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阿南家:台所用品店

「いらっしゃいませー」



店に入ると、眼鏡をかけた店主が出てきた。

長いこと台所用品を取り扱っている商売をしているようで、何かお探しですか?と声を掛けてきた。

私はまだぶらりと立ち寄ったばかり、まだ決めていないので暫く見ていたいと言うと、分かりましたと言って店の奥に下がっていった。

台所用品専門店だけあって様々な商品を取り扱っている。

特に目を見張るのは調理道具の豊富さであった。



「おお…台所用品専門店だけあって調理器具は何でも揃っているな…」



包丁にまな板は勿論の事、おろし器にしゃもじ…そして泡立て器なども取り揃えていた。

こうした調理器具が沢山並んでいるのを見ていると、職場に入りたての頃に新商品を開発していた頃を思い出す。

入社したての頃は、駄菓子ではなくスナック菓子に子供たちが夢中になっていたので、ポテトチップスなどの新商品開発に勤しんでいた。



「今の家は商店というよりも父親の本業で儲けているようなものだからな…私も自分の販売スペースを確保できればそこで売ることができるだろう」



父親の草摩は商店での販売の他に、金持ち連中への骨董品や美術品の取引や収集などを行っているので、商店の経営は本業ではなく副業扱いである。

あの店先に手作りのお菓子を売り出すだけでも相当の効果があるのではないだろうか?

私が知る限りでは商店の場所は人通りも多く、販売をするにあたっての立地条件は良好だと思う。



では、仮に店先でお菓子を販売するとしたらどのようなお菓子にするべきだろうか?

ふむ…この時代にポテトチップスを流行らせるのもいいな。

ポテトチップスであればジャガイモを薄く切って油でカリッと揚げればいい。

調理方法が私の知っている中でも簡単で、かつ時間も手間もかからない上に利益率も高い。



包み紙で包んで1パック1銭程度で販売すれば十分に利益はでるだろう。

ポテトチップスの原料になるジャガイモだが…。

ジャガイモを取り扱っている商店がまだ見つかっていないので。ジャガイモの価格が不明だ。

ただ、ジャガイモは春と冬に収穫時期を迎えるはずなので、記憶が正しければ今が収穫の時期である。

ジャガイモを安く手に入れれば明治時代にポテトチップスを普及し、日本市場を独占することもできるかもしれない。



だが、あの家から抜け出せると思えばポテトチップスを販売するのもいいかもしれない。しかし…だ。

それに目を付けた一郎や次郎が何をしでかすか…。

この発明は俺の物だといって強引に取り立ててくるかもしれない。

そうなればせっかく買った調理器具はおろか、今後の見通しも水の泡になってしまう。

ではせめて…技術的に見ても簡単に作れて、尚且つ一郎達に奪われてもいいお菓子を作るべきじゃないのか?



要は、レシピなどが盗まれたり特許などを取られたとしても挽回できるぐらいの代物…。

駄菓子あたりがいいんじゃないだろうか。

小麦粉や砂糖などを混ぜて煎餅せんべい状にしたものを売るのはどうだろうか…?

ソースせんべいと呼ばれているシロモノだが、元々物資不足だった戦後になって開発されたものだ。

あれならここにある道具を購入すれば作れるな…試しに道具と小麦粉や砂糖などを買って家で作ってみるのも悪くない…。



いや、それよりも原料は雑穀米はどうだろうか?

雑穀であればお米よりも安価に買える上に、戦争で多くの兵士を病死させ国民病とも言われた「脚気」にも効果がある。

ビタミンも取れるし塩や黒砂糖で味のラインナップを整えれば、安価で安く、味も豊富でパリパリになった煎餅を子供のおこずかいでも買える値段で売りに出せば、それこそヒットできるかもしれない。



しかし、それにはリピーターが必要だ。

毎日とはいかなくても2~3日に一回は買いに来てくれる子供、そして子供が友達に教え回ってくれればそれだけで宣伝になる。

インターネットやテレビ、そしてラジオすら一般的に普及していなかった時代。

新聞を除けば口コミの情報こそが頼りだ。

うむ、とりあえず調理道具を幾つか購入して、薄い煎餅ができるように工夫したほうがいいだろう。

私は、店主にいくつか買いたいと申し出て、母さんから渡されたお金を有意義に使い、早速作ってみるとしようじゃないか。

父親には兄の馬鹿一郎の更生目的も兼ねているとか適当に理由をつけて手伝わせてから売り出そうか。

さて、私なりにやるだけの事をやろう。


もし皆さんが明治時代にタイムスリップしたらやりたい事はありますでしょうか?


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