第二十二章 靴と金策 2.軍靴
クロウが思いついた解決策とは?
「窮すれば通ず」。今日という今日はこの格言が身に沁みるな。
奇跡のように俺が思い出したのは、七年前に死んだ祖父ちゃんの事だ。形見分けの時に確か祖父ちゃんの軍服など一式を引き取った筈だ。拳銃や軍刀はさすがに無かったが、それでも何となく面白そうだったから貰っておいたんだよな。あの中に確か軍靴があった筈だ……。
慌ててマンションにとって返し、物入れの奥から古ぼけた行李を引っ張り出す。中身を漁ると……あった! 祖父ちゃんの軍靴! 祖父ちゃん、ありがとう! サイズはどうにか合いそうだ。靴紐はボロボロ、革もすっかり硬くなってるが、そこは何とか手入れすれば……。
『ますたぁ。錬金術はぁ?』
いつの間にかちゃっかり室内について来ていたライ――いや、皆いるのか――がアイデアを授けてくれた。
よしっ、錬金術、発動!
結構ハイになっていたのだろうが、驚いた事にちゃんと錬金術が発動して、革は見違えるように柔らかくなった。ボロボロだった靴紐も、いつの間にか新品同様に戻っている。こんなんでいいのか錬金術。
『どうにか履けそうだ』
『マスター、これで、万事解決ですか?』
『いや、こっちじゃもう鋲靴なんてないから。これ一足じゃ不安だし、第一、新品同様に若返ったとは言え、元がかなり古い以上、いつ鋲が抜けるか不安だからな。町へ出て靴を買うのは決定だな』
『町へ履いて行く分だけは確保できたという事ですな』
『そこで、話は金策のところへ戻るわけだ』
当面の靴は確保したから話は金策の所へ戻る……筈だったのだが……。
『マスター、これって、何ですか?』
『それは飯盒だな。戦地ではこれで飯を炊いたんだ』
『ますたぁ、これはぁ』
『ヘルメット、いわゆる鉄兜ってやつだな。これを被って頭を守ったんだ』
『ご主人様、これは何ですかな?』
『勲章だな。祖父ちゃん、勲章貰ってたのか……。戦功のあった者に与えられる褒賞だよ』
『主様、これ何ですか?』
『三八式小銃の薬莢だな。う~ん、なんて説明したらいいか……』
皆が行李の中身に興味津々だったので、行李ごと洞窟に持ち込んで広げてやった。マンションの中だとハイファが見れないからな。
『ご主人様……その……包みは……何ですか?』
うん? これは……銃剣じゃないか。祖父ちゃん、こんなの持ってたのか…。
『一種の軍用ナイフだな。ここを銃……杖みたいなのに付けるんだ』
あまり錆びてないな。お守り代わりに持って行くか?
今日は祖父ちゃんのお蔭で助かった。寝る前にお念仏上げておこう。
もう一話投稿します。




