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第二十四章 ダンジョンゲート 2.携帯型ダンジョンゲートの開発

時系列としては、王国軍のダールとクルシャンクが、エルギンを出てモローに向かっている頃の話になります。

『マスター、ダンジョンって、持ち運べるんですか?』

『判らん。判らんが、ダンジョン壁は持ち運べたからな』

『普通はないじゃろうが……お主のダンジョンは普通ではないからのう……』

『なにせ主様のダンジョンって、「壊れて」いますからねぇ……』


 ハイファの爆弾発言を受けて、早速に検証が始まった。とは言え、こういう事は専門家に任せるのが一番だ。



・・・・・・・・



『……それで私のところへ来られたのですか……』


 俺たちは今、「還らずの迷宮」にきている。携帯型のダンジョンゲートについて、ダンジョンコアたちの意見を聞くためだ。


『で、どうだ?』

『そうですね……お話を聞く限り、持ち運びたいのはダンジョンそのものと言うよりも、ダンジョンゲートの機能なんですよね?』

『……そうだ、な……そう言う事になるか』

『普通は難しいですが、クロウ様ならできるかも知れません。ダンジョンマスターの私室などに掛けてある絵や鏡などが、他のダンジョンへのゲートになっている事があります。それを利用すればあるいは……』

『携帯できるダンジョンゲートの開発は可能か……』

『ただしゲートである以上、場合によっては敵に攻め込まれる可能性も考えておくべきかと』

 その都度ダンジョンを仮設するリスクと、接続したままのダンジョンゲートを持ち歩くリスクか。一応技術開発は進めよう。決して目先の欲に動かされた訳じゃアリマセンヨ?


『まぁ、それはゲートの繋がる先を工夫すればいいだろ』

『あ、クロウ様、私の方からも一言』

『うん? レムスか、何だ?』

『そのゲートからは否応なくダンジョンの魔力が漏れると思うのですが……』

 むぅ、それは安全保障の面で問題があるか……


『ご主人様……他の魔道具に……偽装……できませんか?』

 あぁ、その手があったか。



・・・・・・・・



 皆の協力を得て、携帯型ダンジョンゲートの開発は進んだ。


 最初に問題になったのは、ダンジョンゲートを何に展開するかという事であった。


『持ち歩く事を考えると、あまり大きなものはいけませんな』

『なおかつ、持ち歩いておかしくないものじゃな』

『袋?』

『ありがちじゃろうが、間口が狭過ぎはせんか?』

『いや、多分ゲートの拡張は任意にできる筈だから、それは問題ないだろう。ただ、何の魔道具に偽装する? 魔法の袋にすると隠す意味がないぞ?』

『あっ、マスター、いつか見せてもらった、フロシキってどうですか?』

『むぅ、悪くはないな』

『軽いと……風に……飛ばされませんか?』

 戻ろうとしたらゲートがひらひらと宙を飛んでいて……うむ。却下だ。


『指輪は?』

『自分でゲートを通る事もあるからな、自分の身につけるものは駄目だ』

 自分の体に空いた穴を自分でくぐるって、さすがにどうかと思うぞ。


『魔石はぁ?』

『置いてる隙に盗まれない?』


 こんな感じで紛糾していたのを、ハイファが一言で締めくくった。


『いっそ……使い捨ての……魔法陣を……描いた紙に……偽装したら?』

 

 その辺が落としどころかな。



・・・・・・・・



 次いで、実際に紙上にダンジョンゲートを展開できるかどうかを試してみた。最初は少し戸惑ったが、慣れると問題なくゲートを展開できた。ゲートを付与した紙を持ち運ぶ事も、運んだ先でゲートを展開するのも、いずれも問題なくできた。これで俺の野望は大きく一歩踏み出す事ができた。


 実験用のゲートは破棄して、本番用のゲートを準備する。丈夫である事も考慮に入れて、植物性の紙でなく羊皮紙を用いる事にする。描く魔法陣には、この世界の人間に解読しにくいだろうと言う事で、漢字を用いる事にした。適当な本で魔法陣を選び、それっぽい漢字を適当に配置しておく。当然、魔法陣としての機能などない……筈だ。


 セキュリティの面を考えて、携帯ゲートの繋がる先は新たに造った収納庫に設定した。この収納庫は、今のところはバレン領内の山の地下深くに、ただ二つのゲートだけを持つように造ってある。ゲートの一つは当然羊皮紙、もう一つは俺たちの洞窟の第一層に繋がっている。接続の設定は簡単に変えられるので、いずれはもう少し安全に配慮した構成にしようか。



 こうして、俺たちの携帯用ダンジョンゲートが完成した。


明日は試験運用の話になります。

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― 新着の感想 ―
? 風呂敷が飛ぶのなら、羊皮紙も飛んでっちゃうんじゃ? まあ、持ち運びに便利で使いやすければ良いか。
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