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第百九十六章 王都イラストリア 5.国王執務室(その2)

 事情を知らされた二人も、困惑するやら呆れるやら。まさか()の国がそんな事になっていようとは……



「ウォーレン卿の指摘とこの情報、無関係とは思えんじゃろうが」

「確かに……マナステラがそんな事になってるってぇんなら、その空気を乱したくないってぇ判断は(うなず)けますな」

「じゃろう?」



 ――違う。


 マナステラの国民感情がそんな事になっているなど、クロウの方では想像もしていない。

 マナステラの情報が入って来るルートとしては、マナダミアに開店した砂糖菓子店があるが、()の店を訪れた客の関心と話題は(ひとえ)に菓子に集中しており、小癪なテオドラムごときが話題に上る事は無いのであった。

 ゆえに結果として、クロウがマナステラの国民感情を誘導或いは醸成する目的でスタンピードを未然に防いだ……などというのは誤解もいいところなのであるが、



「……あのⅩの事ですからな。そのくれぇの事は企んでも……」

「おかしくありませんね」



 ――などと言われるまでに買い被られているのであった。



「しかし……シュレクのダンジョンがそんな事になっていようとは……」

「テオドラムはこの事を承知してるんですかね?」

「さて……話から察する限りでは、(ろく)でもない兵士どもであったようじゃからな。素直に報告しておるかどうか……」

「村はダンジョンに侵蝕されている――ぐらいのでっち上げはしているかもしれませんね」



 ――ご名答。



「一つ気になっている事があるのだが……」



 ――と、口を差し挟んだのはマルシング卿であった。



「何です?」

「シュレクというのは、モルヴァニアとの国境から、どれくらい離れているのかね?」



 思いがけない質問に(きょ)()かれた様子の一同であったが、やがて再起動したウォーレン卿がそれに答える。



「……シュレクから国境までの道は通じていないようですが、直線距離にして……そう、馬車で四日というところでしょうか」

「ふむ……国境の近くとは言えないのだね?」

「言えませんね。それが何か?」

「いや……外務としての感覚では、Ⅹがそのシュレクとやらをテオドラムから切り離す工作をしているようにも思えてね」



 外務卿が投じた爆弾発言に一同が硬直する中、それまで沈黙を守っていた国王が口を開く。



「……マルシング、その可能性があると考えておるのか?」

「……正直申し上げて、判りませぬ。これがもう少し国境寄りであったなら、モルヴァニアを動かす策もあり得ましょうが……そこまでの距離があるとなると。……仮にⅩめがシュレクを獲ったなら、今度はモルヴァニアとの交渉も必要になりましょうし……」

「……うむ……」

「ただ……テオドラムを切り崩す策として考えれば……」

「あり得なくは……ないか……」



 ――クロウが聞いたら肝を潰すような結論である。


 (しばら)く無言に包まれた執務室に、国王の決定が響く。



「……この話は当面ここだけの話にする。そなたらも口外は慎むように」

「「「「――は!」」」」

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