六月十二日:御前
宮城前に到着すると、そこは皇宮警察によって警備された区画になっている。
皇宮警察も内務省ではなく宮内省が管理を委託されており、エリートの優秀な警察官が配備されているのだ。
馬車が宮城に入ろうとすると、一人の警察官が駆け寄って馬車に乗っている人を確認し終えてから中に入れてもらえるのだ。
江戸城の跡地にできた宮城は都内でも有数の自然が残っている場所だ、それは明治時代でも変わりないように感じる。
馬車は宮城内をゆっくりと進み、明治宮殿と呼ばれている場所に到着した。
この場所はアジア初の大日本帝国憲法が発布された場所であり、天皇陛下の拝謁の場として用意られることのあるところだそうだ。
つまるところ、ここに陛下がいらっしゃるというわけだ。
息を飲んで案内人の人の誘導で明治宮殿に入ると、これまたすごく綺麗な場所に足を運んでいる。
シャンデリアや金銀などの色彩とりどりの模様が描かれている部屋………いや、部屋というよりも宮殿という言葉に不足ない程の場所だ。
いかん、かなり緊張してくる。
恐らく今までの中でも…前世を含めてここまで緊張しているのは初めてじゃないだろうか。
日清・日露戦争において日本を勝利に導き、国の近代化を推し進めたアジア史上でも絶大な影響力を有していた…今は有している明治天皇とお話をするのだ…。
胸がかなり高鳴りをしているように感じる。
一息、深呼吸をして呼吸を整える…。
うん、大丈夫だ…問題ない。
私と蒼龍は明治宮殿のある部屋に招かれて、そこで明治天皇と謁見することになる。
その部屋は明治天皇が個別の会談などを行う際に使用されている部屋のようで、あまり明治宮殿に詳しくない私でも、その部屋が意味するのは国の国家元首が話す事を望んでいる部屋であるということだ。
どんなことを聞かれるかは分からないが、ここまで来て後には引けない。
意を決して、私と蒼龍は明治天皇がお待ちしている部屋にやってきたのであった。
部屋にピシッとした姿勢で座っていたのは歴史の教科書や資料などで何度か見た明治天皇陛下であった。
立派な髭と顎髭、凛々しい顔立ちをしている明治天皇は私と蒼龍がやってくると、よく来てくれたと労いのお言葉をかけてくれた、私と蒼龍は恐縮ですと陛下に一礼してから用意してくれた椅子に腰掛けて、話をすることになる。
「最初に会う者たちはやはり緊張するのは朕とて同じだ、そう固くなりすぎなくても良い」
「はっ、恐縮でございます」
「…して、朕が二人をこの部屋に呼んだのは他でもない。まず阿南…君の活躍は新聞などでも報じられているのを目にするが、雑穀煎餅や即席めんの新商品はどのようにして作られたのか教えてもらえないだろうか?」
聞くところによると、皇族の方が雑穀煎餅や即席めん…インスタントラーメンを食べた所、非常に美味しいとの好評を頂き、明治天皇もインスタントラーメンを作ってもらい、食べたところ…見事に嵌ってしまったそうで、変則商社で発行している「即席めんレパートリー」という色々な食材を入れて栄養値の偏りを防ぐ調理法を実践して食べているとのことだ。
そうした経緯もあって私にどのようにしてそうした新商品が作られたのか知りたがっているということのようだ。




