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第二十六章 エルギン男爵領 2.エルギン

クロウがエルギンで聞き込んだ噂とは?

 先日と同じ扮装で、再びエルギンの町を訪れた。今回はヤバい素材は持って来てない。素材屋に持ち込むのは天然石を加工した丸玉と薬草。金策よりも素材屋との顔つなぎが目的だ。ついでに言うと、前回来た時と物価を較べたり、噂話に耳を傾けたりして、情報を収集するのも目的である。折角ここまで来た事だし、何か美味そうな物があったらついでに買って帰るとしようか。


 素材屋は案外簡単に見つかった。薬草と天然石の丸玉を見せて買い取ってもらう。薬草は王都より少し安かったが、他に売り手が多いって事のようだ。おおかたエルフなんかが持ち込むんだろう。丸玉はエルフと同じくらいの金額で買い取ってくれた。こういう手頃な――悪く言えば安物の――アクセサリーは、高級品よりずっと買い手が多いそうで、慢性的に品不足らしい。よければアクセサリーの専門店を紹介するとも言われたが、目立ちたくないので辞退した。この店の親父は良心的で信用できそうだったしな。ともあれいい伝手(つて)を結べたようだ。武器などの素材はこのところ特に値動きはしていないと聞いた。もっとも、売り手買い手は大概冒険者がらみで、国軍の兵士の需要まではフォローしきれていないようだ。


 素材屋を出て町をぶらつく。前回は早々に面倒事に巻き込まれたもんで、ゆっくり見て回る機会がなかったんだよな――最低限の価格チェックができただけで。ざっと見た限りでは、価格に大きな変動はないようだ。戦争とか大規模な軍事作戦の兆しはないか。王家は何を考えている?


 この手の情報に(さと)いのは商人と決まっているが、素材屋以外の商人に知り合いはいないし。どうしたものか……そう考えていたクロウであったが、ライの念話によって考えを中断させられた。



『ますたぁ、行商人ですぅ』



 あれは……エッジ村にやってきた行商人じゃないか。食事をしながら仲間の商人と話しているようだな。丁度いい。俺たちも入って飯にするか……あ、でも……。


『今、目立つのは避けたいし、ライとキーンは(ふところ)に隠れていてくれるか? 後で美味いもん食わせてやるから』



 そう従魔たちに断って、クロウは食堂に入っていく。適当に料理を選んだ後で、行商人から少し離れた席に着く。ステータスが上がっているため、この距離でも会話を聞き取るのに不自由しない。



(しかし、ライのやつどうやって見つけたんだ? 俺としては助かるが……。ふぅん? バレンの町は落ち目なのか……領主の人気が下がって、住民が賦役(ふえき)に参加しないから道路の補修も終わらない……交通が遮断されたままなので、ドランとモードはバレンと取引できずに、別の取引相手を見つけたか……男爵領外? これって経済圏の再編じゃないか……下手するとバレン男爵領は終わりなんじゃ……。王家が介入して領主の交代?……あ、聞き違いか、当主の交代か……)



 行商人たちの話からバレンの状況は知る事ができた。ヴァザーリの方は行商人の活動範囲外らしく、話題に上らなかった。



(ふむ。王家が何やら画策していたというのはバレン男爵領の件か? いや、王たちの会話にはヴァザーリとモローの話も出てきた筈。もう少しデータが欲しいところだが、行商人の興味は既に知り合いたちの近況に移ったか……ここでの情報収集はこれまでだな。店を出て、ライとキーンの飯でも探すか……)



 とりあえずバレン男爵領の状況が判った事に一応満足して、クロウは店を出た。



・・・・・・・・



『ふぅむ、結局、判ったのはバレン男爵領の現況だけというわけか?』

『直接にはそうだな。町にいる間ヴァザーリについての話は特に聞かなかったが、だからと言って水面下で何も動いていないとは言えんからな』

『日を改めてもう一度行くかの?』

『いや、そう度々町に出ては人目を引きかねん。少し別の手を考えてみよう』

明日の公開分は挿話になります。

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