第百八十九章 「間の幻郷」ダンジョンマスター顛末 4.チーム「スリーピース」
採用すると言ってやったら、三体の精霊は大喜びだった。採用決定と同時に三体の姿がハッキリと認識できるようになったが……シャノアの時と同じだな。
三人はそれぞれ闇・土・風の属性を持つ精霊らしい。闇精霊の少年はシャノアと同じく短い黒髪だが、軽い猫っ毛のシャノアとは違って癖の無い直毛だった。三人の中では一番落ち着いているように見えるな。
土精霊の少年はシャノアと同じように軽い癖っ毛だが、髪の色は黒ではなくて褐色。薄くて目立たないが雀斑があり、利かん気そうな顔付きだ。あと、三人の中では一番小柄だが、その一方で一番活溌敏捷に動いていた。……土属性の精霊って、もう少しどっしりと落ち着いたイメージだったんだが……個人差があるのか?
風精霊の少年は薄いアッシュブロンドの巻き毛で、どこか飄々とした印象を受ける。三人の中では一番背が高いが、落ち着いたというより油断できなさそうな雰囲気を持っている。……いや、腹黒そうとか言うんじゃなくてだが。
……こいつらに「間の幻郷」を任せる訳か……。不安が無いと言えば嘘になるが、まぁその辺りはネスに手綱を絞ってもらうしかないか。
『それでクロウ、この子たちの名前はどうするの?』
……名前?
『当たり前でしょ? クロウのダンジョンを任せるんだから、クロウの配下になるって事じゃない? だったら、名前を付けるのが筋ってもんでしょう』
呆れたようにシャノアが言うんだが……そうなのか? いや……確かに俺の部下という事になるんだろうが……名前を付けるものなのか? ……そりゃ確かに、従魔やダンジョンコアには名前を付けたが……
チラリと横目で精霊たちを見たら、皆ワクワクした感じでこっちを伺ってる。……こりゃ駄目だな……
しかし……精霊の名前なんて、何て名付けていいのか判らんぞ? シャノアは外見だけで決めた……と言うか、口を衝いて出た感想がそのまま名前に使われたしなぁ……
『……ダンジョンマスター志望の精霊の名前なんて、どう名付けたらいいのか判らんぞ?』
――そうシャノアに振ってやったんだが、
『難しく考える必要は無いのよ? クロウの頭にふっと浮かんだ事を、そのまま名付ければいいんだから』
……そう言われてもなぁ……三人合わせて一人前のダンジョンマスターなんだから、ダン・ジョン・マスト……じゃあんまりか。
幾ら何でもこれは無いなと思ったんだが、案に相違して……
『陛下! 是非それで!』
『それでお願いします!』
『それがいいです!』
……肝心の当人たちが食い付きやがった……。いや待てお前ら、名前なんて一生のもんだぞ? 軽々に考えると後で後悔するぞ?
『『『お願いします!』』』
あぁ……もぅ問答無用って感じだな。中二病を侮ってたわ。仕方ない……
『……では、闇精霊のお前をダン、土精霊のお前をジョン、風精霊のお前をマストと命名する』
……雰囲気だけは厳かに言ったつもりだが、名前の響きがそれを裏切って余りあるな……。だが、当の本人たちは大喜びだし……これでいいんだろう……いい事にしよう。
しかし……三人で一チームのダンジョンマスターか。チーム名とかあった方が便利なのか? 「三体の三分の一」じゃ言いにくいし……「スリーピース」とでも呼んでおくか。
あぁ、ついでに言うと、名前を付けたと同時に魔力が少し失われる感じがして、三人と縁が繋がる感覚があった。……これもシャノアの時と同じだな。
『当面はネスの補佐として、仕事内容を覚えるように。「間の幻郷」の運営に関してはお前たちの意見を参考にさせてもらうが……巨大ロボ……ゴーレムについては当面凍結とする』
『『『解りました!』』』




