変則商社:工場
とはいえ、関西方面での販売は信頼できる業者に委託するか新たに支店を作らないといけないので、年末は何かと忙しいので雑穀煎餅の関西方面での販売は来年度からスタートすることになる。
年末という事もあってか雑穀煎餅を買い求めてくるお客さんの数は多い。
売上も過去最高の利益を出しているほどだ。
当初予想していた倍以上の利益が出たことにより、来年度から浅草の今戸の土地を買い取って食品工場が建設されることになった。
今の雑穀煎餅の生産体制は殆どが手作りだ…故に、作れる量も限界がある。
そこで大型機械を導入して、一度に大量生産ができるようにする必要性が出てきたのだ。
陸海軍双方が雑穀煎餅を来年の6月から一般兵士の兵糧食として採用されるに当たって、雑穀煎餅を缶詰に密封させて野戦をしている時にも食べれるようにしなければならないのだ。
つまり、私の会社は軍にとって必要不可欠な企業の一つになったのだ。
これが意味するものは、軍からのバックサポートによって工場の建設費用が抑えられる、という利点があげられる。
工場を建設するにあたり、建設・土地購入費17000円、大型機材5000円のうち、陸海軍双方からある程度の支援を受けたので変則商社として支払った金額は14000円に抑えることができた。
雑穀煎餅のみならず、多種多様な食品の開発に乗り出せるチャンスがついに到来したのだ。
工場の建設は急ピッチで進められており、早ければ6月末に完成予定であり、地域の雇用促進にも役立つだろう。
無論、資金を貯めることも重大だが、同時に人の役に立つという初心で心がけている事もしている。
形が崩れたり製造過程で割れてしまった雑穀煎餅などは全て病院や孤児院に無料で寄贈している。
小学校などにも届けたりしているが、やはりそうした小さな積み重ねによって評価は上がっていくものであると実感する。
より会社の規模が大きくなれば変則商社として医療・福祉方面にも投資をしていく必要性も出てくるだろう。
来年度から新たに変則商社の食品工場が建設することを踏まえて、かつて私の前世の役職であった「新商品開発部門」を設立することになる。
これらの新商品開発部門では、この時代でも製造が容易で且つ、国民に普及するような商品を開発することが狙いとしている。
雑穀煎餅一つだけではいずれ飽きが着てしまうので、新商品を絶え間なく導入して飽きさせない工夫も必要になる。
会社の経営者になってみて分かったことだが、やはり経営者は一筋縄ではいかないものだ。
常にどれが流行するか、どんな商品が市場に受け入れられるかを考えることが重要になってくる。
私は現代からやってきたこともあり、この先の時代…明治・大正・昭和…にかけてどんなものが発明されて販売されていくかの流れは大まかに理解しているつもりだ。
だが、その流れに一歩でも乗り遅れてしまえば置いてけぼりにされてしまう。
常に一歩先を見つめて乗るしかない、この時代の流れに…。
それが出来なければ経営は破綻してしまうだろう。
「失敗を恐れずに常に色々なアイディアを出して報告せよ」
かつて前世で勤めていた社長が日頃から呟いていたこの台詞。
今思い出してみると失敗を繰り返しても、その失敗の積み重ねによってアイデアが蓄積されていき、完成に近づいていくという考えだ。
社長の言葉を思い出して自分の励みにしなければならない。
今は私が変則商社の社長なのだから。
社長である私が立ち止まっていてはいけないのだ。
「さて、今日の売上と帳簿を書いたら店を閉めるか」
今の時刻は20時…すでに外は暗くなり、従業員の人達は私を除いて全員帰宅している。
この変則商社本店に残っているのは私だけだ。
今は今日の売り上げの数字と睨めっこしているが、何せ電卓がないのでそろばんを使って計算しているのだが…生憎そろばんを扱うことが出来ず、ノートに計算式を書き込んでその合計金額が合っているか否かの確認作業中なのだ。
明日が本年度の営業最終日であり、大晦日と正月三が日は完全休業する決まりだ。
本当に先月から従業員の人達には働きづめなので、明日はボーナスをしっかり弾まないといけない。
働いた分はしっかり賃金を払って従業員のモチベーションを上げる、それが経営者としての努めであり、定めでもある。
おっと、しまった…諸経費の一部に記載ミスを発見したぞ。
その分をこの合計金額から引かないといけないな…。
うむ…電卓があれば楽に終わるのだがな…。
蝋燭の灯りを頼りに、私は一時間ほど帳簿と睨めっこしながら21時まで作業をするのであった。
某第二次世界大戦歴史SLGゲームで「民需建設」及び「軍需工場」をする場面があるのですが、あれは大工場ないし国営工場のことを指しているのかどうか分からないマンです。
とりあえず満洲国でプレイするときは日本を裏切って連合国入りして朝鮮半島ぶんどって清国を再興すると工業力が日本と同程度になるのが強みですね(なお、海軍工廠は大陸には殆どない模様)




