魔法の食べ物:試食会
正直申し上げると、自分が今書いているこの小説で戦記モノ作れるかどうか悩ましい部分はありますが、少なくとも義和団事件あたりから史実と異なる歴史を歩ませようと思っております。
なので、戦記モノを期待している人はあと8話程度だけ待っていてください。
陸軍での正式なインスタントラーメンの採用が決まってから、インスタントラーメンに関する特許などを取得し、さらに雑穀煎餅の販売提携をしているお店の店主の人達を集めてインスタントラーメンの試食会をこれから行う。
生憎外は雨となっているが、それでも全員が呼びかけに応えてくれたので、正直嬉しい。
雑穀煎餅によって、販売提携をしている店は雑穀煎餅景気といわんばかりに、客が買いに来るので売上も大幅に上がってきているようだ。
三月には甲信越地方に、四月には関西・中部地方に雑穀煎餅の販売提携店舗を49店舗、新たに結んだのだ。
全国に変則商社と私の名前が広がっていくのだ、弱年16歳にして大手チェーン店会社の社長…前世であればここまで急成長することは至難の業だろう。
だが、私には知識があった。その知識を使った結果がこれだ。
転生して間もなくに兄弟と両親を失って横浜から浅草に舞台を移した結果、一人でやりたいことをすることが出来たのだ。
今は身体も会社も成長期に突入している、途中でつまずいて壊さないようにしないと…。
さて、本題のインスタントラーメンの試食会を行うとしよう。
試食会は変則商社本店の二階で行われるので、従業員の人達に手伝ってもらって机を何列かに並ばせて座布団を敷いて、各々店主が座布団の上に座る。
皆、何が始まるのかと期待した様子で私の方を見ている。
最後に到着した人が部屋の後ろの座布団に座ったのを確認してから、私は新商品を堂々と発表した。
「えー…皆さま、雨の中お越しくださって誠にありがとうございます。本日は雑穀煎餅に代わる変則商社の主力商品が完成しました、この主力商品をいつもお世話になっている皆さんに食べてもらいたく、ここにお呼びしました。…では皆さんに例のモノをお配りください」
従業員の人達によって丼の上に載せられているインスタントラーメン…それを各店主の目の前に置いてから熱湯を入れたヤカンでインスタントラーメンに注ぐ。
これだけで食べ物ができるのかと不思議そうに皆がインスタントラーメンに釘付けとなっている。
一部からは「まるで乾麺のようだが…かなり縮んでいるように見える」といった声もちらほら出ている。
「これは拉麺と呼ばれているものです。清国北東部で有名な麺類ですが、この商品は湯を三分掛けるだけで出来上がる料理でございます、わが社はこの商品をインスタントラーメンと名付ける事にしております」
三分で料理が出来るという言葉に皆が驚いている。
乾麺…蕎麦、素麺、うどんのような麺類であることは判るが、これが本当に三分間で出来上がるのかどうか不安そうな顔をしている。
一分…二分と時間が経つにつれて、インスタントラーメンが入っている丼に鶏がらスープの香りが立ち込めて、麺が解れていく。
そして三分が経過したので、皆が恐る恐る箸を取ってインスタントラーメンを食べ始めた。
蕎麦のように啜った後、皆が口を揃えて言った。
「うまい…!」
インスタントラーメンを啜る音が部屋の中で響き渡る。
ずるるるるるっ、ずるるるるるっと音を立てながら、インスタントラーメンが食されて、夢中になってインスタントラーメンを食べている。
これまでにない斬新な食べ物。
インスタントラーメンの価格設定は一個15銭…うどんや蕎麦が7銭前後なので少々値段は高めだが、お湯を入れて直ぐに食べれるこの商品に目を付けた店主たちは、湯を注ぐだけで出来上がる料理を味わった事で、より一層にこの商品を取り扱いとインスタントラーメンを食べ終えると同時に一斉に申し出てきたのだ。
「是非とも我が店に置かせてください!!」
「私の店にも…!」
「言い値で売ってください…!!!」
陸軍向けには缶詰を…民間用にはバラで売ることが決まった。
1キロ1円50銭…袋詰めを行い、生産体制が整い次第順次提携店舗に出荷する見通しとなった。
工場が建設され次第、変則商社の規模は確実に大規模なものになるだろう。




