃんの機嫌が悪くなっちゃうからダメよ。」
「でも、俺と2人だけって、雪姉に変な噂が立っちゃうかもよ?」
「まーくんとだったら。噂になってもいいわよ。」
予想はしていたが、雪姉の押しが強い。
「ほら、行くよ。」
雪姉が俺の右手を自分の胸元に引き寄せる。先日も同じように俺の腕に胸を当てていた。これってやっぱり、わかっててやってるよね?
「ち、ちょっと、雪姉・・・」
「何赤くなってるのよ・・・? ああ、アタシの胸? まーくんもやっぱり男の子だよね。こういうの好きでしょ?」
セリフだけなら、年下の男の子をからかっている大人の女性、という風に聞こえなくもないだろうが、からかわれている俺は言うまでもないが、雪姉自身の顔も紅潮している。やっぱりこれって・・・
「雪姉、的場さんに何を吹き込まれたのさ?」
「的場のおじさん? い、いや、別に・・・ まーくんぐらいの男の子だったら、胸を触らせたらイチコロだなんて、考えてもないよ?」
・・・やぱり的場さんの入れ知恵か・・・ しかし、いくら俺を気に入ったとは言え。姪っ子に体を張れなんて、よく言えたもんだよ。ちょっと頭に来たので、雪姉を撃沈してやろうと考えてしまった。俺は、そのまま黙って、雪姉をじっと見つめた。
「どうしたの? アタシのこと、そんなに見つめたりして? もしかして惚れちゃった?」
余裕を見せようと、そんなことを言ってきたが、雪姉の顔がますます赤くなってきたように見える。俺自身もドキドキものだったが、雪姉に顔を近づけていった。雪姉、やっぱりいい匂いがするなぁ・・・
「まーくん、どうしたのよ・・・?」
「あのね、雪姉、そんな風にヘタに男を挑発すると、大変なことになるよ!?」
俺は雪姉の両肩を掴み、さらに顔を近づけた。掴まれて逃げ場をなくした雪姉の唇を、まさに俺の唇が捕えようとしたその瞬間、雪姉が頭を前に突き出してきた。カウンターの頭突きが俺の眉間にヒットした。
「痛たたた・・・ って、まーくん、大丈夫?」
情けないことに、俺は気絶したようだ。
この状況、傍から見たら、俺が無理やり雪姉にキスしようとして、それを避けようとした雪姉が反撃した、というように見えるだろう。とは言え、日曜日の朝で、周囲には誰もいなかったので、変な噂になることはないだろうけど・・・
気が付くと、俺の目の前には2つの大きな丸いものがあった。そして、頭突き食らった眉間のあたりはヒリヒリしていたものの、後頭部に柔らかいものを感じて、妙に幸せな気分だった。
「あっ、まーくん、気がついた?」
「えっ? 雪姉? まさかこれって・・・ 膝枕?」
俺は起き上がろうとしたが、雪姉に上半身を抑えられていて、動けなかった。・・・まあ、別にこのままでもいいかな・・・ 服の上からとは言え、至近距離で目に入る2つの膨らみとか、太腿の感触とか、雪姉のいい匂いとか、これを至福と言わずして何と言うか?
「アンタも隅に置けないね。雪ちゃんといつの間にそんなに仲良くなったのよ?」
「おふ・・・かあちゃん? 何言って?」
「雪ちゃん、アンタにケガさせたって大変だったんだからね。朝っぱらから、いったい何してたんだい?」
そうだ、雪姉が挑発してくるので、ちょっと脅かしてやろうかと思って、キスするふりをしてみたのだ。唇が重なろうかという瞬間、俺は雪姉の肩から右手を離して、人差し指で雪姉の唇に触れるだけのつもりでいたのだが、雪姉は一瞬早く、頭を前へ突き出すことでキスを回避しようとしたため、カウンターの頭突きが決まって俺はKOされたのだ。
「かあちゃん、これはただの事故だよ。雪姉はただ巻き込まれただけだよ。」
「ふーん・・・ まあ、アンタがそう言うなら、そういうことにしておくよ。でも、アンタ最近、いろんな女の子と噂になってるみたいだね? いったいどうなってるんだい?」
うーん・・・ お袋の噂好きはこの頃から既に確立していたようだが、まさか自分の息子をネタにしているとは思わなかったよ。
「今日は、前からの約束で、雪姉の買い物に付き合うって・・・ あれっ? 俺どれくらい寝てた? 雪姉、まだ間に合う?」
「時間はいいけど、まーくん、大丈夫なの?」
「問題ないと思うよ。それよりも、約束守れなくて的場さんに嫌味を言われるよりマシだし・・・」
「そこは嘘でも、せっかくのデートをふいにするつもりはない、とか言って欲しかったな。」
結局、その後、夕方まで雪姉の買い物に付き合った。デートなんて色っぽいもんじゃなく、単なる荷物持ちに過ぎなかったのだが、雪姉は満足そうに帰っていった。
ただ、その別れ際を栄治や京子達に見られていたので、ちょっと面倒くさいことになりそうな予感がした。
もともと「フリ」だけで脅かすのが目的だったとは言え、キスを迫ったのはちょっと強引でしたね。雪姉が積極的に応じていたらどうなっていたか・・・ まあ、由美乃との未来が破綻していきなり60才に戻されてしまったと思います。もっとも、今後の展開次第では、そういうことにならないとも限りませんので、引き続き厳しい選択を強いられることになりそうです。




