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私による近代日本改革記  作者: スカーレッドG
(旧)成長戦略
48/125

成長戦略:眠れぬ獅子

………◆………



西暦1898年(明治31年)7月18日



今朝、海軍省から呼び出しを受けた。

昨日の遅くまで変則商社のアジア地域での商品販売などについて議論が交わされて、就寝したのは深夜3時すぎであった。

そして今朝の8時に家の前に海軍省の軍人がやってきて、至急の呼び出しがあります故、海軍省にお越しくださいと言ってきた。

私の隣で寝ていた蒼龍を起こさないように、置手紙を置いて海軍省のお偉いさんが寄越してくれた馬車の中に揺られて急いで向かっている。



馬車の中では些か暇だ…車のようにカーラジオやカーオーディオなんてものはこの時代には存在しない上に、路面がアスファルト舗装されていないので振動がかなり酷い。

それでも凸凹(でこぼこ)している山道を通るよりはましだが…いや、昨日あまり眠れなかったので、酷く寝不足気味だ。

なんせ私が就寝するまで蒼龍は眠らない、いや、寝ないのだ。



私は休んで寝てもいいと言っても、私と一緒に寝たいと言うのだ。

竜とはいえ、蒼龍は私と常に一緒に寝ることを好む…新婚ではないし、まだ結婚すらしていないのだが、一緒に寝るとなると猫のように凄く甘えて来る。

竜の姿になって私の胸の辺りで喉元を鳴らして眠りにつくので、これまた何とも言えない光景に戸惑ってしまい、結果的に蒼龍よりも遅くに寝てしまうのだ。

蒼龍は私が寝るまでは寝ないと言っているが、多分私に対して甘えたいから言っているのだろう。

竜なのに猫っぽいとはこれ如何に…。



さて、馬車の中で回想に浸るのもここまでのようだ。

海軍省の入り口に着いて、私は馬車から降りた。

赤茶色のレンガ作りの壁と、青い屋根の大きな建物…これが海軍省だ。

呼び出しを受けた理由に思い当たるとするならば、やはり清国内戦に関する事で協力してほしい…と、そんなあたりだろうか。

日本帝国政府は清国正統政府並びにイギリス政府から支援要請を受けた事で、行動を開始するのではないかと噂されている。

その辺は海軍省の人と会ってみないと判らないから、これから呼び出しをした相手との対談で、どのような支援が必要になったか話してみるとしよう。



海軍省医務局のドアを開けると、すでに私を呼び出した張本人達が出迎えてくれた。

海軍軍医総監の加賀美光賢と予備役となっている高木兼寛少将だった。

応接室に移ってからイギリス製のテーブル台に紅茶を置いてからの話し合いが始まったのだ。



「阿南君、海軍省に着いて早々に悪いが…頼みがある。近日中に変則商社で備蓄されているインスタントラーメンと雑穀煎餅の在庫を軍に回してもらえないだろうか?」



「…となると、やはり帝国は清国正統政府の支援の為に軍を派遣するのですね」



「その通りだ、海軍は7月21日までに…陸軍は7月30日までにイギリスとの協議の末、清国正統政府の上海と香港防衛の支援を承ることになった。」



帝国は清国正統政府の支援を行うことを決定したのだ。

清国における日本の利権確保もあるかもしれないが、今回はイギリスのお墨付きまで貰ったのだ。

イギリス政府が支援要請を行った理由についても加賀美総監が話してくれた。

イギリスの租借地となっている香港で、上清帝国を支持する民衆とイギリス統治軍との間で戦闘が発生しているという。

これらの民衆は皆武装しており、旧式の火縄銃などではなくドイツ製のGew88小銃を清国でライセンス生産された漢陽88式小銃でイギリス統治軍と交戦しており、香港では戒厳令が敷かれているという。



間違いなく衝突を引き起こしている民衆は仁義会とのつながりがある連中だろう。

でなければ、ここまでタイミング良く衝突が起きるはずがない。

イギリスは香港に守備隊を配置しているが、香港に配置している守備隊だけでは数が足りない。

日本帝国陸軍に1個師団規模の歩兵を治安部隊として大至急送ってきてほしいと緊急の要請があったそうだ。



変則商社への支援を要請してきたのは兵士達への兵糧食の提供か…。

インスタントラーメンと雑穀煎餅は現在陸海軍双方に納品されているが、それでも備蓄されている数は限られている。

つまり清国内戦が治まるまでの間に、派兵される帝国軍の兵士の胃袋を満たさないといけないようだ。

現在の一日での生産量は工場全体でインスタントラーメン8万個、雑穀煎餅15万枚になる。

派兵される兵士の数を差し引くと…ざっとインスタントラーメン2万個と雑穀煎餅5万枚が必要になる計算だ。

利益は減ってしまうが、元々軍の兵糧食として採用してもらったものだ。

兵士の脚気対策にも一役かってもらうとしよう。

【1898年 清国内紛シナリオ =陣営選択:日本=】

19世紀中頃、日本は江戸時代より長年続いてきた鎖国政策を撤廃し、戊辰戦争後に勝利した新政府軍によって明治政府が樹立する。

欧米列強諸国に追いつこうと、政府は富国強兵政策を推し進めた。

1894年に眠れる獅子と恐れられていた清国との戦争で勝利した日清戦争によって、日本はアジアでも有数の軍事力を保有する国家となった。

しかし、周辺国には欧米列強の一強国家である白熊のロシアがアジアへの南下をチラつかせて、華北や朝鮮半島の軍事支配を試みている。

清国では戊戌維新を実行に移した皇帝が、内戦によって北京を追われて上海に首都を移して清国正統政府を立ち上げて日本に助けを求めてきている。

同時にイギリス領香港では上清帝国の仁義会から支援を受けた民兵軍がイギリス統治軍を攻撃してきており、イギリスも日本に対して陸軍の派兵を申し出てきた。

近代史におけるアジア地域最大の内戦に介入する事になれば上清帝国との関係を深めてきているロシアと戦争になるかもしれない、日の出ずる国は大きな岐路に立たされている。

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