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私による近代日本改革記  作者: スカーレッドG
(旧)アジアの夜明け
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アジアの夜明け:仕事始め

大陸の情勢を読み終えると、私は腰かけていたソファーから立ち上がって、背伸びをしてから仕事に取り掛かる。



「さて…今日は仕事始めか…さて…そろそろ出社するとしようかな蒼龍、準備は出来ていますか?」



「おお、勿論じゃ…どれ、そろそろ行くかのぉ、ところで…阿南殿、余の恰好は変ではないかの?」



「いや、変ではないですよ。とってもお似合いですよ」



「そう言ってもらえると嬉しいのう、台所の勝手口の扉を閉めて…家を出るときに戸締りを済ませておけばいいんじゃな?」



蒼龍は紺碧色の袴を着ながら、私と一緒に出掛けようとしている。

無論、遊びをしにいくのではない。

これから会社に行くのだ。



1月2日は仕事始めの会社が多く、我が社も1月2日は仕事始めであるので出社する決まりができた。

無論、出社する社員や従業員の人たちの新年のご挨拶と、餅つき大会、厄年の社員へのお祓い等々行事が目白押しとなっている。

いわば社員向けの祭りみたいなものだ、福利厚生も兼ねて家族の参加も認められている。

浅草の工場には360人の従業員がいるが、餅つき大会に参加する家族などを含めるとざっと千人になるという。

また、浅草で企業提携をしている商店からも餅つき大会に参加する人がいるので、その人達への挨拶などもしなければならない。



いまや工場や関連企業の社員なども含めると1万人を超す大企業に成長しているのだ。

思えば西暦1895年(明治28年)4月17日に、この世界の阿南豊一郎として転生して3年と9カ月…実年齢18歳の若者が社長をやっている上に、二ノ宮博士やテスラ博士を引き抜いて先進的な会社を作り上げようとしている…。

歴史を変える、そして将来起こるであろう太平洋戦争を回避する…それは私が転生した際の初期目標であった。



日本の歴史を変えるという目標はすでに達成されている。

私の知識で作った雑穀煎餅と、史実で世界的に評価されたインスタントラーメンの製造を数十年早く作った結果…脚気発生率は大幅に激減した。

さらに、インスタントラーメンを食べる際に、野菜などの食材を一緒に取ることを推し進めた結果、米類だけでなく野菜の生産も大幅に増産されているという。



だが、この時代の農家は地主と小作人によって分けられている。

明治時代初期に行われた地租改正によって土地に税金が課せられるようになり、、特に小作人と呼ばれている人たちの生活は貧しいものであった。

戦後日本を占領したGHQ主導で行われた農地改革によって、小作人に土地が行き渡るようになって、生活は何とか保たれることになった。

まだ明治時代の現在はそうした事情もあり、農村部から出稼ぎにやってきている労働者も多い、我が社でも全体の1割にあたる従業員が農村部の出身の者だ。



そこで、現在は農村部への工場新設や発電所事業の推進を推し進めて、農村地帯への電力供給並びに雇用を促進しようと考えている。

無論、これらの事業推進に当たっては工場などから排出される工業用汚染水や廃棄物の処分・処理方法や水力発電所の破壊ないし大規模災害が起こった時の対処法などを明確に記したうえで、その地域に住んでいる人たちへの説明や、交渉なども慎重に行っている。



うまくいけば、農村部の貧困問題を解決する一つの糸口になるかもしれない。

史実の二・二六事件を起こした青年将校たちは農村部で起きている貧困などの問題に直面し、政府や軍の上層部がこれらをひた隠しにしていると判断し、昭和天皇を説得し急進的な社会主義国家にする為にクーデターを起こそうとしたとも言われている。

最も、この事件では昭和天皇は自身が信頼を寄せていた信頼できる人達がクーデター部隊の銃撃を受けて殺傷されたことを知った昭和天皇自身は、報告を受けると同時に大激怒して軍装に着替えてクーデター部隊のことを「賊軍である」と言い放ったと言われている。



この二・二六事件を境に日本は国内の不安定化を取り除くべく、軍部主導の政治体制となる。

軍部によって民主主義体制が台無しになったという人もいるが、世界恐慌やそれに次ぐ国際情勢の不安定化が軍部主導による政治体制へと変貌していったのではないかと思う、そしてその政治体制を望んだのは国民の支持の元で行われたものだ。

イタリアのムッソリーニ、ドイツのヒトラーが政治の主導権を握れたのも、国民の選挙によって選ばれたものだ。つまるところ国民が彼らを支持したことで独裁者が台頭したのだ。



独裁者が台頭するのを防ぐための行動に関しては今後の課題だ、太平洋戦争の阻止も重大であるが歴史が大きく変わっているので、今後の情勢を注意深くしなくてはならない。

さて、暗い話はここまでにして、新年の仕事始めをしなくては…。

まずは、本社で挨拶をすることだ。

黒と白のラインが強調された袴を着て、蒼龍と共に本社へと足を運んでいくのであった。

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