静かなる戦争:KJ-02
ロシア帝国は上清帝国の首都北京から大韓帝国の首都漢城府までの長距離鉄道をドイツ資本の援助によって僅か4年あまりで完成させたのだ。
そして、これらの鉄道網は大連やウラジオストクを結び、シベリア鉄道となって東洋と西洋を結ぶ一大行路として運用が開始されている。
鉄道網が完成したことによって物資輸送も容易となっており、有事の際にはロシア帝国は極東まで人員をシベリア鉄道を経由して送ることが可能となり、ロシア帝国は大きなアドバンテージを得ることに成功している。
ロシア帝国は正式に露仏同盟を解消し、新たに独露協定を結ぶことになった。
イギリスとの関係は悪化の一途をたどっており、英国資本の大部分はロシアから撤退すると同時にドイツ資本によってロシア帝国の経済は再生されようとしていた。
軍隊を再編し、清国内戦で得られた経験をもとに装備も一新しているようだ。
それに負けじと現在日本でも軍隊の改革が急務となり、新兵器の開発・製造が急ピッチで行われていた。
変則商社も銃器産業に参入し、対塹壕用の短機関銃の開発に乗り出していた。
兵器工廠として民間で開発されている中では恐らく多額の資金を運用して日露戦争が勃発するまでに5000挺の短機関銃を製造・配備を完了するべく設計と試作テストが行われている。
短機関銃の利点は閉所においてボルトアクション式の小銃を利用するよりも弾丸の発射速度に優れているのと、連射ができるので塹壕や要塞内部での近接戦闘時にはその威力を発揮できる武器なのだ。
戦前の日本ではごく少数が生産されていたらしいが、アメリカ軍のトンプソン小銃などに押されて近接戦闘では苦戦していたという。
AKシリーズのような携帯式のアサルトライフルなんてものはまだないし、アサルトライフルの元祖とも言えるウインチェスター製のM1907が登場するまでにまだ4年以上の時間がかかる。
それなら簡素で歩兵が携帯しやすい短機関銃を作ってしまえばいいと思い立ち、軍部に小火器開発の許可を貰い、神戸市内で倒産した製糸工場を買い取って工場を丸ごと小火器製造の軍需工場へと変えてしまったわけだ。
短機関銃の開発が成功し、歩兵部隊に持たせることが出来れば旅順要塞内部の攻略も早く済むだろう。
とはいっても短機関銃はまだ開発している途中の武器だ。
実戦で使われたのは第一次世界大戦末期のドイツ軍が使用したMP18が有名かもしれない、第二次世界大戦でもその改良モデルであるMP28が使用されていたが、いずれも第二次世界大戦末期までドイツ軍を支えた武器となった。
ヤワな武器でも壊れたり装弾不良を起こしたら問題になるので、現在開発しているのはこのMP18に匹敵する短機関銃の開発を行っている。
短機関銃の開発に成功すればアサルトライフルの開発にも役立つだろう。
開発中の短機関銃のコードネームは「KJ-02」という名前で開発が進められている。
アメリカの銃器メーカーS&Wやスイスの銃器メーカーSIG社から技術者を引き抜いて開発しているのだが、設計の図面で従来の銃とは違う構造になっているので、連射を可能にする装置などをマキシム機関銃の連射機関構造などを参考に、現在開発が進められている。
KJ-02が正式採用されれば日露戦争が勃発すれば近接戦闘で日本側に大きなアドバンテージになるのは間違いないだろう。
ロシア帝国もマキシム機関銃はあるが、あれは固定設置型の機関銃だ。
大きくて重さも10キロ以上あるので持って移動するのは困難だ。
要塞内部や塹壕・市街地戦になった場合、移動しながら連射できる短機関銃があればそれだけで制圧戦を行う事も容易になるだろう。
この戦いで日本が負ければロシア帝国の傀儡国になってしまう可能性が大いにある。
そうならないように武器の面でもロシア帝国よりも有利に戦える武器を用意しなければならないのだ。




