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第百九十六章 王都イラストリア 1.王国軍第一大隊(その1)

「ウォーレン、またぞろ妙な話が転がり込んで来たらしいな」



 イラストリア王国軍第一大隊の副官室に、例によって無遠慮にズカズカと踏み込んで来たのは、第一大隊長にしてイラストリア王国軍総司令官のローバー将軍である。



「耳が早いですね。はい、マナステラからの情報です」



 マナステラで起きた幻のスタンピードについての情報は、王国と冒険者ギルドの二つのルートでイラストリアに入っていたが、冒険者ギルドの方はこの情報を表に出さず、ギルド上層部に留めておいた。ギルドの不始末という訳ではないが、情報の内容が何とも判断に困るものであったためである。幹部職員は知っておくべき情報であるが、その一方で一般の冒険者では困惑の材料にしかならないだろう。

 ゆえに、こちらのルートでの情報はウォーレン卿の(もと)には届かず、外務からの定時報告として国王府にもたらされたものが、改めてウォーレン卿へと――正確には王国軍第一大隊司令部へと――通知されたため、情報は二日遅れで届いていた。


 そして……その情報の内容を報されたローバー将軍は、マナステラの関係者各位と同様に頭を抱えていた。



「……要するに、スタンピードは有ったのか? 無かったのか?」



 問題の本質を的確に突いた将軍の質問であったが、ウォーレン卿の答は端的なものであった。



「スタンピード……そう呼んでいいのかどうかは少し躊躇(ためら)われますが、少なくともモンスターの大移動が目撃されている以上、それは有ったのでしょう。誤認・誤報という点も考えられなくはないでしょうが、その点はマナステラの冒険者ギルドも確認している筈です。謀略の可能性は(もと)より低いと思われます」

「……てぇと、その――仮称スタンピードが消えた理由が問題になるが……Ⅹか?」



 不都合な事態はすべてⅩのせいにしているような気がして、内心で(いささ)(じく)()たる思いを禁じ得ないローバー将軍であったが、他に理由が見当たらないのも事実である。



「その可能性が高いかと。……丁度その点を検討していたところです」



 マナステラの冒険者ギルドはダンジョンの巣分かれを疑ったようだが、新たにダンジョンが発生したという報告は、今に至るも届いていない。



「一応冒険者を派遣したという話ですが……」

「その……『百魔の洞窟』だったか? 何の異常も見られなかったってのか?」

(くだん)の冒険者の報告では。モンスターの行動や密度にも、以前と異なる点は見られなかったようです」

「ふん……そのスタンピードってやつが向かってた先はどうなんだ? 何か目的地らしいもんは無かったのか?」

「マナステラの冒険者ギルドも、その点には疑いを持ったようです。やはり数名の冒険者を動員して、進行方向と覚しき辺りを検分させたらしいですが……」

「何の成果も無し――か?」

「えぇ、怪しむべき点は無かったとか」



 ――正確に言えば少し違う。


 マナステラの冒険者は、ギドたちが目指していた洞窟を――正確にはその入り口を見つける事には成功していた。

 ただ、モンスターがこの洞窟に潜り込んだような痕跡が一切見られなかったのと、魔力の点でも異常な反応が無かった事から、ここはシロだと結論付けたのである。入り口から少し入った辺りまでは一応調べはしたのだが、クロウが――少なくとも現時点では――入り口付近までのダンジョン化を進めていなかったため、ただの洞窟だとしか思えなかったのである。念の入った事に、ダンジョンと露見するのを嫌ったクロウがウィスプを配置していたため、ダンジョン特有の魔力も漏れ出す事が無かった。

 マナステラの健全な冒険者たちには、ダンジョンモンスター皆無のダンジョンなど想像もできなかった事もあって、(くだん)の洞窟が既にダンジョンマスター(クロウ)の手に落ちているなどとは、気付かれもしなかったのである。



「てぇと……やっぱりモンスターどもは、元の鞘に収まったと考えるのが妥当か」

「それが一番整合的な仮説かと……少なくとも、現時点では」



 何しろあの(・・)Ⅹが関わっていると覚しき案件だけに、ウォーレン卿の言葉尻にも用心が見え隠れしている。



「……ウォーレン……こいつぁ以前に見せてもらった分布・考察と整合するのか?」

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― 新着の感想 ―
[一言] 行き当たりばったりの行動を陰謀論でまとめるターンが来ましたよwww
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