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妖精王の帰還  作者: 若竹丸
プロローグ
4/11

プロローグ4

夢遊病にも似た雰囲気に賢治も慌ててその後を追った。

店を出た直後、ドンっと大きな音がしてトラックが炎上した。

ガソリンに何かが引火したようだ。

中にいた人や運転手は大丈夫だったろうか。

他人への不安が胸を過ぎるがそれよりも今は前を走る2人の方が気になる。後ろ髪を引かれる思いを断ち切り2人を追いかけた。

優子はただただ光りを頼りに走り続けた。


『こっち……早く……ヤツらに見つかった……早く……』


弱々しいが、確実に声が聞こえる。

『こっちに』と懐かしい声と光が自分を導いていく。

腕の中の響も嬉しそうにその光を目で追い掛けている。

賢治にこの光は見えていないようだったが、説明している暇など無かった。

ただ後ろから追い掛けてきてくれているのを感じ、振り向くことも無く光の指し示す方へ進んでいった。

見えない筈なのにその姿が優子にはハッキリと見えた。

それと同時に視界の端々に黒いモヤのようなものも見える。

その殆どが拳大の小さなものだが、さっきのトラックはどす黒く大きなモヤに包まれていた。

小さなモヤがくっついたり離れたりしながら2人の後を追い掛けている。


『早く……早く……』


光は点滅を繰り返しながら大きな川に出た。


「優子こんな所まで来てどうした……」


息を切らしながら賢治が追いつき、そして絶句した。

一級河川のそれは日頃はとてもなだらかで、台風が直撃した時に荒れた様子しか知らない。

だが、今はその一部が渦を巻きそしてなにやら光って見える。それは賢治にもはっきりと見えた。


「なんだよこれ……」


見たことの無い、説明もつかない状況に賢治も唖然としている。

だが、優子は光をただジッと見つめていた。


「呼んでる……行かないと……」

「優子?何言ってるんだ??」

「あそこに行かないと。ヤツらに見つかった……此処にいたらもっと悪い事が起こる……」

「優子!?」

「賢治……私を信じて!一緒に来て!!」


肩を掴んだ賢治の手を優子は強く握り返した。その目は本気だった。


「キャーーー」


後ろで悲鳴が聞こえた。

晴れた穏やかな天気だったのに住宅街のど真ん中に大きな黒い渦が出来ている。竜巻だ。

気象条件的に有り得ない事が起こっている。

建設中の資材やトラックが竜巻に巻き上げられ宙を舞っている。


「時間が無い。早く行かないと」

「優子?」

「賢治……私を、私たちを信じて」


真摯な目で見つめられ、そして握った手に力が込められた。抱かれた響の手が2人の手に重なりキャッキャッと笑う。

賢治はその様子に分かったと頷いた。2人を失うわけにはいかない。

渦の中から光が宙に浮き、空ろな輪郭をしていたその光が次第に扉の形を成していった。

精緻な彫刻がされた、重厚そうな大きな扉だ。扉なのにノブのようなものは見えないから門と言った方が近いのかもしれない。

門の中央には長い髪に蝶々のような羽根を背負った美しい女の人のレリーフが刻まれていた。

賢治はしっかりと優子の肩を抱いた。逃げ出したい気持ちも無いわけでは無かったが、その門は少なくとも嫌な感じはしなかった。

音もなくゆっくりと扉が開いた。その中から目も開けていられないほどの眩い光が漏れだし視界を奪った。

ふわりと宙に浮くような、感じた事のない感覚がした。

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