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王太子の花 咲く前と咲いた後  作者: はるあき/東西
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白髪の老人

「大旦那様、フーラル様から今夜は気分が優れないので後日にしてほしいと連絡がありました」


 執事の言葉に老人は眉を寄せた。


「分かったと伝えてくれ」


 そこにはさっきまで和やかに孫と遊んでいた好々爺の姿はない。


「どうにかならんものかの」


 呟きは闇に消える。

 寂しそうにしている可愛い孫娘が不憫でならなかった。



 息子にあの女を娶らせたのは老人だった。あの男の娘ならと思ったが…。

 老人はヨレヨレになった手紙を手に取った。それは、信頼していた男からの手紙だった。娘と婚姻させないようにと懇願する内容が書かれている。理由は会った時に話すと。

 それが届いたのは息子が女と再婚した後だった。隣国との小競合いの最前線にいた男の手紙は戦の混乱に巻き込まれ、男の戦死の知らせと共に公爵家に届いた。

 老人は、そこで初めて男が娘の婚姻に反対していたことを知った。男の家族は、男もこの縁談に喜んでいると口を揃えて言っていた。老人もそれを信じていた。それもそうだろう。子爵の娘が後妻とはいえ公爵家の当主に嫁ぐ。それを喜ばない者は滅多にいない。

 男はその滅多にいない者だったようだ。その理由を男は老人に話すことなく戦場で散ってしまったが。

 老人はその理由を調べることにした。信頼出来る男が婚姻を反対したのは余程のことがあったと思うからだ。

 その謎はすぐに解けた。

 エンダリオだ。

 魔力の強い家系にはその反動なのか魔力がほとんど無い子供が時折産まれる。それ自体は決して珍しいことではない。

 もう一つの、体を維持出来ないほど骨が軟らかい難病のほうだ。エンダリオのことを女の母親と伯父の伯爵に話したところ、真っ青になり狼狽えていた。そういう子供が産まれる可能性があることを知っていたということだ。

 問い詰めたところ、女が幼少の頃、怪しげな薬屋から購入した薬を飲んでいたらしい。その時、女が住んでいた地方で酷い皮膚病が流行り、その治療薬として効果が出ていた物であった。皮膚病の予防にもなると聞き、母親が女に飲ませていた。だが、その薬を服用していた妊婦は、死産かエンダリオと同じように骨が軟らかい子供を産んでいた。当時は、薬の副作用と噂されていたが、病も終息したため有耶無耶となっていた。母親は服用してから年数が経っているから大丈夫だと思っていたようだ。調べてみたところ、その薬を飲んだことのある者の子供は骨に疾患がある者が多かった。

 戦死した男は何かでこのことを知り、騎士団の者が縁談を申し込んでも断るようになっていたらしい。

 だから、公爵家と娘の結婚にも反対をしていたのだろう。と老人は推測している。

 女にこのことを話したが、それで孫娘に対しての態度は変わらなかった。むしろ酷くなったと言っていいほどだ。


「父上、遅くなりました」


 息子の公爵がやっと帰ってきた。


「のう、フーラルはどうにかならんか?」


 老人を若くした息子の顔が曇る。


「なるべくエンダリオから離し、ウインダリナとも会わないようにさせているのですが」


 執事から今日あったことを聞いているのだろう、息子の声が疲れきっている。母親である分、切り離すのが難しい。


「エンドールから、可愛い孫娘と寝ることをダメ出しされたわい」


 これは残念そうに老人は言う。明るく元気な孫娘は老人の自慢の孫の一人だ。普段は離れて住んでいるのだからたまには良いと思うのだが、大人びた孫息子が許してくれない。それはそれで気難しいあの孫息子が妹を気にかけているのは喜ばしいことだ。


「あれがネチネチ言うようなので。まだ幼い子供なのかと」


 息子のため息が重たい。それでいて、エンダリオが寝付くまで母親として側にいることを当たり前だと進言してくる。


「二人の誕生日が過ぎましたら、完全に離します」


 息子の言葉に老人は頷いた。

母親の名前が間違っていましたm(__)m


誤字報告ありがとうございますm(__)m

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