対馬動乱:導火線
200万PVを突破したので初投稿です
翌朝になっても街は対馬で起こった要塞の爆発を気にしている。
国防の最前線で起こった出来事であり、管理が徹底されていた弾薬庫が爆発するという事態ということもあり、第二次山縣内閣は対馬に警察だけではなく軍も派遣して大規模な調査に乗り出している。
そして2週間が過ぎた。
1900年1月17日…。
東京はすでに開戦前の雰囲気を漂わせている…街並みも戦時体制に備えて準備を淡々と行っている。
商店街では「打倒ロシア帝国」を掲げた看板やポスターが目立ち、亡命してきた大韓帝国の知識人らが集会を開いて、大韓帝国政府の不当な行為によって囚われている同胞達を救ってほしいと街頭で涙ながらに演説を行っていた。
それを見ていた群衆も同調して敵国ロシアとそれらと手を組んでいる国家を打倒せよと叫んでいる者までいる。
既に政府上層部でも対馬で起こった要塞の爆破事件に関してはロシア帝国と大韓帝国政府が大々的に行った可能性が非常に高いと結論を出していた。
私もアドバイザーとして日本の運命を担う重要な会議に参加していたのであった………。
「…では、ロシア帝国と大韓帝国は協力して対馬の要塞を爆破させたのか?しかし、なぜ君がそのような情報を持っているのだ?」
「それは検索しないというお約束ですよ山本大臣、強いて言えば独自の情報網を使って調べた結果、彼らは自分達に不都合な人間を消すための工作を行うために要塞を爆破させたという事です…彼らの本当の狙いはこの人物の抹殺、もしくは人さらいが目的でしょう」
この重要な会議に参加している理由は明治天皇を通じて山縣有朋総理大臣に私の素性の情報がもたらされたことにより、山縣総理が私を政府の国政会議に参加することを推し進めたのだ。
18歳で国内有数の大企業のトップになるのは彼らからしてみても異様に見えたそうだが、先進的な考え方によって企業業績が上がっていることや、航空機など軍事的にも精通していると考えてこの会議にアドバイザーとして参加している。
無論、総理を除いて他の大臣には私が未来からやってきたということは伝えられていないので、秘密を知っているのは政府でも山縣総理ぐらいしか知らないというわけだ。
海軍大臣の山本権兵衛大臣がなぜそんな情報を持っているんだと突っかかってくるのは当然だが、この場で未来知識を無駄に披露して優越感に浸かるような馬鹿な真似だけはしたくないので、独自の情報網によって入手したと語った。
実際に蒼龍の指示で范さんが中心となって対馬を捜索した結果、李に関する情報が手に入った。
それも大きな手土産付きで…。
調査報告書には金刃陰陽神社に金という大韓帝国から亡命してきた人物がいたそうだが、要塞爆破事件の直後から行方不明となっており、この人物こそが李であったと断定できたのだ。
その証拠として大韓帝国政府とロシア帝国政府との間で交わされた密約を記した重要書類がいくつか発見されたのだ、それも大韓帝国政府の要人のサインが書かれたものであった。
どこにその重要書類が見つかったかというと、金刃陰陽神社で住み着いていた野良猫の首輪に、折りたたんであった用紙が折りたたまれていたそうである。
李が拘束される直前にこの重要書類を懐いていた野良猫の首輪に挟んだのではないかと思われる。
その重要書類に関しては大韓帝国政府にとって消しておきたい情報でもあったので、日本政府は今後さらに調査を掘り下げることになるだろう。
次に議論されたのが要塞が爆発したのは敵性国家による組織的な犯行である可能性が非常に高いというロシア帝国との戦争になった際にどのようにして戦いを進めるか、そして二ノ宮博士の指揮の元で開発されたタ式航空機などの航空兵器の実戦投入が可能か否かについてであった。
タ式航空機は陸海軍にそれぞれ導入されており、陸軍は8機、海軍は10機を保有している。
世界初の航空機部隊だが、これらの航空機の航続距離は第一次世界大戦時の航空機に比べても短く、海軍が導入した水上機型で航続距離は改良を重ねて約10キロだ。
これらを偵察機として使用する案が盛り込まれている、それについて意見を交わし始めたのだ。




