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私による近代日本改革記  作者: スカーレッドG
(旧)変則商社
31/125

変則商社:神罰

執筆用BGMはJAZZ、アニソン、洋楽など様々です。


個人的に気に言っているのはリッジレーサーR4のサントラです。

「門が開いている…何かの罠じゃないのか?」



「もしかしたら…すでに我々を察知されているのではないだろうか?」



不安に駆られるが、ここで引き下がるわけにはいかない。

誰もいないかもしれないが、仮に寺院の者が急いで逃げ出したのであれば、まだ建物の中に金目の物が残っている筈だ。それを部下たちの報酬に割り当てれば士気の低下はなくなるだろう。

とにかく、寺院の散策が最優先課題だ。



「鎮まれ、恐らく急いで逃げ出したとすれば…まだ寺院の中に金目の物が残っているはずだ。寺院の連中は裏切り者…ひいては清国国民に相応しくないとされた国賊だ。奴らの宝石などは()()()()までならお前たちにくれてやっても良い。ただし寺院で国賊を発見したら見つけ次第殺せ、剣を持っているものは身体中を切り刻んで殺すように。銃を持っている者は顔が分からなくなるまで鉛玉を撃ち込んでやれ。寺院に突入するぞ!!!」



邱の掛け声と共に懐から各々武器を取り出して、寺院に入り込んでいく。

扉を強引にこじ開けて武装した男たちが各部屋を物色している。

隠し扉がないか探すために部屋の床をひっぺ替えしたり、壁を壊したり…。

やりたい放題という言葉が無難だろう。

ストレス発散も兼ねて行われているのだから、物を遠慮なく壊すことが出来る上に金目の物があれば懐に入れても咎められないというゲームでいう所のボーナスステージのような場所なので、次第に国賊の懲罰ではなく全員が略奪の方向に力を入れ始める。



「おい、この壺見てみろよ…宋時代の壺だ…中々のモンだぜ…街にいけばいい値段で売れるぞ!!」



「こっちなんてこんなに良質な銀貨が出てきたぞ!!しばらく遊んで暮らせるだけの分まであるぞ!!!」



「綺麗な水晶だな…持ち帰って占い師に高値で売りつけてやるか」



大の大人が大はしゃぎで寺院を荒らしまくる。

士気は今のところ高いだろう、全員が宝石や貴金属を見に付けたり、あるいは手に触れてポケットに押し込んでいるほどだ。

邱も略奪したいのは山々であったが、寺院のあちこちを探しても蒼龍が見当たらない上に、財宝などを残している点を考えて、そう遠くに逃げてはいないと判断する。

邱は、あと20分ほどしたら略奪行為を中断し、数名を寺院に残して長安近郊に仁義会の構成員を配備するようにしようとしていた矢先であった。



「ぐわあああああああ!!!!!」



突然、悲鳴と共に銃声が鳴った。

敵か…まだ寺院に国賊が残っていたのか、そいつが始末された声だろうと思ったがどうも違うらしい。

鳴り止むどころか、銃声よりも悲鳴や叫び声のほうが大きくなっていく。

寺院に残っている国賊に武装している奴がいたか…あるいは何か猛獣の類を仕込ませていたかもしれない。



邱は中国刀を取り出して悲鳴が聞こえたほうに走っていく。

すると、部下たちが武器を捨てて逃げていた。

皆全力疾走で逃げている、何をやっているんだと怒鳴ろうとした際に、目の前で逃げていた部下たちを黒い影が切り裂いていく。

虎かと邱は思ったが、そのような生易しいものではない。



それは、おぞましい姿をした()()であった。

()()の肌は毛が殆ど抜け落ちており、赤い肌が露呈している。

それに足は四本ではなく六本もある…明らかに虎ではない。

おまけに硫黄臭が立ち込めて鼻を抑えたいほどの異臭を放っている。

寺院の通路を塞ぐほどの大きさなのに、動きは極めて俊敏だ。

目は飛び出しそうなほどに出っ張りながらギョロギョロと周囲を見渡し、先程逃げていた邱の部下を目よりもおぞましい無数の鋭利な牙が連なっている口の中に生きたまま放り込んでいるのだ。



現代で例えるなら、シュレッダーに身体を見投げするような行為だ。

その中に人間を放り込んだらどうなるか…生きたまま身体中のあらゆる場所に牙が突き刺さるのだ。

一撃で即死すればまだ痛みを感じないだろう。

だが、一撃で死ねない場合はどうなるか…。



「ぎゃあああああああああ!!!!たずげでぇぇ!!!!邱様ァァァァ!!!!ぎだぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!」



身体中の臓器がグシャグシャに噛み砕かれて発狂するより前に血の海と化す。

地獄からやってきた生き物以外考えられないほどの醜い姿をしている上に、人間を食す怪物…。

化け物は前方の部屋に逃げ込んだ部下に襲い掛かっている。



「なんだこの化け物はぁぁぁ?!!!!うがあああああああ!!!!」



「撃て!!!撃てぇぇぇぇぇ!!!!!!早くこいつを殺すんだぁああああ!!!!」



悲鳴と銃声が建物にこだまする中、邱は全速力で寺院から逃げ出す。

ここにいてはいけないという、全身からあふれ出る危険信号とアドレナリンによって火事場の馬鹿力を発揮し、寺院の門の外に出ようとする。

門の外には先程崖から転落した者と、その者を助けるために引き返した者が待っていた。

邱は二人に危険を知らせるために大声を出して逃げるように伝える。



「逃げろ!!!!ここは危険だ!!!今すぐ逃げろ!!!!」



寺院の異変に気が付いたのか早く、早くと門の外から手招きしている。

門の所まであと5メートル程の所で、邱の視界は真っ黒になった。



「あ?」



邸は飛びかった怪物に頭から喰われた…幸か不幸か、頭から食べられたことによって痛みを感じずに即死した。

邱が食われると同時に、寺院の門が勝手に閉じていった。

怪物は寺院の外には出てこない。

門の外にいた二人の部下は、命からがら山を下りて目の前で起こったありのままの事を仁義会上層部に報告するしかなかったのである。



後日、仁義会の調査団が現地に赴くと寺院のあった場所は無くなっていた。

建物は完全に崩壊しており、内部で爆発があったような痕跡や幾つかの人骨が見つかるも調査は難航…邱達を襲った怪物の死体も発見できなかった。

止む無く、青龍寺院は仁義会の戦闘員と交戦の末、寺院側が爆薬に火を付けて自爆…戦闘員を道連れに全員死亡したと報告をした。

この報告書は清国の中でもごく一部の上層部のみが知る機密扱いとなり、その機密が公の場で姿を現すことはないだろう。

さて、次章からいよいよ本格的に物語が始動し始めます。




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