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第百九十一章 船喰み島 2.痕跡

提督(アドミラル)、十時方向に島影を確認、変針します』

『変針宜候(ようそろ)。問題の島を確認したら、上空から周辺の様子を――暗礁の有無を含めて――確認せよ。安全が確認され次第、速度と高度を落として静かに着水』

諒解(ラジャー)



 上空からの観察では、魔力の偏在や澱み、大型モンスターの存在は確認されなかった。赤外線探査でも、火を使っているような痕跡は認められていない。クロウの【仮想ダンジョン】でも、島全体を一気に把握する事まではできない以上、後は接近しての調査しか無い。


 暗礁や浅瀬が怖いので、クロウは島から少し離れた海域に着水するよう指示を出した。そのまま(しばら)く夜の海を遊弋(ゆうよく)して、水上から測深させていたら、間を置かずしてその成果が現れた。



提督(アドミラル)、海底に沈船と(おぼ)しき残骸多数を発見しました。かなり古いもののようです。ただ……』



 基本的にテキパキとしたクリスマスシティーには珍しく、報告の途中で口籠もっている。



『――ただ、どうした?』

『はい、残骸の分布に不自然な偏りがあります。海流の動きを考えても、それだけでは説明ができません』



 クリスマスシティーは戸惑うような声で報告しているが、クロウには思い当たる節があった。だが、その点を()(ただ)すより前に、クリスマスシティーの報告に食い付いた者がいた。



「――おかしいというのは、どうおかしいんですか!?」



 レンツの宿から一人だけ、ダンジョン転移でクリスマスシティーへ移乗してきたハンスである。ハンスたちが乗る馬車は、普通の馬車に見えて実はダンジョンなので、こういう反則技も可能になる。

 (そもそも)この話を訊き込んできたのはハンスだし、昔の話というなら歴史学者がいた方が良いだろうと、クロウが招いたのであった。


 そんなハンスが――念話を使う事すら忘れて――報告に割り込んできたのにクリスマスシティーも驚いたようだが、ハンスの問いに――こちらは落ち着いて念話で――答えたのはクロウであった。



『多分だが、島からアクセスし易い場所に偏ってるんじゃないのか?』

『――はい、そのとおりです。……なぜお判りになりました?』



 少しばかりの驚きを声に(にじ)ませてクリスマスシティーが問い返すが、クロウの答は、



『何、偽の(かがり)()か何かで船を難所へ(おび)き寄せ、難破させた後で積荷を掻っ払う連中がいたんじゃないかと思っただけだ』



 ――というものであった。

 そして、それを聞いたハンスは、



『……そうか……難破船荒し(レッカー)……』



 仮にも歴史学者を名告(なの)る以上、気付くべきであった事に気付けなかった……そういう悔しさを(にじ)ませて――今度は念話で――(つぶや)いたのであったが、



『ま、難船荒しなんて評判が立てば商売あがったりだからな。連中だって気付かれないように用心はしてただろうよ。実際レンツの町じゃ、未だに露見してないんだろう?』



 既に昔話の(はん)(ちゅう)に入っている事もあって、難破船荒しの噂はレンツでは聞かれなかった。その点は確かにクロウの言うとおりなのだが……仮にも歴史学を志す者として、内心で(じく)()たるものがあるのも事実なのであった。



『ま、過ぎた事よりこれからの事だ。怪談話が人為的なものである以上、ここには人が住んでいた筈だ。今はどうなのか判らんが……ともあれ、ここを拠点にしようという以上、上陸して調べるしかあるまい。……クリスマスシティー、もう少し島へ接近できるか?』

『可能ですが……もし島に住人がいた場合、疑念を持たれる危険性が高まりますが?』



 現在は夜間で島からはそれなりに離れている上、クリスマスシティーは灯火管制をした上に認識阻害の魔術まで展開している。なので人目に付く危険性は低いが、今以上に島へ接近した場合、気付かれる危険性は無視できなくなる。



『むぅ……よし、クリスマスシティー、気付かれないであろう距離まで接近し、煙幕を展開して岩礁に偽装しろ。上陸班は俺が飛行魔術で連れて行く。ハイファはすまんが船に残って、本部との連絡に当たってくれ』

『『はい!』』


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