黄龍の分裂:兵糧食
最近仕事が辛くて、脳内で某ハムスターキャラが励ましてくれるように設定しているのですが、仕事でいつもミスすると「へけぇっ!!!」と言うようになり、ついに昨日仕事中にへけぇっ!!!とリアルに言ってしまいました。
司令部にて、乃木中将はローレス大将から現在の香港戦線の状況を聞くと、すぐに前線に兵站を敷いて防戦に当たらせることを約束した。
先遣隊2個連隊に対して積荷を輸送船から卸してから夕方までに行動を順次開始した。
到着した先遣隊のうちマキシム機関銃を配備した機関銃部隊を前線近くの塹壕に配置し、そこに今年制式採用されたばかりの三十一年式速射砲4門が持ち込まれる。
塹壕は既にイギリス統治軍が初歩的な塹壕を構築しており、乃木中将はその塹壕線を最終防衛ラインと定めて、相手の民兵軍の兵力が消耗しきった時に大攻勢を開始する予定だ。
それまでは師団の本隊と野砲部隊の完全配備が完了するまでは、攻勢はかけない。
塹壕構築後はイギリス統治軍の前線部隊を下がらせて、イギリス統治軍の充足率を補充すると同時に大帽山の高台から野砲による攻撃を開始し、元郎区八郷・大埔区工業地帯に最終防衛ラインを敷いて上清帝国の武装民兵軍の猛攻を食い止める。
民兵軍の総兵力に関しては未知数な部分も多いが、乃木は日清戦争時に清国軍と戦った経験があるので、その経験を活かして非正規軍とはいえ、武器に手慣れた者たちが防衛側の疲労に達した時に攻勢を仕掛けてくる特性があることに気が付いたので、一か所に突出した防衛陣地を構築し、そこに敵が群がってきた所を機関銃や野砲による制圧射撃にて封じ込めるというものだ。
火力や装備においてはイギリス本国軍と同等かもしれないが、精神的士気は日本軍のほうが遥かに上であった。今回派遣された部隊の殆どは日清戦争を経験した兵士が多く、特に野砲部隊は最新鋭の制式化された野砲が実戦に投入されるので、その威力を目の当たりにしたいようだ。さらに、白人人種であるイギリス人が日本に助けを求めてきたという点も日本軍の士気を上げている点に挙げられる。
白人列強諸国の一国であるイギリスが助けを求めてきている。
それも、イギリス軍の兵士達も応援に駆けつけてきた日本軍の兵士に握手を交わしたり、作戦内容や各部隊の少尉クラス以上の軍人は英語を話して部隊の各兵士達にテキパキと指示をこなしたので、イギリス兵からも日本軍の信頼を得ることが出来た。
日本人はこの時代、欧米列強からは「ものまね猿」と蔑称で呼ばれることが多かったのだ。
今でこそそういった類の発言は差別に値し、インターネットや世間で堂々と発言すればドン引きされる、もしくは発言の動画をネット上にアップロードされて大炎上して謝罪に追い込まれるだろう。
しかし、20世紀後半に公民権運動が広がるまでは白人以外の種族は何かとそういった蔑称で呼ばれることが多いのだ。
無論、政府高官などが集まる場でそんな無礼なことを言うような奴は殆どいないが、イギリス本国から香港に移住してきた一般市民からは心許ない事を言われることも多かったのだ。
「ケッ、ついに我が大英帝国の重要拠点がピンチだからって猿が来やがって…」
「俺達を襲いにかかってくる清国の連中と目つき以外殆ど変わらないよ!!」
だが、前線で戦っているイギリス兵からしてみれば、アジア人だろうが何だろうが誰であれ、助けに来てくれたことがありがたかったのだ。
特に、疲労していたイギリス統治軍に代わって、日本の工兵部隊が塹壕の構築を担い、イギリス統治軍に僅かながら休息ができる時間が出来た。
そして何より彼らイギリス兵を喜ばせたのは日本の兵糧食であった。
「…おーい!!!配給食だ!!!日本軍が食料持って来てくれたぞぉーっ!!!」
補給部隊の連中が荷台一杯に積まれたインスタントラーメンの缶詰を持ち込んできた。
湯をかけて3分で出来上がるこの麺…戦闘が始まって一週間以上経過しているが、その間…民兵軍の大攻勢が開始されてからというもの冷たい缶詰や紅茶ばかり飲み食いしていたイギリス統治軍の前線兵士達に振る舞われたが、久しぶりに取れる温かい食事に、皆涙を流した。
この時に、缶詰に入っているインスタントラーメンに感激したとあるイギリス軍中尉が日本軍の少尉にこの食べ物の名前を尋ねられた際に言ったのが、変則商社で製造されて国内販売名称である「インスタントラーメン」と答えた為、イギリス統治軍の間で瞬く間にインスタントラーメンが知れ渡ることになっていくのであった。




