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プロローグ

残酷描写や不快な描写があります。ご注意を。


5/16 後書きに「なんちゃって、読者の為のなろうの手引き」を記載しました。読者の方の助けになれば幸いです。

――あぁ……なんで……どうして、ボクはこんな時まで……。


 階段の屋根部分の下部、内側に凹んでる窪みに指を食い込ませ、あまりの力を入れて掴んでいた所為で爪が割れ血が滴っている。それでも恐怖心からか痛みは感じず、そんな自らの肩越しに見ながらそんな風に自嘲する。

階段の踊場の手すりへ乗り上げている両の足はガクガクと震えているが、不思議とその狭く危なっかしい足場から落ちることはない。


「は、ははは……。」


 潤んでいた目が更に涙を溜めはじめ次第に溢れる。下を向くと遠くの方で土の地面がこちらを覗いている。

 改めて恐怖心が溢れてくるがそれよりも、愚かで、臆病で、怠惰で、矮小な自分に改めて失望する。ボクは、心の底から絶望したはずだ。世界に、国に、社会に、他人に、そしてなにより、自分自身に。

 だからこそボクは関西の実家から上京した自らの部屋から出て、目について高層なマンションの階段の踊場から飛び降りようとしていたはずだ。


「あと一歩……あと一歩踏み出すだけで終わりに、できるのに……ははは。」


 そう、正確な高さは知らないが自室気味でそこそこの段数を登ってきていたし、涙で満ちている眼に映る風景からもそれが伺えた。

 現状を有り体に言えば自殺しようとしているのだが、粗方全てに絶望し切って、自らの死後に家族や諸々に降りかかるであろう面倒も一切考えず、勢いで階段を駆け上がり飛び降りて死んでしまおうとしていたはずだ。にもかかわらず、生への執着も一切無いにも関わらず、ここから落ちた後感じる浮遊感や恐怖心や、その後訪れる肉が潰れ、骨が折れ、肉を突き破り、内臓がグチャグチャになって、ただの肉塊になる過程や沸き起こる苦痛や死後への恐れからか、ここから踏み出せない。さっきまではチラリとも考えなかった死後に付随する面倒事に尻込みしているのかもしれない。

 なんにしても、今のボクはきっと人生で何度目かの、心が折れる音を聞いたんだと思う。自分のダメさ加減に力が抜ける。手すりに屈み込み、膝に顔を埋める。両手はまだ天井部の凹みを掴んでいる。


「はぁ……帰ろ……。」


 自殺する気がすっかり萎えてしまい、足に力を入れてその場で立ち上がる。自宅へ帰る道すがら自己嫌悪でまた死にたくなるんだろうなぁとかぼんやりした頭で考えている。


 途端浮遊感に襲われる。


 遅れて左足が手すりから外れている感覚がやってくる。


 更に遅れて落ちている事を自覚し、まずい、という感情に脂汗が全身から溢れる。


 次いで間髪入れず側頭部を鈍痛が襲う。どうやら落ちる道すがら手すりの角で頭を打ったらしい。


 そこでボクの意識は途絶えた。


 何処かからどちゃりと鈍い音か聞こえた気がした。





 普段から死への憧れに纏わりつかれていた。生きる希望は無いし、生きる意味も無いと思っていた。

 趣味はあった。俗に言うオタク趣味で、漫画・アニメ・ゲーム・映画エトセトラえとせとら...。それでも、もはやそれらは生への抑止にはならないと思っていた。どうせ自分の死後はそれらは見れないのだからと達観していたからだ。

 ただ、積極的に死のうとは思えなかった。死にたい死にたいと思っていても、痛みや苦しみへの恐怖や死後の面倒等で尻込みしていたのだ。もし安楽死が現実にあれば利用していたと思うが、そんなものはないしただ死んでいるような人生を生きていた。

 ボクの人生は真綿で首を絞められ続けるような人生だった。慢性的な小中規模の不幸に纏わりつかれていたようなものだ。いつも世の不条理や自分への憤りを抱えていた。だが死ねない。

 正直、自殺者を尊敬もしていた。彼らはボクが出来ない事をやり遂げたのだから。死にたいと願っていても自分には実行出来ない事はわかっていた。

でもずっと願っていた。


 もし、自分が死ねたなら、もう二度と、生まれ変わる事が無い事を――

読んで頂きありがとうございます。


小説を書くのは初めてです。続くかもわかりません。不定期連載です。

残酷描写や不快な描写もある事でしょう。


それでも良ければよろしくお願いします。

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