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『Monster Seeds』  作者: とある聖騎士さん
3/3

リトル・エビルデーモン

 次に目を覚ますとそこは教会の中だった。

 しかしただの教会ではない、これは……


 「教会跡地か?」


 寂れた十字架に朽ち果てボロボロになったたくさんの長椅子。

 よくよく見れば天井はすでに崩れ落ち、真っ黒な雲に覆われた空が見え隠れしている。

 ホラー映画にでも出てくるような場所だ。

 そんな寂れた教会の中でオレは崩れかけた椅子に腰かける。


 「まずはお楽しみのステータス確認だな」


 待ちに待った適正モンスターの確認だ。

 高鳴る鼓動を抑え込み、頭の中で『メニュー』と念じる。

 (これは凄いな……)

 出てきたのは半透明なメニューウィンドウ。

 現実世界ではまだ実現不可能な現象に感嘆を漏らした。


 「メニューから選択できるのは、ステータスにログアウト……あとはアイテムボックスの確認だけか」


 正直少ないと言えば少ない。

 しかし、これも『Monster Seeds』でモンスターらしさを出すために考え抜かれた結果なのだろう。

 しかしそれも今はどうでもいい、まずはステータスの確認だ。

 オレは小さく黒い手を伸ばし、ステータスを表示する。



――――――――――

ダスク

種族:小邪鬼リトル・エビルデーモン

魔器:戦車 Ⅰ

STR(筋力):80

VIT(堅牢):40

AGI(敏捷):120

DEX(器用):20

MND(精神力):100


種族スキル

【闇魔法】【再生】


固有スキル

【叛逆の鎧兜】


スキル(200)

――――――――――



 「うん……いまいちよく分からないな」


 基準が無いからだろう、強いのか弱いのかもよく分からない。

 (タップしたら説明でも出ないかな……あ、でた)

 最悪【鑑定】のようなスキルでも取ろうかと考えていたが、どうやらタップすることで詳細は見れるようだ。

 早まらなくてよかった。


 オレは一番上から一つずつ詳細を確かめていくことにした。

 まずは種族からだ。



 『小邪鬼:悪魔族モンスター

  悪魔族において最下級のモンスター。

  悪魔族の中でもゴブリンに近い形態をしており、再生能力に優れている。

  しかしゴブリンよりも弱く、成長前に冒険者によって間違えて殺されてしまうのでその数は少ない』



 「おい! 不遇モンスターじゃねぇか!」


 まさかの詳細である。

 オレ自身はゴブリンでもいいとは思っていた、しかしゴブリンよりも弱いとは予想外である。

 それこそ思わず叫ぶほどには。

 

 (この分では、ゴブリンのステータスはオール100と言ったところなのかもな)

 そう考えるとこのリトル・エビルデーモンは紙装甲である。

 下手すれば転んだだけでも瀕死に陥るかもしれない。

 

 「確かに予想外だったがまぁいい。

  結局のところ、攻撃を受けなければ(・・・・・・・)いいんだからな」


 あまり問題視せずに次の文字をタップする。


 

 『魔器:モンスターの進化した回数を示す』



 「なんというかそのまんまだな」


 詰まるところ何度進化したかのカウンターだろう。

 オレが選んだアルカナの戦車がどのような意味なのかは気になるところだが。

 

 「次は……種族スキルにするか」


 名前通りのスキルなのだろうが、使い方が分からなければどうしようもない。

 オレは二つしかない種族スキルをタップする。

  

 

 『【闇魔法】:下位魔法

  精神系統や攻撃に特化した魔法を使用可能になる。

  使えるのは下位魔法に限られる』


 『【再生】:パッシブスキル

  物理的ダメージを時間と共に癒す。

  HPは治らないが、傷ならば時間をかけることで修復可能』


 

 「なかなか使えそうだな」


 特に【再生】はありがたい。

 傷が出来る度に逃げていたのではまともに戦えない。

 このスキルがあれば戦闘に集中することが出来るはずだ。

 【闇魔法】は……出番が来たらいいな。


 「あとはコイツだな」

 

 オレが睨む先にあるのは一つのスキル。

 そう、『固有スキル』だ。

 おそらく『Monster Seeds』において適正モンスターと同じくらいに重要なものだ。

 レギオンドールはアルカナに影響を受けたスキルになると言っていたが……。

 オレはステータス画面で輝く『固有スキル』の文字に指を伸ばす。



 『【叛逆の鎧兜】:パッシブ・アクティブスキル

  全身に鋼鉄の鎧兜を纏う。

  《効果》

  自身よりもステータスの高い相手との戦闘において、全ステータス+10%

  Ⅰ:VIT+100』


 

 (これは……最高にいいな)

 オレの適正モンスターであるリトル・エビルデーモンの弱点を埋めることが出来るスキルだ。

 これから先、かなり役に立つはずだ。


 「しかしどうすれば使うことが出来るんだ? 意識することで使えるのか」


 オレは『メニュー』を開くように『固有スキル』を意識する、その時だった。


 「うおぉっ‼」


 体中が鋼鉄の鎧兜に纏われたと同時に、その重さで椅子が砕け倒れ込む。

 (視界は問題なく見えるようだが……重い‼)

 顔についた面のようなものを感じながらも体を起こそうとするが、重すぎてなかなか体が起き上がらない。

 

 「っつ、っらぁ‼」


 掛け声にもならない声と同時にようやく立ち上がる……が。

 (重すぎて歩くのも一苦労だな)

 姿を見ようと割れたガラスへと向かうが、その歩みは亀よりましといった程度だ。

 これでは戦闘では使えない。

 

 「だけど……かっこいいな‼」


 ガラスに映った、自身の姿を見ながら叫ぶ。

 

 そこに映っていたのは全身を真紅の鎧兜に身を包んだ小さな小人。

 鎧兜と書いてはあったがその姿はどちらかと言うと西洋の甲冑に近いだろう。

 日本の鎧兜の姿をしながら、どこにも隙間のような場所が見当たらない。

 

 (しかも面もついてるんだから驚きだな)


 顔には鬼のような顔半分を隠せる仮面が付いていた。

 正直、防御に役に立つかは謎だが息苦しくはないので問題は無いだろう。

 そして一番の特徴は頭に生えた、一本角だ。

 

 兜を破るように生えた一本の角。

 そう、オレ自身から生えている角だ。

 そして感覚に理解する。


 (これはオレの……リトル・エビルデーモンとしての弱点だ)


 まるで感覚器官のような役割を果たす一本角。

 もし角を斬られたら、感覚のはかなり鈍くなって戦闘にも影響する。

 そんな予感がオレには合った。


 「頭隠して尻隠さずというか……まぁ、しょうがないか」


 防御力が上がっただけましというものだ。

 オレは言い聞かせるようにして納得する。

 

 「最後は……スキルの選択だな」


 最後に残ったのはスキルの選択。

 オレは空中からアイテムボックスを通して三つのスキル珠をつかみ取る。

 使い方は分からないが、おそらく意識すれば使えるのだろう。

 オレはそう予想し……


 「お、出た」


 案の定、スキル選択のウィンドウが出現した。

 そこには系統別にたくさんのスキル名が参列している、ここから探し選ぶのはかなり手間だろう。

 (ネタスキル系統なんて誰がとるんだ……)

 ため息を吐きながらウィンドウを操作し、スキルを探し始める。







 







 「かなり時間がかかったな……」


 かれこれ30分ほどスキルを確かめただけあり、オレは目当てのスキルを見つけることが出来ていた。

 同時に三つのスキルを選択し、手の中にあったスキル珠が砕け散る。

 オレがとったスキルは三つ。


 『【刀術】:パッシブスキル

  武器:刀に補正がかかる。

  《効果》

  刀での攻撃に20%の攻撃補正』


 『【自然治癒】:パッシブスキル

  時間と共にHPが回復する

  《効果》

  5分で2%回復する』


 『【重装】:パッシブスキル

  重装備に対して補正をがかかる。

  《効果》

  重装の重さを20%ダウン』


 

 (我ながらなかなかいいスキルを選んだな)

 刀に関してはまだ持ってはいないがそのうち手に入るだろう。

 オレは【重装】のスキルの熟練度を溜めるために、【叛逆の鎧兜】を発動したまま移動する。

 そして廃教会から出ようと扉に手をかけた時だった。

 

 背後から冷たく、熱く、憎しみにまみれた声が聞こえてくる。


 『そこのモンスター、先ほどの行動から知性があるだろうお前に頼みがある』


 振り向いた先に居たのは、教会の十字架の下で浮かぶ一人のローブの男。

 その体は半透明で微かに向こう側が透けて見える。

 いわゆるレイスやゴーストといったモンスターなのだろうが……敵意は感じない。

 そんな男にオレは言葉を返す。


 「頼みとは何だ? 話だけなら聞いてやる」


 『ああ、ありがたい。……そうだな、話だけでも聞いてくれ。

  お前の名前は何という』


 「ダスク、リトル・エビルデーモンのダスクだ」


 その言葉に男は自嘲的に笑う。

 

 『まさか、この儂が悪魔に頼ろうとは。

  だが、これは悪魔にしか頼めない。……ダスク、改めてお前に頼みたいことがある』


 その瞬間だった。

 目の前にクエストを示すウィンドウが現れる、どうやらこれはクエストだったようだ。

 そんなウィンドウを前にオレはニヤリと笑う。


 「おう、気が変わった。なんだか知らないがその依頼ひきうけたぜ」


 そのウィンドウの最後尾。

 そこには報酬と書かれた文字と共につづられていた。

 「刀」と言う文字が。



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