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阿南家:煎餅づくり

蕎麦を堪能した後で、お会計をお願いした際に私はそば粉を1キロほど買いたいと申し出た。

ウェイターの女性が、分かりましたと言うと店の奥からそば粉が入った袋を持ってきてくれた。

一袋10銭だったので、思っていたよりも安く購入できた私は、これ以上荷物は持てないので、一旦家に戻ってきたのである。

家に戻ってくると、私は一郎に見つからないように家の裏口から家に入って部屋に道具一式とそば粉の袋を部屋の片隅に置いてから再び家を出た。



次に向かった先は米屋だった。

米屋には多くの米が置かれているが、その中でも私が欲しかったのは粟や稗といった雑穀の類だ。

これらの雑穀にも多くのビタミンやミネラルが含まれているので、煎餅を作る上では必要不可欠な素材でもある。

雑穀類は白米に比べると値段は2~3割安く買えるのだ。

また、片栗粉も売っていたのでこれも迷わず購入する。

さらにその後1時間くらい街中の店を回りながら必要なものを買い揃えるために彼方此方出向き、これらのものを袋ごとに分けた上で、大袋の中に一つに纏めて私は家に持って帰ったのだ。



家に帰ってきて少し休憩し終えてから、私は早速煎餅作りをすることにした。

用意した材料は以下の通りだ。

しっかりと手を石鹸で洗い、綺麗にした状態で煎餅の試作に取り掛かろう。

この煎餅は雑穀煎餅(仮名)とし、この明治時代でも作ることができるようにした。



・稗・粟を粉末状にしたもの(50グラム)


・そば粉(50グラム)


・片栗粉(適量)


・水(70ミリリットル)


・ごま油(大さじ一杯)



稗と粟、そしてそば粉の三つ…それぞれ3対3対4の割合で取り出してから、雑穀煎餅(仮名)を作る。

まずボウルにそれぞれ粉をふるってから水を加える。

この時に、水の量は粉の7割程度…今回は粉ものは合計100グラムなので水は70ミリリットルほどでいい。

あまり多すぎるとべちゃべちゃしたマズイ煎餅になってしまうので、ちょっと少ないと思うぐらいで十分だ。



水を粉に加えたら、しっかりと生地をこねる。

こねている時に気を付けたいのが、こねるのを緩めすぎてしまうと弾力が無くなり、焼くときに苦労するので、しっかりと右手に力を入れてこねる。

しっかりと弾力をつけて水を吸わせたのを確認してから、10分ぐらいで今度は片栗粉を適量入れて5分ほど混ぜる。



それらを完了させたら、いよいよ煎餅を焼く準備に取り掛かる。

オーブンや電子レンジが無いので、即席で石を囲んで焚火の準備を済ませた場所を作り終えている。

鉄板であればこのくらいでひとまずは十分だ。

燃え過ぎないように、火力に気を付けながらマッチに火を付けて焚火を行う。

今日は風も強くないので、問題ないだろう。

焚火をしている上に石で鉄板を置く場所をしっかりと固定してから団扇で火加減を調整しながら、鉄板を乗せてその上に煎餅の生地を平らに乗せる。



大きさは子供でも持ちやすいぐらいの大きさでいい。

直系4~5センチぐらいの大きさにしてから、10枚ほど乗せてその上にもう一枚の鉄板を重ねる。

これで3分間ほどしっかり焼いてから、加減を調整する。

ジーッと生地が焼いていく音が聞こえてくる。

体内時計で3分を数えてから鉄板を開くと、ちょうどいい硬さに裏側が焼き上がった煎餅が出来上がった。

鉄板から取り出して、少し冷ましてから味と感触、そして香りが問題ないか確認を行う。



「うん、焼き加減もいい感じだな。味のほうも素朴な味だから受けもいいだろう。香はそば粉を多めに入れたから蕎麦の風味が残っているような気がするな…。これはこれでいいんじゃないかな」



出来上がった雑穀煎餅の自己評価は、まずまずだ。

初めて作った割には上手くいった上に、雑穀のほのかな甘みや食感などが凝縮されたような食感を味わえる。

そして肝心の味だが、改良を重ねればさらに甘いものにも応用できそうな味になるだろう。

だが、これを販売するとなると…コストの問題が出てくる。

開店の1時間前からこの雑穀煎餅を焼くとして、多くの材料を使って一度にやったとしても…出来上がるのはせいぜい80~100枚前後だろう。



1枚は1銭あたりでいいかもしれない、1銭煎餅として売り出せば…材料費などを差し引いても30~50銭ぐらいの利益になるはずだ。

おおよそ、そばが6~7銭だからそば5杯分前後を小遣いとして稼げると思えばいい。

あとは馬鹿一郎がちょっかい出さないことを願って父親に相談してみるか…。

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