7 さあ、ゲームを始めましょう。
「は?ババ抜き?」
「はい!」
俺が呆気にとられているとアズルートが元気に返事をする。
「そんなのでこんな大事なこと決めちゃっていいの?」
「だって危害は加えないんでしょ?別に私の使命はこの図書館を守ることなので問題ありません」
「それはそうだけど……」
「さあ、ゲームを始めましょう」
そう言うと彼女はにこりと笑った。
とある部屋の一室。
「はい。あがりー」
「勝負には負けたけどシャーロットさんもいるのでババ抜きのほうは負けてません!」
シャーロットはアズルートの手札のうち1枚をひく。
「はい。私の勝ちです」
「勝負に負け、トランプでも負けたぁ。なんという屈辱…」
「約束は守ってくれるんだろうな」
「もちろんです」
アズルートは席を立つと窓を開けた。
「アズルートの民よ!私はアズルート。この土地を守ってきた者だ!アズルートはこれより闇の国の傘下に入ることを宣言する!安心せよ。闇の国の使者は我らに自治権を与えると約束してくれた!我々は何不自由なくいままでどうりの生活をすることができる。だがアズルートを自由に出入りできるのは我々だけになる。それでもよいか!」
民衆の歓声が聞こえた。
「ここにアズルートはアズルート自治区として闇の国に属し風の国からは脱退することを宣言する!」
俺は魔導書図書館の一室にいた。
魔導書図書館は書斎の部屋が馬鹿でかかっただけで残りはほとんど屋敷と同じだった。
アズルートは「一応、ここの責任者なんだから」と俺に部屋を与えてくれた。
この図書館はもはや俺たちの家である。
食事はみんなで一緒に食べ、みんなで遊ぶ。
どうやらアズルートはババ抜きがお気に入りらしくてしょっちゅうやっている。
で、俺はいまなにをやっているのかというと魔導書を読んでいる。
この魔導書の管理を任せた最上位神は『多重属性』のスキルをもっていた創造神だったらしくアズルートがなにかの参考にと持ってきてくれたのである。
魔導書といってもそれを使って魔法を使えるというものではなかった。
どちらかというと魔法に関することが書かれている書物や創造神のメモや日記のようなものだった。
これを読んでいくと創造神はなかなか面白い人物だったらしく、吸血鬼に自分の血を吸わせて神だったら吸血鬼にならないのか!的なことをやったエピソードが書いてあった。
読み進めていくと『多重属性』について書かれている部分を見つけた。
しかし肝心なところでページがビリビリに破かれていて読むことができなかった。
「おーい、ごはんですよー」
「はーい」
俺は部屋を出た。