表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私による近代日本改革記  作者: スカーレッドG
(旧)魔法の食べ物
42/125

魔法の食べ物:衛生管理

工場の中に入ると、蒸気機関を元にした製造機器で溢れている。

手作業の部分も幾つかあるが、製造機によって時間を短縮できるのでより多くの商品を生産することができるのだ。

工場内では製造機を使った大量生産を前提としているので、機械を扱う社員に対しては製造マニュアルの徹底や機械の取り扱い訓練などを工場完成までの3か月の間に訓練をさせていた。

社員の多くは高給の求人を見てやってきたそうだが、機械を扱う従業員に関しては技術を要するだけあってか知識を多く必要とする。

故障の時の対処法や、異物混入…裁断機による切断事故など…様々な事故対処マニュアルを思い付く限り紙に描いて、機械の輸入元に足を運んで聞いてきたほどだ。



まだ製造機器や精密機械などは列強諸国からの輸入によって日本は支えられているのだ。

これらの多くはドイツ製だったり、フランス製だったりと統一性がなく、第二次大戦中に日本が部品の規格統一が難しくなった要因の一つに上げられている。

今回購入した複動式機関によって作られた製造機器は、イギリスの重機械工業エイジア社製の物を使用している。

このエイジア社製の機械を参考に、航空機を開発することになれば規格統一を行う為にも、製造機器の統一を支援するべきだと考えている。



エイジア社製の輸入元である河原商事の担当者との打ち合わせを何度か行い、英語で書かれた説明書を日本語に翻訳してもらい、さらにその翻訳された説明書と事故対処・対策マニュアルを機械を取り扱う従業員に熟読させた上で、先に教育用として譲り受けた機械で製造のイロハをたたき込ませた。

元々、工場に入社した従業員の大半は職人や商家から転職した者が殆どだ。

そのうち跡継ぎ候補から外れた次男・三男坊といった人達が多く、工場の求人は当初300人だったのに対して1000人もの入社希望者が出たのだ。



数多くの入社希望者が殺到したので、面談などを行ってから適正と判断された人達を雇った。

50人ほど雇用枠を増やして、浅草周辺の提携店舗への運搬・輸送を行う配送係や、工場の施設整備・管理を行う整備管理課の設置などをして、雇用の拡大を可能な限りで図った。

工場完成までの間にも訓練を行い、その間にも雇用している扱いにしてあるので既に実習分の給料は渡してある。

従業員も、給料を貰えないと住まいを追い出されてしまうので、訓練期間いえど…給料はしっかりと払う。

その甲斐あってか、従業員のモチベーションはかなり高いようで、初日からスムーズに雑穀煎餅及びインスタントラーメンの生産が開始されたのだ。



「うむ…どうやら順調にやれているようで何よりです…」



「はっ、全員今日という日を楽しみにしておりましたからな…きっと嬉しいのでしょう」



工場長として勤務することになった渡辺六右衛門が工場内を案内しながら、各部署をじっくりと見せてもらった。

渡辺六右衛門は元々日本橋の商家の生まれで、これまでにも繊維工場などで重役として勤めていた人物だ。周囲からの評判も良く、人柄も信頼できると判断して工場長として雇入れた人だ。



従業員の服装は、食品製造に関する従業員と包装・缶詰に関わる従業員は長靴と白衣と頭巾ずきんを身に付けて…外や提携店舗に商品を運んだりする運搬・輸送に携わる従業員は青の作業着を着せている。

これは、各従業員に役割を明確に示すための工夫だ。

また、製造並びに包装は清潔に関わる案件なので、作業前には必ず消毒液に浸けた場所で長靴を消毒し、作業工程前には消毒液を付けてから作業を開始するようにし、白衣のまま外出したり頭巾を脱いで作業したりしないように厳格にルールを決めている。



食品を作る上では衛生面に関しては徹底してやらないといけない。

これを怠ると、雑菌を媒体にして集団食中毒などの企業イメージ悪化を起こしかねないからだ。

幸いにも水で清めるという風習があるので、この辺に関してはすっぽかす奴はいないと思われる。

ただ、万が一ということもあるので工場長の渡辺には食品製造マニュアルを渡して、従業員に衛生と安全面での管理だけは絶対に怠らないように釘を刺した。



「渡辺工場長、衛生面と安全面に関しては本当に気を付けて作業を行うように従業員に徹底させてください、衛生を疎かにすれば商品の信頼性を損ない、安全を怠って重大事故を起こしてしまうと社会面での信用を失ってしまいます。衛生・安全は変則商社において絶対に怠ってはいけない事項です」



「承知しております、社長が指南して作った安全作法書(マニュアル)は全従業員に配布して、朝の朝礼時に必ず斉唱して従業員一人一人の意識を高めるように指導しております」



「分かりました、今後とも工場に関しては渡辺工場長にお任せしますので、何か事故や事件などがありましたら直ぐに私に連絡を入れてください、報告は嘘偽りなくお願いいたします」



工場の稼働によって、より多くの従業員が増えることになった。

利益を上げることも大事だが、やはりこうした安全・衛生面での管理もしっかりしなくてはいけない。

初歩的な事を疎かにすると重大事故や事件に繋がりかねない。

それを肝に銘じて従業員や管理者が適切な行動が出来るように、一歩ずつ進んでいってもらいたいものだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


小説家になろう 勝手にランキング
▽こちらでも連載中です。良かったら見てください。▽


私による明治食事物語
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ