六月十二日:お呼びだし
仕事で辛いときがあったときにはカクテルを飲んでいるので初投稿です
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西暦1899年(明治32年)6月12日
先月初めに拗らせていた風邪の症状も蒼龍の献身的な看護によって完治し、今日はとっても体の調子はいい。
調子はいいのだが、今日は私と蒼龍に重大な用事が入っている。
ある御方から会談を申し込まれたのだ、流石の私もまさか国の一番上の人からの会談が申し込まれるとは思ってもいなくて、手紙を渡しに来た人に何かの間違いではないかと思い、再確認した所本物の菊花紋章付きの厚い箱の中に招待状が入れてあったのだ。
招待状には5月12日に宮城にて会談を行いたいので、是非とも来てほしいという内容であった。
12日の午前10時に迎えの馬車を寄こしてくれるそうなのだが、宮城とは…皇居のことであり、早い話が天皇陛下との謁見を行い、陛下と会談を行うという割と凄まじいものだ。
今の天皇陛下は明治天皇のことであり、日本史の中でも国内のみならず諸外国に与えた影響力は大きい。
そんな畏れ多い御方から来てほしいと言われたら、行かないと失礼極まりない。
日本の国家君主であり、陸海軍を統治する大元帥であるので、もし体調不良を除いて故意に用事をすっぽかしたらその次の日から日本で居場所はなくなるだろう。
なので今日はとびっきりの礼服でいかないと失礼だ、蒼龍にも上物の着物を買って着付け師に依頼してセットアップ作業を行ってもらっている。
いや、本来であれば私一人だけかなと思ったのだが、どういうわけか蒼龍までお越しくださいと書いてあったのだ。
蒼龍曰く、青龍族の血筋の者であると知られたのだろうと妙に納得した様子であった。
理由を聞いてみたのだが、今は秘密だと言って教えてもらえなかった。
蒼龍なりの秘密らしいのだが、一体どんなマジックを使ったら蒼龍まで呼ばれるのかが謎だ。
ビシッと決まった礼服を着て、蒼龍は着物を着付け終えると椅子に座って迎えの馬車来るまで家の中で待っていたのだ。
着付け師の人にお礼を言うと、いつも私に世話になっているからこれぐらいお安い御用ですと言っている。
この着付け師の人は浅草で呉服店を営む清水さんという人で、長年呉服店で働いており、浅草の雑穀煎餅販売で色々とサポートをしてくれたうちの一人だ。
それこそ着物中心の生活をしていた江戸時代の頃から働いているので、蒼龍の着物の着付けをあっという間にこなしてくれたのだ。
その清水さんが帰る際に、私を呼んで耳元で囁いたのだ。
「阿南さん、阿南さん、蒼龍さんの着物…京都でも本当に手に入れるのが難しかった着物なんですよ、滅多に出回るような着物ではないのです。こういう着物は業界でも一度見れるか否かという代物です…ですからこれからも大事にして使ってくださいね。それではまた…」
そんなに珍しい着物なのか…清水さんに着物を依頼したのだが、その着物の出会いもまさに奇跡に近いような入手方法だったようだ。
着付けを終えた蒼龍を見ると、夜桜を彩った綺麗な着物姿をしていた。
顔も人間の時は色白く、透き通るような肌…蒼い髪を結び、赤黒い瞳をしている彼女はかなり美人だ。
売り子をしていた時よりも一段と美貌という単語が似合う顔立ちをしているといえばいいのだろうか…そんな蒼龍はニコッと笑う。
「…どう…かな?中々様になっているじゃろう?」
「うん、とっても綺麗だよ…」
「そう………言ってもらえると嬉しいのう…何かと余も緊張するからのう………」
蒼龍でも緊張することがあるのかと思ったが、下手に色々検索するのはよしたほうが無難なので、言わないようにしよう。
さて、もうじき10時になる頃だ………10時ジャストに迎えの馬車が来たので、私と蒼龍は馬車に乗り込んで宮城へと向かっていった。
ちなみに、自分でカクテルは作ってます。
ロシアンコーク(゜д゜)ウマー




