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私による近代日本改革記  作者: スカーレッドG
(旧)魔法の食べ物
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魔法の食べ物:器

いつも小説を見てくださってありがとうございます。

最近不眠症というか、仕事とかプライベートでもごたごたがあってメンタルつらいさんです。

小説の感想を見るのが唯一の楽しみなので、遠慮なく感想を書いてくださると嬉しいです。

「では…頂きます」



箸を持ってインスタントラーメン(仮)の麺を啜り始める。

まず喉越しは…まずまずかな。

元々中華式拉麺を作っていたことのある二人に頼んでいただけあって、麺の固さは柔らかすぎず、硬すぎずのちょうどいい感じに仕上がっている。

配合したものを、製麺機に入れて出来上がった麺を揚げているので、麺の長さや太さはほぼ均等だ。

幸運な事に、この時代でも既に製麺機が販売されていたので、新橋に行った時に取り寄せたのだ。

元々うどんや蕎麦を作る際に製麺機を使っているお店が多かったことも幸いしてか、生地を製麺機に入れてハンドルを回せばずるずるとラーメンの麺が出来上がるのだ。

こういうのが電動の機器で作られるようになるのは、1970年代あたりになってからのはずだ。

それでも、いちいち包丁で斬るよりは随分と楽だ。



また、インスタントラーメンの麺は小麦粉などの配合によって味の食感が大きく変わってしまう。

配合を間違えてしまうと、製麺機に入れた時に生地がボロボロになったり、べったりとくっついて製麺機から離れないこともある。

何度か試行錯誤をしてやってみた結果、生地のバランス配分を考慮できた生地が出来上がった。

これらの生地から出来上がった麺に煮込んだ鶏がらスープをジョロで吹きかけると均一に染み込ませることができる。

こうすれば、油で揚げた時に余計な水分を弾き飛ばし、インスタントラーメンをお湯を入れた時に鶏がらスープが麺から溶け出す。

こうしたインスタントラーメンの調理法は私がいた前世ではインスタントラーメンの開発者自ら「瞬間油熱乾燥法」と命名されている。



「うん、スープも麺の味は問題なさそうだな…三人とも、これをどう思う?」



「そうじゃな…もし、この「インスタントラーメン(仮)」とやらを店頭で売り出すだけ雑穀煎餅を凌ぐ事になるかもしれん…こう、短時間で料理が出来るのは手間もかからないから、まさに魔法の食べ物じゃ…」



「蒼龍様が仰る通り…拉麺は作るのにスープを煮込んだりしなければならないので、本来であれば手間がかかる料理です。それが5分と経たずに出来上がるのは…これを店頭で見せるだけでも大勢の人がインスタントラーメンに飛びつくに違いありません!」



「あとインスタントラーメンを販売と合わせてインスタントラーメンの具材を販売してみるのもいいかもしれません。これだけでも十分に美味しいですが、ラーメンに使われる野菜や肉の具材を追加料金を支払えば、店頭で盛りつけできるので、客も増えるかもしれません…」



三人とも中々の高評価を下していた。

インスタントラーメンを作るに当たって、袋の問題に直面して半ば諦めてしまっていたが、実際に作ってみると、インスタントラーメン本来の利便性に優れている食品を提供できるというのが、この時代にとってはとっても有難いようだ。

また、インスタントラーメンを入れる器についてだが…店頭で販売するか、家から器ごと持ってきたものに入れるのがいいだろうという意見にまとまったのだ。



さらに、軍隊向けには缶詰めに入れたものを提出することになった。

缶詰に湯を注いで3分で食べられる暖かい食事…これだけで、一般将兵のお腹もスープを含めれば満足するだろう。

店頭で販売されるインスタントラーメンよりも少し小さめになってしまうが、それでも、お湯を入れるだけで手間をかけずに暖かい食事がとれるというのは、時間の一刻一刻で戦局が左右される戦場においてかなり理想的だ。

また、災害時には保存食としても役に立つので、日光の当たらない日陰で保存するように注意事項を明記しておけばいいかもしれない。



インスタントラーメンの袋を製造するよりも、器を販売して次回時に器を持って来ればトッピング代金半額にしてみるというのもいいかもしれない。

そうすれば、器を買ってくれる上にリピーターとして足を何度も運んでくれるに違いないからだ。

雑穀煎餅を売りつつも、新たな主力商品として販売する。

恐らく、これが世の中に出てしまえば、その影響力は計り知れないものになるだろう。



元々、インスタントラーメンは1950年代後半に生み出された代物だ。

それを19世紀末に販売するのだから、実に60年以上時代を先回りして誕生させてしまう食べ物となるのだ。

完全に未来を大幅に変えてしまう世紀の食べ物…20世紀を代表する上では欠かせず、前世で死ぬ直前に訪れたコンビニエンスストアでも姿や形を変えても今なお取り扱っている程の、日本…いや、世界でも欠かせない食べ物になったのだ。

そんな食べ物を今世の中に売りだしていいものかと心の中で躊躇しようとする動きがあった。



だが、翌々考えてみればインスタントラーメンの利便性と保存性があれば非常時で大いに役立つ。

飢餓のリスクを減らせるかもしれないのだ。

それで大勢の人の命が救えるのだ、本来であれば救えなかった人を救えるんだ。

インスタントラーメンの製造方法を知っている私が、行動を起こさずにアイデアを眠らせたままではどうするんだと自分を叱咤し、開発にこぎつけたのだ。

これを売りだせば確実に日本の歴史は変化をもたらす、その変化が良い方向に動くように舵を進ませるんだ。

その誓いを胸に秘めて、約一週間ほどかけてインスタントラーメンの最終的な調整を行い、私はインスタントラーメンを陸軍の人達に試食させることにした。


参考文献


安藤百福発明記念館【編】「転んでもただでは起きるな! 定本・安藤百福」(2013/3)


発行所:中央公論新社刊

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