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第二百章 ダンジョンマスター友の会 5.ダンジョンマスター懇親会(その1)

 さて、そんなこんなで「ピット」改め新生「ピット」に招き入れられたダンジョンマスターたちであったが……驚きと(おそ)れを禁じ得ないでいた。


 仄聞(そくぶん)していた(かつ)ての「ピット」は、獲物に事欠くあまりダンジョンマスターたるダバル自らが、ダンジョンモンスターを率いて狩りに出かけていたそうだが……今やそんな面影はどこにも無い。

 元々は(ただ)の坑道であった筈のものが、随所に分岐や遮蔽物・罠を伴う、凶悪なダンジョンに変じている。しかも、配置されているダンジョンモンスターが(いず)れも強力であった。(かつ)ての「ピット」にも〝強力なモンスターはいた(・・)〟ようだが、今や〝強力なモンスターしかいない(・・・・・)〟ようではないか。一体何が起きたというのだ。


 ――訊くまでも無い。



「……つまり……これが……?」



 (ささや)くように、或いは(かす)れるように問いかけた地区会世話人――註.一年交替――のダンジョンマスターに対して、事も無げにダバルが答える。全ては主たるダンジョンロードのお力である――と。


 ()くして、骨の髄にまで〝役者が違う〟事を叩き込まれて従順になったダンジョンマスターたちと、そんなつもりは露ほども無かったクロウとの、或る意味で歴史的な懇親会――註.〝友の会〟視点では証人喚問――が開催されたのであった。



・・・・・・・・



「ふぅむ……世間一般のダンジョンとは、そういうものなのか……」

『自分がどれだけ異常なのか理解した? クロウ』

 


 シャノアの失礼なコメントはエレガントにスルーして、クロウは先達たるダンジョンマスターたちから聞いた内容を反復していた。


 それによると世間一般で言うダンジョンとは――


〝魔力あるいは魔素が濃厚に集積した場所に到達したダンジョンシードが、自分の生育環境を保持するために周囲の地面や壁面を強化・変形したもの。内部に棲息するダンジョンモンスターと共生関係を結んでおり、モンスターに安全な住居を提供する一方で、モンスターが持ち込んできた獲物やモンスターが排出する(ざん)()や魔力を(かて)としている〟


 というようなものであり、ダンジョンマスターとは――


〝ダンジョンコアと一種の契約を結び、ダンジョンの成長およびダンジョンモンスターの行動をある程度コントロールする代わりに、ダンジョンの採餌活動を効率化してダンジョンに寄与する技術を持つ者〟――の事である。


 端的に言えば――



「或る程度にまで育ったダンジョンを探し、そこのコアと契約するのが、ダンジョンマスターとしての第一歩です……通常であれば」

「むぅ……薄々勘付いていたが……俺のダンジョンは〝一般的な〟ダンジョンとは、(いささ)か毛色が異なっているようだな」



 〝薄々かい!〟とか〝(いささ)かなのかよ!〟とか……突っ込みたい点は多々あれど、空気を読んで黙っている先輩ダンジョンマスターたち。

 ちなみに、今回の「懇親会」に参加しているダンジョンマスターは、


・「ピット」からダバル。

・「迷いの森」からトゥバ。実際には「迷いの森」にはダンジョンマスターと言える存在はいないのだが、クロウと面識のあるトゥバが代理という事で出席している。

・「ゴーラの窪地」からワグ。

・「ユフラの古洞」からマット=マグ。

・「魔像の岩室(いわむろ)」からモンド。


 ――という顔ぶれであった。


 この他に、イラストリアには(かつ)て「バモンのダンジョン」というダンジョンがあったのだが、これは既に討伐済みの廃ダンジョンであるため、ダンジョンマスターはいない。

 トゥバを除けば(いず)れも歴戦のダンジョンマスターたちであるが、そんな彼らから見ても、クロウという新人は色々な点で規格外――或いは非常識――であった。


 (そもそも)クロウのダンジョンは、一般的なダンジョンとは設計思想の段階からして違う。と言うか、ダンジョンそのものをダンジョンマスターが設計し造成するなど、ダンジョンマスターとしての経歴を積んだ彼らにしても、今まで聞いた事が無い。


 とは言え、或る意味ではそれも無理のない事であった。


 ダンジョンとして世間に認知されているものに限っても、モローの「双子のダンジョン」は、勇者たちへの復讐戦のために設計・構築されたものであり、シュレクの「怨毒の廃坑」は、テオドラムの兵士や鉱夫を追い出すためにダンジョン化したもの。「災厄の岩窟」に至って初めて「リピーター」という概念と目標が採用されたが、あれとてテオドラムへの嫌がらせと、兵士を貼り付けさせて塩漬けにするのが目的である。

 言うなれば……クロウは飽くまで侵入者や周辺社会に対する影響を念頭に置いて、()わば戦力としての観点からダンジョンを整備していたが、一般的なダンジョン事情はそうではない。一般的なダンジョンとは、何を()いてもまず「生物」、或いは「生物共同体」なのである。

 この辺りは、なまじクロウがTRPG(テーブルトークRPG)のダンジョン観に毒されていたが故の誤解であったと言えよう。


 さて、(おのれ)のダンジョン観と世間一般のそれとの間に(かい)()がある事に、(おそ)()きながら気付いたクロウではあったが、今更一般的なダンジョンの発生過程をなぞる気などさらさら無い。

 クロウが知りたいのは、そういう一般的なダンジョンはどういう構成になっているのかと、その収益性についてである。どうやって餌を引き込んでいるのか?


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― 新着の感想 ―
[一言] クロウのダンジョンで最もダンジョンらしいのは、 クレヴァスかな? 一応、生きのものが住んでるから。 人を誘ってるという意味では、迷い家かなぁ でもあれって、中で戦闘もないし死人も出ないか。…
[一言] この情報へのお土産として、帰りにダンジョンマスターとコアが内心絶叫をあげそうな逸品をポンと手渡してきそう。 やったなダバル、対ダンジョンロードの苦労人同盟が組めるかもしれないぞ。
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