挿 話 従魔たちの食糧事情
今回も挿話です。
俺は今、マンション近くのスーパーにカップ麺を仕入れに来ている……従魔たちのリクエストに従って。……うん、大事な事なのでもう一度。従魔たちのリクエストです。
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切っ掛けはライの思い出話。最初に俺のマンションに行った時に食べた、俺の食べ残しのカップ麺のスープ――とカップそのもの――が美味かったという話にキーンが食いついた。
『マスターっ! 僕っ! カップ麺って! 食べた事ありません!』
『い、いや、落ち着け、キーン。カップ麺とかは塩分が多くてな、お前達の健康にはよくないからな……』
『そんなのっ! 食べてみなきゃ判りませんっ!』
『ちょっ、ちょっと待て、落ち着けって』
食い付きそうな勢いのキーンにたじたじとなったところで、ハイファが割って入った。
『キーン……少し……落ち着き……なさい』
『でもっ!……』
『ご主人様の……獣魔術は……私たち……従魔の……健康状態を……確認……できたのでは?』
あ、そう言えば……
『だったらっ! 僕っ! 食べてみますから! 確認して下さい!』
あ……コレはもう何を言っても駄目だな。食べさせなきゃ収まりそうにない……。
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結局、マンションに買い置きしてあったカップ麺――選りに選って濃厚味噌バターだよ――を作って、洞窟内で小分けして試食させる事にした。試食前に全員の体調をチェックしておき、食後に定期的に体調のチェックを行なう。確か、過剰な塩分を摂取すると高血圧になりやすい筈だ。血圧など血液関係を重点的にチェックすればいいだろう。
『ほらよ、熱いから気をつけろ。冷ますと食べやすくはなるが、麺が伸びて不味くなるから注意しろよ』
一応注意はしたが、案の定キーンは熱さなど気にも留めずに食い付いた。あぁ、そう言えば火魔法持ちだったよ、コイツ。
『マスターっ! コレっ、美味しいです!』
そうか、よかったな、キーン。
ライは元から熱さなど気にしない。器の中に入り込んで、面も具も汁も、一気に吸収している。
『ますたぁ、美味しぃですぅ』
スレイは……以外というか案の定というか、実に上品に食べるな。決してペースは遅くないんだが、落ち着いた感じで食べている。熱くないのか?
『このくらいならそれほど気になりませんな。麺と汁を一緒に食べると、実に美味でございますな』
ハイファはライと同じだな。粘菌形態で中身を一括して取り込んでいる。やはり熱さは気にならないようだ。
『このくらいの……塩分と……油分なら……問題……ありません』
で、ウィンなんだが……ワームって器用に麺を啜り込むんだな……。ある意味、一番正統派の食べ方だよ……。
『主様、これ、凄く美味しいです。食感も面白いですし』
結論を言うと、カップ麺一食程度ではうちの子たちの健康には影響ありませんでした。寧ろレベルアップに寄与したみたいで……。どうも地球世界の食品でも、加工の工程が多い食品ほど――言い換えると手のかかった食品ほど――従魔のレベルアップの効果が高いようだな。
そう言うとキーンが、我が意を得たりという感じで宣言した。
『マスターっ、僕たちのレベルアップのためにも、これからも時々「カップ麺」っていうのを食べさせて下さい!』
理論武装しやがった……。
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そういった次第で、俺は週一回くらいの割合でスーパーにカップ麺やらその他の食い物やら――駄菓子を与えたのも拙かった――買いに来る羽目になったわけだ。ジャンクフードでエンゲル係数が跳ね上がったよ。まぁ、ジャンクフードばかりじゃアレだから、健康に良さそうな食品も選んで食べさせてるんだけどね。
クレヴァス組にも持って行ってやらなきゃ駄目だろうな……。ダンジョンコアたちにも、酒か何か差し入れしてやるか……。
明日は新章に入ります。




