第一次世界大戦勃発:対馬防衛戦5
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「それで、状況はどうなっているんですか?」
開戦が始まって半日が過ぎた。
対馬では私が危惧していた通り、第三国の船を使って大韓帝国軍が強襲を仕掛けてきたようだ。
南部の大部分は制圧されたので、日本軍は中部に防衛線を敷いて海軍の増援がくるまで徹底的に抗戦を行うと決めたという。
また、航空機を使った地上攻撃は大きな成果を挙げており、迫撃砲を使って高地から攻撃を仕掛けてきた部隊に反撃を行って全滅させたという。
しかしながら、上陸した部隊の規模が不明であるため、陸軍は対馬に2個中隊を新たに派遣し、五島列島などの離島にも兵士を配備して防衛をより一層固めるようだ。
「対馬の戦況は日本軍側の防衛は成功しているように思えますね。ただ、強襲によって南部の要塞は敵の手に落ちたと考えるべきでしょう。防衛戦力としては北部と中部にいる部隊がどれだけ持ちこたえることができるか………」
「おまけに、敵は攻めればいいが日本軍は島民の保護をしなければならん、島民を避難させながら反撃の機会をうかがっているのじゃろうて。我々の伝手も北部に避難しているが、島民は一人や二人ではない。これは予想よりも苦しい戦いになるかもしれんのう………」
数の上では、敵の勢力はどんなに多く見積もっても1000名、対して日本軍は捕虜や捕殺された者を除外すると1800名前後だと言われている。
数の上では1:1.8………ほぼ倍だ。
正面から戦えば数で押し通すこともできるかもしれないし、日本軍が海上から南部側へ砲撃と強襲を仕掛ければ対馬の戦いは一週間程度で終わるかもしれない。
いずれにしても、朝鮮半島との日本の海上の要所である対馬海峡は日本海軍が封鎖を行い、釜山港の入り口付近で日本海軍の水雷艇が、大韓帝国軍の水雷艇を魚雷攻撃で撃破したとの情報もある。
準備が整い次第、日本軍は対馬の報復も兼ねて大韓帝国への逆上陸作戦を発動するかもしれない。
開戦する前に日本が朝鮮半島を攻略するうえで大韓帝国のアキレス腱を切断するための『両断作戦』でもある。
この作戦内容は陽動部隊を釜山に上陸させて大韓帝国軍の主力を引き付けると同時に、江陵と仁川にそれぞれ敵地強襲連隊を向かわせて上陸し、三方向から朝鮮半島南部を孤立させる。
そして首都漢城府を包囲し、南下するであろうロシア帝国軍の主力軍団を食い止めてから、イギリス・フランス両軍の援軍が到着次第、一気に朝鮮半島とロシア帝国との国境付近まで突き出すというものだ。
すでに上清帝国が南中華帝国との戦争で二方面作戦を強いられるロシア帝国にとっては例え朝鮮半島に主力軍団を派遣して食い止めても、それまでに上清帝国が逆侵攻される可能性を考えれば派遣される兵士の数は限られていく。
戦争は序盤で敵の情勢を見極められるかが焦点となっている。
この時に情勢を甘くみていれば確実に戦争後半で苦戦するのは目に見えている。
それを前世の日本軍は太平洋戦争でやらかしているから分かるのだ。
新兵器等のイレギュラーな事態が起きない限り、この戦況は日本側が優先的に事が進められるはずだ………。
それから2時間後の午後3時に入った一通の電報で、その優先も崩れかねない本格的なイレギュラーが発生したのであった。




