黄龍の分裂:香港燃えゆ
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西暦1898年(明治31年)8月5日
イギリス統治領香港…現在香港は反英感情をむき出しにしている仁義会と、それに便乗して略奪や放火などを行っている暴徒などの構成員によって大規模な攻撃を受けていた。
その大規模な攻撃を受けているのが上清帝国との国境に面している香港新界の大埔区、元郎区であった。
この地区は隣接する清国深圳市の各所を制圧した仁義会が、香港への侵攻を容易にするために漢陽88式小銃などの近代的な小火器だけでなく、国際貿易を経由して極秘裏に持ち込まれたロシア製の87ミリ野砲といったイギリス統治軍の重火器に対抗できる火砲で武装してきているのだ。
そして、87ミリ野砲の配備を完了した仁義会は7月20日午前11時からイギリス統治軍が防衛している北区に砲撃を開始したのだ。
清国がアヘン戦争の時にイギリス海軍の軍艦から一方的に攻撃を受けて、沿岸部に配備していた中世の火砲では威力も射程もイギリスには遠く及ばなかった。
しかし、今回はその復讐と言わんばかりに87ミリ野砲がイギリス統治軍に対して牙をむいた。
当初は軽武装した厄介な連中が攻撃してきたと考えていたイギリス統治軍の将兵は、インドからの援軍が来るまでに対処すれば問題ない。
そう思っていたのだ。
ところが、上清帝国が差し向けた武装組織が持っていたのは前線で威力を発揮する欧州製の火砲であり、イギリス統治軍の火砲はまだ新界北区には配備が完了していなかった。
都市部で武装蜂起した民衆の鎮圧のために、統治軍は香港の行政区画の防備を優先的に固める必要があったので大半の装備は行政区画に回してしまっていたのだ。
多数のマキシム機関銃と共に優先配備されたこともあって、清国国境には一個大隊と4挺のマキシム機関銃、オードナンス12ポンド砲2門が後方支援の為に準備されている程度で、殆どの兵士はMLM小銃かウェブリーMk.1リボルバーなどの小火器のみの装備しか整えていなかった。
それでも最初は兵士達がもっている武器だけで対処できた。
越境して襲い掛かってくる連中の殆どは武装した市民だからだ。
暴徒と殆ど変わりないので、足元を撃っても逃げずにこちらに向かってくる奴を撃ち殺すだけで良かった。
なので、清国の内戦が勃発した直後は行政区画での騒動に注意が引き付けられており、清国との国境線近くは音沙汰が殆ど無かった。戒厳令も敷かれているので、それを無視してイギリス兵を見つけ次第襲い掛かってくるような奴を、兵士達は頭を一撃で撃ち抜けるかどうか賭けていたほどだ。
だが、そんな事は長くは続かなかった。
7月19日深夜に深圳市の全域を支配下に治めた仁義会がイギリス側から見えない位置に野砲を配置に就かせてから翌日に仁義会の火砲が火を噴くと同時に、反英感情を爆発させながら突撃してくる数千人の武装民兵を相手に、北区に配備された香港統治軍歩兵師団アーロン・クローリー連隊第二大隊が猛攻を食い止めなくてはいけなくなったのだ。
最初は笑いながら対処していた兵士達も、次から次へと死んでも死んでも刃物や小銃を撃ちながら突撃してくる仁義会の人海戦術に恐怖を感じてきている。
何十、何百という人間を撃ち殺しても、その屍を越えて突撃を止めない仁義会…。
彼らの目は獲物を求める肉食動物のように、充血した目をギョロギョロと動かしながら全員で歌を大合唱しながら大隊の陣地目掛けて走ってくるのだ。
そして大隊の頭上に降り注ぐ87ミリ野砲の砲火に晒されて、戦闘から5日後には大隊の死傷率が50パーセントを超えたのだ。
「くそっ!!!これで何度目だ!!!あいつ等撃っても撃っても突っ込んできやがる!!!」
「おまけに何処から撃っているかわからない砲弾も飛んでくるわ、全く国境線の部隊に入るんじゃなかった…」
「なんて奴らだ…あいつ等化け物か?」
仁義会の幹部は民兵達に予め精神高揚を引き起こす興奮剤を注射しており、この興奮剤で精神が高揚している間に攻撃を行えば、死を恐れない兵士へと変貌できると考えていたからである。
この仁義会の目論見は見事的中し、その圧倒的な攻勢によって大隊は日に日に損害を増やし、仁義会はいつでも補充可能な新兵に注射を打たせてから前線に送り飛ばしていくのだ。
増援を要請するも市街地での武装民兵の制圧に手一杯であった統治軍本隊から部隊を引き抜くことはできず、おまけに7月29日には流れ弾によって大隊指揮官のジョー・ブライヤン少佐が戦死し、部隊の損傷率が40パーセントを越えて、士気すら持ち堪えそうに無いと判断した大隊代行指揮官ニック・クラウン大尉は連隊指揮官の元に撤退の許可を求める手紙を伝令兵に渡し、その日の夕方に伝令兵が帰ってきてクラウン大尉に撤退許可が出されたと伝えると、29日の深夜に仁義会の攻勢が止まったのを見計らって、負傷兵を引き連れて撤退した。
そして8月5日現在、香港統治軍歩兵師団アーロン・クローリー連隊は損害を出しながらも辛うじて防衛線を死守していたのであった…。
最近になってファンタジー小説も書いてみたいと思ったけど、翌々考えたらなろうではファンタジーって激戦区じゃまいか…。
今考案しているファンタジー小説の大まかなストーリーとしては、生まれつき足の無い青年が義足を見に付けて周囲からの支えによって初めて義足の勇者になって世界を旅するという物語を考えたんですけど…うーん、やはり今ある小説の中でも主人公側に「ハンデ」があって、そのハンディキャップな部分を克服ないし向き合っていくお話にしたいと思う。んで、むやみやたらにハーレム仕様にはせずにドロドロとした問題なんかも入り交じった感じのお話にしたいですねぇ…来年の1月か、早ければ11月中旬には火曜日・木曜日更新という形でゆっくり連載したいですなぁ…以上、チラ裏でした。




