第1話 異世界召喚は突然に
異世界。
みんなも一度は聞いたことがあるだろう。
もちろん、俺も知っている。しかし、本当に存在するのかと聞かれたら、みんなはどう答えるだろうか?
……多分、答えられないだろう。自分の目で見たことがないのだから。
しかし、今の俺なら、答えられるだろうな。
なぜかって?そんなの簡単さ。だって…………
今、目の前に存在してるからな……。
ーさかのぼること10分前ー
「ああ……だるい。学校は本当に………だるいとしか言い様がないな」
学校へ向かう道中、朝っぱらからぶつぶつと呟いているのが、俺、寺尾 翔太、高校二年生。
今日は月曜日。土、日と夜更かしをした帰宅部にとっては、地獄のような日である。
「なんで月曜日なんかあるんだ……?一年通して、一週間が祝日で埋まればいいのに」
などとボヤきながら猫背で気だるげに登校していた。
季節は冬。朝は必ず、肌がピリピリと痛むほど温度が下がる。はぁ、とため息をつけば、真っ白な息が出ては、すぐに消えていく。
こんな朝は、いつも思うんだよ。
「ああ……なんか、異世界とか行けないもんかね……」
いつもなら、単なる現実逃避にすぎない、何気ない一言。だけど…………
この日だけは、違った。
俺がその言葉を放った瞬間、それは起こった。
ぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴ
「…………ん?」
なんか、遠くからぴぴぴっていう電子音が聞こえてくるような…………耳鳴りか?
ぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴ
……いや、違う。なんか、だんだん電子音みたいなのが大きくなってきてる。こころなしか、視界も白くぼやけてきたような…………。
ぴーーーーーーーーーーーーーーー!!!!
「ぬあっ!?!?」
その瞬間、俺の視界は真っ白に染まった。
………………そして、今に至ると。
あの後、やがて電子音は鳴らなくなって、白く染まってた視界も、だんだん鮮明になっていって、気づいたら、この場所に立っていたってわけ。
俺は辺りを見回す。俺の周りを囲むのは、宇宙空間のような星空。俺の立っている場所は、はるか先まで伸びている一筋の道。幅は人4人分と言ったところか。足を踏み外せば、おそらくこの、はるか下まで続いている宇宙空間へ真っ逆さまだろう。
さらに、俺の立っている場所から見えるのは、星だけではない。数々の惑星もみてとれた。しかし、どれも黒ずんでいる。
…………うーん、一体どうしたものかな。
ふと、視線を道のはるか先に移す。
…………なんか、奥から誰か歩いてきてないか?
目を凝らしてよーく見てみる。やはり、人がこちらに歩いてきている。
……誰だ?あれ。髪長いから、女性かな?
すると、あることに気づく。
「…………おい、なんか歩くスピード速すぎねえか?」
そう、歩くスピードが尋常じゃないことに気がついた。瞬きしている間に、だいぶ近くまで移動してきている。
一回瞬き。やはり近づいてきている。また瞬き。やはり近づいてきている。また瞬き。やはり近づいて…………って近っ!?!?
俺は目の前に突然現れた謎の女性に驚き、不覚にも尻餅をついてしまった。
うわ、俺ダサ……じゃない!誰だこいつ!!
俺は勢いよく顔を上げた。そこに立っていたのは…………。
「どうも、翔太くん!女神のアリア様だよ!!」
「………………は?」
自然とこう返してしまった俺を、誰が責められようか。