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第二百三章 招かれざる客~@船喰み島~ 2.精霊たちの働き

『……テオドラムのやつらじゃないと言うのか……?』

『何となくだけど違うような気がするって。身のこなしとかが違うみたいよ?』



 服装を見ると冒険者のようだが、だからといって冒険者に偽装した兵士でないとは言えない。ただ……歩き方や目の配り、姿勢などを見る限り、どうもテオドラムの兵士とは違っているらしい。

 精霊たちにそこまで判るものかと内心で(いぶか)ったクロウであったが、精霊たちも伊達にあちこち飛び廻っている訳ではないらしい。()して、クロウが精霊門を「(いざな)いの湖」に開設した今となっては、テオドラム兵を目にする事など珍しくない。それに何より――



『あの島って他に人はいないんでしょう? だったら、兵士が冒険者の振りをする理由も無いじゃない?』

『いや……やつらとしては、本当に無人島なのかどうかを確かめるのも目的じゃないのか? だとしたら、いるかもしれん目撃者に備えて、身を偽る事も無いとは言えん。……だがまぁ……演技に身を入れるあまり、不慣れな方法で警戒するとも思えんか……』



 少なくとも、普通の下っ端兵士を間に合わせで冒険者に仕立てた……というのではないらしい。それが判っただけでも収穫だろう。



『……とは言え……せめやつらの()(じょう)ぐらいは知りたいものだな……』



 クロウの願いはややあって叶う事になった。



・・・・・・・・



『……イスラファン……だと?』

『うん。何だか気にしてるみたい』



 こっそりと近寄って侵入者たちの会話を盗み聞きした精霊によると、会話の端々(はしばし)にイスラファンの名が出てくるのだという。



『具体的な事は口にしないみたいだけど、気付かれたら(まず)い――とか何とか言ってたって』

『ふぅむ……?』



 口ぶりから察するに、イスラファンの者ではないらしい。となると、イスラファンと付き合いがある国の密偵だろうか?



『……〝イスラファン〟という言い方をしていたんなら、そこの商人の競争相手とかではないだろう。もしもそうなら、商人なり商会なりの名前が出てくる筈だ。〝イスラファン〟という言い回しをしているなら、交流のあるどこかの国に所属している……と見るのが妥当だろう』



 成る程――と、クロウの分析に感心するシャノアや眷属たち。



『……〝知られたら(まず)い〟と言うからには、現時点でイスラファンと付き合いがあり、なおかつ、その付き合いを壊す気は無いという事だろう。……これだけでは絞り込みには使えんかもしれんが……敢えて推測を逞しくするなら、沿岸国か?』



 取引相手という事も考えられるが、知られて(まず)いという事であれば、(むし)ろ同盟国――この場合は他の沿岸国――ではないか? 推測だけなら幾らでも立てられるが、現状ではそれを確認する(すべ)が無い。

 (しば)し思案に沈んでいたクロウであったが、ややあって顔を上げると、腹を(くく)ったような表情で(つぶや)いた。



『……このままでは手詰まりだな。……俺が現場へ飛ぶしか無いか』



 自ら(ふな)()み島へ(おもむ)くと表明したクロウ。



『だ……大丈夫なの?』



 シャノアは心配そうであったが、クロウとて何の策も無しにこういう事を言い出した訳ではない。



『幸いに、島の地下にはダンジョン用の空間だけは設置してある。俺が「ダンジョン転移」で向こうに行くのに問題は無い』

『だけど……それだけじゃ何の解決にもならないわよね?』

『そこでダンジョンマジックの出番だ。具体的には、「仮想ダンジョン」のスキルを使ってみようと思う』



 「仮想ダンジョン」とは、ダンジョンロードたるクロウのダンジョンマジックにあるスキルの一つである。任意の範囲をダンジョン化した場合にどのようなものになるのかをシミュレートするスキルで、ダンジョン化した場合に取り込む事になる存在なども――解析結果付きで――教えてくれる。実際にダンジョン化する場合に較べると消費魔力は著しく少なく、それゆえに魔力の動きを気取られる事も、その痕跡を後に残す事も無い。

 このスキルであれば隠密裡に、男たちの()(じょう)を「鑑定」できるのではないか。

 クロウはそう考えていたのだが……



『……モルファンとはまた、予想外の答が出て来たな……』

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