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私による近代日本改革記  作者: スカーレッドG
(旧)魔法の食べ物
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魔法の食べ物:陸軍医務局

陸軍医務局について調べたんですが、どこにあったのか判らなかったので陸軍省内部に組み込んでいる設定にします。

陸軍ファンの皆さんお許しください

……□……



西暦1896年(明治29年)5月9日



私は陸軍省の管轄下に置かれている医務局に足を運ぼうとしている。

インスタントラーメンの栄養値、並びにそれが陸軍にとって適正がどうかの検査をしたいと言ってきている。

まぁ…ジャムが不評だったので、このインスタントラーメンであれば、まだ陸軍のほうも納得はしてくれるだろうとささやかな願いを込めて、私は陸軍省の手前までやってきたのだ。

試作したインスタントラーメンの缶詰を鞄の中に一ケース分もってきている。

24個の缶詰を入れた鞄だが、インスタントラーメン自体があまり重くないので、軽々と運べる。

缶であっても、こうした利点があるのは装備を何十キロも運ばないといけない兵士にとっては有難いものだろう。



スーツ姿の私が陸軍省の前に来ると、警備に当たっている兵士がやってきてどちら様ですか?と尋ねてきた。

私は「阿南豊一郎」であると告げて医務局の医務局長である石黒忠悳軍医総監の命令で来たことを伝えると、直ぐに警備の兵士は通してくれた。

また、予め私がくることを通達していたらしく、兵士の一人が医務局まで丁寧に案内してくれたのだ。

陸軍省…陸軍の総本山なだけあってか、しっかりとした頑丈な建物だ。

その中でも医務局は医学会とも密接な関係にあるという、さらに日清戦争において兵士の間で脚気患者が急増したことを受けて、海軍との間で脚気対策を共同で行い、その結果…私の作った雑穀煎餅が売れる…という出来事が起こった。



たしか私が教科書やネットで見た話では、海軍と陸軍の仲が悪いことで何かと有名であるが、脚気に関しては軍全体に関わる事案だったので、その脚気に一定の効果を発揮している雑穀煎餅を陸海軍双方が導入した結果、脚気患者の治療や予防にある程度役立っているという結論に至った。

これによって、陸軍では海軍との協力関係を維持していくべきという論調が強くなってきているようだ。

で、陸軍省を歩いて数分で医務局に到着した。

兵士が先に中に入って陸軍軍医総監に私が来たことを伝えに行くと、軍医総監自らがやってきたのだ。




「これはこれは………お待ちしておりました。陸軍医務局長の石黒です、何卒よろしくお願いします」



「阿南豊一郎です…本日は貴重なお時間を頂きまして誠にありがとうございます、早速ですが……ジャムに代わる保存食をお持ちいたしましたので、ご覧になられますか?」



「おお、是非ともお願いします、では、こちらに………」



医務局での私の扱いはかなり優遇されていた。

ジャムは陸軍こそ合わなかったが、インスタントラーメンの調理方法を教えると、石黒軍医総監は目を丸くして本当に数分で湯を入れるだけで出来上がるのかと不思議がっていた。

無論、付き添いできている兵士や他の軍医や将校も首を傾げて「そんな魔法みたいな食べ物があるはずなかろう」と言いたげな顔をしている。

なので、ここは皆に見せたほうが手っ取り早いだろう。



缶詰の蓋を開けて見せると、そこには乾燥した麺が入っている。

これだけだと乾麺にしか見えないかもしれない。

そこで、熱湯で沸かした湯を用意してもらってから、熱湯を缶の中に三分の二ほど入れる。

そして待つこと3分…インスタントラーメンから鶏がらスープが染み出して、辺りに鶏がらスープの匂いが立ち込める。

その匂いを嗅いだ石黒軍医総監は、うーんと唸った。



「確かに、見た限りでは麺も解れている上に鶏がらの汁の匂いが立ち込めているな…これで出来上がりか?」



「ええ、これで完成です…良かったら一口どうぞ」



箸を使って石黒軍医総監は蕎麦を啜るように、インスタントラーメンの麺を摘まんで口の中に放り込んだ。

他の部下の人達が固唾を飲んで見守るなか、石黒軍医総監は三回ほど頷いてこういった。



「うむ…麺も生焼けではなく、しっかりと中まで湯が通っているな…味も申し分ない上に、短時間で作ることができる…おまけに缶の重さは他の塩漬けされたモノよりも遥かに軽い…これはまさに兵糧を根本から覆す代物だ!!!」



まさに空前絶後の瞬間を目撃した人のリアクションである。

その後も他の軍医将校や試食に参加した一般将兵からの反応はかなり好評であった。

元の発明品が優秀なだけに、手軽に持ち運びでき重くなくて、いつでも暖かい食事がとれる…。

試食に参加したある一般将兵からはこんな意見を言われたほどだ。



「兵糧食で米を出される際にはどうしても米を炊くのに時間をかなり要してしまいますが、これであれば米を炊かなくても湯を入れて直ぐに食べれるのがいいですね、あと…麺と汁が付いているので蕎麦やうどんのように身体が温かくなりますね…」



前線では缶詰や冷や飯を食べないといけない場合があるが、それが何日も続いてしまうと兵士の士気にかかわる問題になってしまう。

かの日清戦争では、兵糧食が十分に行き届かないという事態が発生し、多くの将兵が空腹が元による病気や脚気によって命を落とす事態になった。

ひもじい思いをしてきた兵士であれば、その有難味が実感するかもしれない。

こうして、陸軍に赴いた結果、インスタントラーメンが陸軍の前線で配給食として使用されることが決定した。

その分の発注までも頼まれたので、これから新橋に向かって急いで製麺機やら油を揚げる為の道具などを用意しなければならない。

雑穀煎餅の時よりも忙しくなるが、これから歴史の歯車は大きく変わっていくだろう。

日露戦争の時の戦病死のうち死因が脚気によるものが多かったので、このリスクを減らしていきたいと思います

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