表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
927/1806

第百九十八章 革騒動~第二幕~ 11.イラストリア(その1)

「……一体全体、何でそんな話になったんで?」



 早朝からイラストリア王国の国王執務室に集まっているのは、例によって例の如き四人組であるが、今朝はこれにイラストリア王国外務卿たるマルシング卿が加わっている。


 ――という事はつまり、国際的な厄介事が生じたと言う事であり……それに巻き込まれる事がほぼ決定しているローバー将軍とウォーレン卿としては、恨み言の一つも言いたくなろうというものだ。……が、恨み言は後で存分に言ってやるとして、今は事態の把握が先決である。


 ――錚々(そうそう)たる面々をして頭を抱えさせるに至った事態というのは、マナステラが使者を派遣しての、ノンヒュームたち――正確に言えば「ノンヒューム連絡会議」――との伝手(つて)を結ぶのに助力してほしいという要請であり……そして、その対価として秘密裡に提案された〝対テオドラムにおける協力〟の申し出であった。



「……公式には、我が国は取り立ててテオドラムと事を構えておる訳ではない」



 公式には、それは確かに宰相の言うとおりであるのだが、



マナステラ(むこうさん)だって、んな能書きなんざこれっぽっちも信じちゃいねぇから、こうして秘密提案という形で持ちかけて来たんでしょうが」



 ――という、ローバー将軍の発言の方が実情には即しているだろう。



建前(たてまえ)論は(しばら)()いておくとして――マナステラの真意はどこにあるんですか? こう言っては何ですが、たかだかノンヒュームとの仲介と対テオドラム戦略への協力では、釣り合いが取れていないのでは?」

「あぁ? んなもん、釣り合いが取れる程度の協力しかしねぇって事だろうが」



 ウォーレン卿の疑問を言下に切って捨てたローバー将軍であったが、マルシング卿の分析によると、事はそれほど単純なものではないらしい。



「まず第一に、ノンヒュームとの友誼の問題は、お主が考えておるほど軽いものではない。……少なくとも、マナステラにとってはな」

「……どういうこってす?」

「ノンヒュームたちが――何を考えてなのかは知らんが――我が国で古酒と『幻の革』を放出した事は、結果的にマナステラの顔を潰したような事になった。ノンヒュームとの融和を(うた)っておきながらの、この為体(ていたらく)だ。それが()の国の(メン)()と国策をひっくり返しかねない事ぐらい、お主とて解っておろう」

「まぁ……それくれぇは……」

「しかも、問題はそれだけに留まらん」



 難しい顔付きのマルシング卿の発言に反応したのは、王国の懐刀と称されるウォーレン卿であった。



「……クリーヴァー公爵家の件が蒸し返される(おそれ)がある――と?」

如何(いか)にも。古酒に続いて『幻の革』でまでイラストリアの後塵を拝するような事になれば、現政権の失政を糾弾する声が上がってくるのは火を見るより明らか。その挙げ句、追及の矛先がクリーヴァー公爵家の粛正にまで遡った日には、ただでさえ(くすぶ)っている火種が再燃するのは間違い無い」

「……それくれぇで王家が潰れるような事にゃ……と、言いてぇが……実際に公爵家を取り潰すような国だからな、あそこは……」



 難しそうな表情で(つぶや)いたローバー将軍に、我が意を得たりという顔付きのマルシング卿が相槌を打つ。



「その通りだ。信頼すべき筋からの情報によると、既にマナステラ国王府における勢力図に変化があるという。この状況で隣国マナステラが混乱する事は、外務を預かる者としても看過しかねる」



 ――というのが、外務卿としての公式見解であるらしい。

 それは理解したが……



「……んで、イラストリア(う ち)としちゃ、この件にどう対応するってんで?」

「まぁ待て。話はそれだけではない」

「「はぁ?」」



 ――少しばかり厄介な話だと思っていたが、どうも続きがあるらしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ