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第6話 やっとんこっ

前回8話まで投稿しましたが、修正・加筆に伴い、6話から場面・登場人物等が変更されています。


8話まで、3日間連続で投稿したあと、投稿頻度日曜日の22時に戻したいと思います。


前回の話を読まれていた方は、申し訳ありませんがこちらから読み直してください。

 先ほどの白くてデカい狼、フェンリルと言ったか?

 アレが言っていたとおり、川下に向かって川原を歩いていくと同胞、というか人?がいた。

 ここに来て初めて見かけた人だったこともあり、こちらとしてはいろいろ尋ねたいこともあって、その姿を見かけた時は思わず手を振って駆け寄ってしまった。


 が…


「う、動かないでくださいっ!!」


 絶賛、その初めてあった人に武器を突き付けられているのだが?



※※※※※※※※※※



「あ、えっと…」


 俺に対し短剣っていうのか?ソレを突き付けているのは1人の女性。恰好は、先ほどのフェンリルが言っていたこの世界の住人のものなのだろう。

 見た目シンプルな茶色のワンピースと、白いショールを肩からかけている。

 まあ、ちょっとワンピースがボロボロなのは気になるが。


 そんな彼女の髪は腰くらいまで伸ばしてある、日本じゃ見ない銀髪っぽいものだ。太陽に反射していてとても眩しいし、何より短剣を持っている手の白さに負けないほどだ。

 警戒していて険しい表情を浮かべているが、険しい表情をしていても赤い目に整った顔立ちは控えめに言っても美人に類するものだろう。

 年も15、6歳くらいの高校生くらいに見えるほど美人な女性だが、そんな彼女に刃物を突き付けられて喜ぶほど俺の性癖は歪んでない。

 俺の性癖は置いといて、その女性の最大の特徴は髪や肌なんかではない。


 あれ、どう見ても動物の耳じゃないか?


 遊園地にあるようなものではなく本物らしい。こちらを警戒しているのか、白い三角のソレはしきりに周囲を気にするように動いている。

 さらに一瞬ではあるが、彼女の後ろにあるであろうモノがちらりと見えた。


 …尻尾、だよなぁ?


 頭上の白い耳に白い尻尾と、普通の人にはない要素が彼女にはあった。

 犬っぽい耳と尻尾だなぁと思わずじっくり観察してしまったが、いかんいかん。

 今は武器を突き付けられて、絶賛警戒されているのだ。


 まあ、言葉が通じるってことがわかったのは嬉しいのだが…


「えっと…私は怪しい者では…」


「こ、この森の中に人族がいること自体、怪しいんです!」


 ”人族”なんていうワードが出てきたが、なんじゃそら?

 たしかに、目の前の女性、というか女の子か。彼女は犬っぽい耳と尻尾を持っているが、そのほかの特徴は人だろうに。


「あの、”人族”というのが何かわかりませんが私は…」


「そ、それ以上喋らないでくださいっ!!」


 女の子は声を張り上げると、足元に置いてあったバケツを抱えた。

 どうやらここには水を汲みに来ていたみたいだが、そのバケツは木枠でできていることから、ここの世界の時代を感じさせるものだ。

 って、喋らせてくれてもいいじゃないか…


「い、いいですか?こっちに近づかないでくださいっ!」


 ゆっくり、ゆっくりとこちらに短剣を向けたまま、彼女は川原の奥、森のほうへと向かっていく。

 彼女の行く先には、俺が先ほどまでいた森とは違い、林道とまではいかないまでも、人が明らかに切り開いた道があった。

 そこまで下がり森に差し掛かった彼女は、なぜか一度立ち止まった後、何かを呟いてこちらに何か飛ばしてきた。

 ゆっくりと彼女は白い塊、例えるなら雪玉か。それがこちらに向かってきているが、さっきから変なものを見てるせいで、全然脅威に思えるようなものではないな。

 彼女はそれがこちらに向かっているのを確認すると、一目散に森の奥へと去ってしまった。


「?」


 ふわふわしたものがやってきて、俺に当たるかと思ったが、俺の目の前で弾けてしまった。


「なんだったんだ、これ?って、もういないし」


 白い玉に気を取られ過ぎたか、彼女の姿はもう欠片もない。が、彼女の去っていった方向に人はいそうである。

 いい加減、腹も減ってきたし、この状況を説明してもらいたい。

 幸い、先ほどの彼女とも言葉が通じることがわかったので、誰かに会うことがあれば会話できるだろう。


「手がかりがようやく見つかったな」


 俺は鳴りかける腹をなでつつ、再び森の中に入っていくことに。



※※※※※※※※※※



 人がよく歩いて踏み固められた森の中の道を歩くこと10分ほど。


「森の中の村か」


 暗い森から視界が開けたところで、木の柵と門が見えてきた。

 遠目から門の中がちらりと見えたが、そこから中が少し伺え、木でできた家がちらほらと確認できた。

 森を切り開いてできた村という、ようやく人が確認できそうなところにたどり着けた。


「さて、門のところには門番っぽい人がいるわけで」


 そう、たどり着けたからって素直に入れるわけでもなく。

 ここは狼やらドラゴンが飛び交う世界だから、当然そういうものを警戒してか門の前には門番がいた。

 しかも武装しているらしく、その手には槍が携えられているのがわかった。


 こうしてこちらから向こうの様子がわかるってことは、当然向こうからもこちらが見えているってことで。


「む、誰だ!」


 今度は門で警戒している人に槍を向けられることになった。

 よかった、言葉は通じている。なら、ちょっと話を聞いてみよう。

 警戒心剥き出しで槍も向けられてはいるが、俺は門番をしているであろう人のところまで近づくことに。


「すみません、森、というかここがどこかもわからないまま迷ってしまったものでして」


「”人族”が…ってなんだ、その恰好は?」


 近寄ったことでこちらがよく見えたのか、訝しがり首を傾げ、それでもなお槍の穂先を下げずにこちらを警戒する、先ほどの女性と同じように獣の耳と尻尾がある門番の男性。

 変な恰好で申し訳ない、生憎出勤前だったもので。

 でも、こっちとしてもあなた方の耳とかがすごい気になるのですが。


「荷物はなし、武器も無し、杖らしきものも見当たらない…ってことは”冒険者”でもないな」


 ”冒険者”?

 なんだかまた新たな単語が出てきたが、こちらが武装していないことで若干相手は警戒心を解いてくれたらしい。

 こちらに向けられた槍先が少し下げられたので、こちらも


「冒険者というものがよくわかりませんが、気づいたら平原にいて、目に入った森を歩いていたらここにたどり着いたのです」


「他に仲間はいないのか?」


「いえ、私一人です」


 それを聞いて男性は周囲を警戒したあと何かを呟いた。と、さっきの女の子のように、何かやったらしい。まるで水面の波紋が具現化され、それが男性の中心から発せられた。

 ちょうど俺のところも何かが通り過ぎて行ったが、特にこれと言って体に変化がない。

 っていうか、なんかまたさっきみたいに俺のところだけ弾かれたぞ。


 男性は集中していたようで気にした素振りは見せなかったが、何やら納得したのか槍を下げてくれた。


「…わかった、一旦そこの小屋の中で話を聞こう」


 門の横には小さい掘っ立て小屋のようなものがあり、門番の人が休憩するようなスペースとなっているようだ。

 そこで話をするとのことなので、素直に男性のあとをついていくことに。

 ようやく腰を落ち着けて話せるな。

お読みいただきありがとうございました。


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