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第百九十六章 王都イラストリア 4.国王執務室(その1)

 ローバー将軍とウォーレン卿の二人がマナステラでのクロウの動きについて検討した翌日、早朝の国王執務室には五人(・・)の男性の姿があった。



「昨日第一大隊の二名から上げられた報告に関連して、外務の方から興味深い情報が寄せられたのでな。本日はマルシング卿にもご足労を願っておる」



 もの問いたげな二人の視線に答えるように、宰相がゲストについての説明を行なった。本日のゲストはマルシング卿、イラストリア王国の外務卿である。



「――てぇと、マナステラの方で何か出てきたって事ですかぃ?」

「うむ。それ自体はうっかり見過ごしてしまいそうな、他愛も無い話であったのじゃがな。昨日のお主らの報告に(かんが)みると、ちと興味を引かれそうな話であるのでな」



 重要情報とは思われていなかったために、特に国務会議の話題にも上らなかったらしい。



「では、マルシング卿の方から説明してもらおうかの」



 宰相の要請に一つ(うなず)きを返して、外務卿が解説の口を開いた。



「まぁ、それ自体は本当に他愛も無い話でね。マナステラに派遣した間者の一人が、酒場での話題として報告してきたものだ。……一言で云ってしまえば、マナステラの冒険者の間で、テオドラムへの反感が募っている」



・・・・・・・・



 第一大隊の二人から報告を受けた宰相は、マナステラの国情を探る必要ありと判断し、まず外務が掴んでいる情報を精査する事から始めたのである。そこで引っかかってきたのが、先般述べたような情報であった。



「……毒麦の件以来、テオドラムの信用は底を割る勢いで低下している筈です。敢えて注目する必要があるというのは?」



 ウォーレン卿の問いかけに対して、



「まず、嫌われている理由というのが違う。確かに毒麦の一件は、マナステラにおける対テオドラム感情を大いに傷付けたが、冒険者の場合は――(じか)に小麦を買う機会が少ない事もあってなのか――そこまで強い反感は広まっておらなんだ。それが一転したというのは、どうやら我が国への視察団が関わっておるらしい」



 突拍子も無い事を聞かされて、目をパチクリとさせるウォーレン卿とローバー将軍。



「マナステラの視察団?」

「……ひょっとしてアレですか? 五月祭の時の……?」

「そう、それだ。何でもエルギンへ派遣された視察団の者が、テオドラムの悪行の話を聞き込んできたらしくてな」



 そういって外務卿が話し出したのは、シュレクのダンジョン村におけるテオドラム兵の暴虐ぶりと、村人を護ったスケルトンブレーブスの活躍の話であった。死霊術師のスキットルが村人から聞いて、エルギンの冒険者たちの間に広めたものである。

 元々テオドラムという国に好感は持っていなかった冒険者たちであるが、この話を聞かされた時には全員が激怒したらしい。一気に反テオドラムの空気が醸成され、それ以降もずっと反感を――特にノンヒュームたちが強く――(たぎ)らせているのだという。



「マナステラはノンヒュームたちとの融和を、国策として強く打ち出しているからな。ノンヒュームがテオドラムに強い反感を抱いていると聞いて、この情報を無視はできぬと持ち帰ったようだ。そして――」

「その話がマナステラの冒険者やノンヒュームたちに広がった……と?」

「うむ。今では王国上層部が困惑する勢いで、国民の間に嫌テオドラム感情が巻き起こっているそうだ」

「何とまぁ……」

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