静かなる戦争:戦闘勃発
冬コミで合同同人誌に9ページほどお話を載せてもらったものの、告知をすることを忘れるという大ポカをやらかしてしまったので初投稿です
……☆……
西暦1903年(明治36年)4月2日
「阿南殿…ロシア帝国海軍内部で反乱が起こったそうです」
オフィスで執務を行っていた私に范さんから重大な知らせが舞い込んできた。
旅順港を拠点とするロシア帝国海軍極東艦隊所属の戦艦で反乱が起こり、水兵と尉官クラスの軍人たちが日本への亡命を希望しているという。
現在ロシア帝国海軍は反乱を起こした戦艦を追撃し、ドイツ帝国海軍も戦艦を拿捕するべく青島防衛艦隊を出動させたらしい。
范さんらが諜報として極東アジア地域に張り巡らせた諜報会社の伝手を伝って入手した信憑性の高い情報のようだ。
変則商社はロシア帝国にはダミー会社を幾つか所有しており、現地ロシア人や蒼龍など青龍族を信仰する中国人によって構成されている会社だ。
表向きは農林水産系の仕事を扱っており、その仕事は現地人のロシア人を使っているが、裏ではロシア帝国陸海軍内部で抱えている汚職や権力腐敗を利用した金や女性と引き換えに情報を入手する役割を担っている。
テスラ博士が開発した通信機を利用して暗号化された電報をロシア極東地域から朝鮮半島の咸興~対馬を経由して大阪の変則商社統合通信事業所内部にある極東アジア地域情勢を逐一収集している第七課宛に転送されているのだ。
第七課が入手した情報は信憑性と重要性が共に大であり、東京でその緊急電を受け取った范さんが私のオフィスにやってきたというわけだ。
「反乱を起こした戦艦というのは最新鋭艦ですか…それとも旧式の艦ですか?」
「反乱を起こした戦艦はロシア帝国海軍が今年の2月にアメリカから引き渡されたばかりの最新鋭戦艦レトヴィザンとのことです。艦内で上官による水兵への殺傷事件が起こり、それが引き金となって反乱が勃発したそうです。艦長以下佐官クラスの軍人は拘束され、現在艦の指揮を執っているのは尉官達が担っているそうです」
「最新鋭の戦艦…ましてやロシア帝国にとって最重要の代物が反乱によって失われるとなると必死になるのも無理はないな………ドイツ帝国軍の動きはつかめていますか?」
「青島では今朝の未明に青島防衛艦隊全艦が軍港から移動しているのが確認されました。恐らくレトヴィザンを拿捕ないし撃沈するものと思われます」
「ロシア帝国からしてみれば最新鋭の戦艦が日本の手に渡るぐらいなら同盟国のドイツ帝国によって葬られたほうがマシと判断したか…日本海軍の動きはどうなっています?」
「日本海軍は第一艦隊がレトヴィザンの乗員と亡命を希望している尉官達を保護するべく佐世保を出航いたしました。このままいけばあと2日以内にドイツ帝国海軍と日本の第一艦隊がレトヴィザンと接触するはずです。もし双方が引き下がらない場合は戦闘になるでしょう…」
レトヴィザンによって賽は投げられたようだ。
明治維新と、私による近代日本改革によって国力の底上げが図れた日本帝国とその同盟国であるイギリス。史実よりも軍の近代化に成功しているロシア帝国と独露同盟によって黄海北部の制海権を確保したドイツ帝国…近代国家同士の大規模な戦争がもうじき起こるだろう。
そして、あと2日以内でその初戦が行われようとしている…。
私は急いで政府首脳陣と会談を申し出て、今後の日本の対応について話し合うことになる。
本年度は誠にありがとうございました。
最近更新速度が落ちてしまい非常に申し訳なく思っております。
来年度は書籍化できるようにファンタジー小説を書きあげている真っ最中です。
無論、この小説も〆のいいところまでは書きりたいので来年も頑張りたいです。
それではまた来年もよろしくお願いします。
 




