第百九十一章 船喰み島 4.仮設住居跡?
『ここに間違い無いようですね。小屋の跡らしいものもあります』
『小屋の跡……って……この残骸か?』
『細ぃ丸太がぁ、散らばってるだけですねぇ』
『文字どおり、掘っ立て小屋って感じですね。マスター』
クロウのイメージでは、仮にも伝説――と言うか、怪談――になるほど難破船荒しを続けてきた一味のアジトである。もう少ししっかりしたものを想像していたのだが……
『……こんな、吹けば飛ぶような小屋に立て籠もって、難破船荒しを長年続けてきたっていうのか?』
それはある意味で大したものだと、クロウがその執念に感服しかけたところで、
『……いえ……確証は無いですけど……何か、間に合わせ感が強いですね……?』
――と、ハンスも首を捻っている。
『一時凌ぎの小屋という訳でございますかな?』
『仮設住居ってやつ?』
『何となく……そんな感じが……』
『あれっ? だったらハンスさん、ここじゃないどこかに本宅があるって事ですか?』
ウィンの言葉に一同周りを見廻してみるが、他にそれらしき残骸は見当たらない。ふと思い付いたクロウが死霊術で探ってみるが、怨霊の類は残っていないようだった。
『……突発的な何かが起こって撤退した、或いはさせられた――という事なのか?』
『そんな感じですね』
一同うち揃って首を傾げていたが、ともかく何か手懸かりが無いか探してみようという事になった。その結果――
『マスター。ちょこちょこ残ってますね、遺品』
『遺品て……まぁ確かに、使いものにならんガラクタを捨てていったという風ではあるな』
『主様、こんなのもありました』
ウィンが拾ってきた金属製のコップのようなものを見て、ハンスの表情が急に変わる。
『……ハンス、どうかしたか?』
『……ご主人様、これはかなり古いものです。……エメンさんの方が詳しいかもしれませんが……少なくとも数百年前の形式ではないかと……』
『何?』
『そぉんな昔からぁ、難破船荒しなんてぇ、やってたんですかぁ?』
『あ、いぇ……その可能性も無いとは言えませんけど……』
『……出土品……か?』
『えぇ……どうも錫製の酒杯のようですね。……足の部分が折れてますけど。……摩耗の感じからみて、足が折れたままで使っていたようですね』
新たな謎が加わった形ではあったが、少なくとも、ここ以外に探すべき場所がある事は判明した。
『……態々木を伐ってここに広場を作ったというんなら、探すべき場所はここから遠くない筈だ』
だとしたら、クロウの「仮想ダンジョン」で見つけ出す事もできるのではないか?
『……どうやらそれっぽいものを見つけたぞ。崩落して埋まった洞窟跡らしい』




