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第二百五章 「緑の標(しるべ)」修道会 9.阻止線の構築案(その2)

後書きにご報告があります。

 クロウは以前にバードウォッチングに――母親の命令で――参加した時、この手の(やぶ)に引っかかって酷い目に遭った事がある。大学で生態学専攻の知人――少し毛色が変わっていた――にその事を(こぼ)したところ、マント群落という名称とともに、クロウ――本名・(からす)(まる)良志(ながゆき)――が引っかかった(つる)植物は恐らくサルトリイバラかノイバラ、木本植物の方はイヌザンショウかタラ、気触(かぶ)れたのはヌルデかヤマウルシであろうと教えてくれたのであった。


 日本でとは言え実体験に基づいているだけに、クロウの発言にも重みがある。

 果たせる(かな)、こちらの世界でも事情は似たようなものとみえて、不自然さを抑えて阻止線とするには悪くない案だと承認された。



『イラバなら打って付けだよね』

『成長は早いしトゲトゲだし』

『簡単にはぁ、切れなぃしぃ』

『枯れても(しばら)くは硬さと弾力を備えておるしのぉ。適材適所というやつじゃ』



 ――そんなものが急激に繁茂したりすれば不自然ではないかと思うのだが、



『……まぁその程度なら、敢えてダンジョンを持ち出さんでも、木魔法で説明がつくじゃろう』



 どうせ挿し木苗の生長促進に木魔法を使うのは決まっているから、多少の不自然は今更の話と、吹っ切る事にしたらしい。



『でもクロウ、テオドラムのやつらが温和(おとな)しく諦めるかしら?』



 そんな物解りの良いタマじゃないだろうと言うシャノアに答えて、



『あぁ。だからもう一手、テオドラムにも餌を与えてやる。飴と鞭というやつだ。……(いささ)業腹(ごうはら)ではあるんだがな』



 クロウの提案は、テオドラムの領民がイラストリアの森林を蚕食しないように、テオドラム側に(おとり)の餌として、小さな木立を造成してやるというものであった。



『統制経済下にある僻地の寒村となると、薪の需要が急増するような事はあるまい。少量とは言え手に入り易い、しかも自国にある薪炭源と、強固に接近を阻む他国の森林。モチベーションを下げるには充分だろう。――あ、言うまでも無いが、マント群落は(とげ)も毒も、木魔法で強化する予定だからな』



 一気に凶悪さを増すであろう「マント群落」――と言うか、もはや阻止線――に思いを馳せ、ワクワクした表情を隠さないクロウの眷属(けんぞく)たち。対して、複雑な表情を浮かべるのは修道士――元・テオドラム兵――たちである。……いや……テオドラム民(かつてのどうほう)にも薪炭材や木材を供給してもらえるのは有り難いのだが……



『でもクロウ、そこまで急激に成長させるとなると、かなり魔力を使うんじゃないの?』



 (……まぁ、クロウにとっては誤差の範囲なのかもしれないけど……)――というコメントを言外に匂わせつつも疑問を呈したシャノアであったが、彼女の問いに対する答えは――



『なに、「肥料」を解禁するつもりだから問題無い』



 ――というものであった。



『あぁそう……って……何なのよ? その「肥料」って』



 ――クロウの「肥料」。

 それはクロウが日本のホームセンターで購入して、こちらの世界に持ち込んだ液体肥料である。異界渡りの際に魔力を蓄積したものか、十万倍に薄めてなお、サトウキビの苗をモンスター化させた代物である。



『……そんなものを使うつもりなの……?』

『いや、あれは場所もダンジョン内だったからな。ダンジョンの外で使う分には、そこまで暴力的な効果は無い……筈だ』



 仮にモンスター化したところでどうだというのだ? どうせ現地はテオドラム領だ。イラストリア側に被害が出ないのなら、構わないではないか。テオドラは(かつ)てトレントの群落を根絶させた罪科もあるのだし、最悪でも原状に復帰するだけだ。


 ――と、そこまで考えが至ったところで、クロウは以前に入手したまま忘れていた、とある「もの」の事を思い出した。

16日発売の「月刊Gファンタジー」誌上で告知されておりましたが、本作「従魔とつくる異世界ダンジョン」のコミカライズが、「マンガUP!」にて4月18日より開始されます。作画はマジコ!さんで、内容は書籍版に即しつつ、若干変更されたものになります。クロウを初めとする各キャラクターが生き生きと描かれていますので、宜しければご覧下さい。

なお、コミックスの発売は6月7日の予定となっております。

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― 新着の感想 ―
[良い点] お疲れ様でした。 書籍化おめでとうございます! もしも、肥料やり過ぎて食人花とか群生したら、テオドラムも涙目になるだろうな(笑)
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