第百八十六章 クロウ 3.今更な話
今明かされる衝撃の事実(笑)――という回です。
『……あいつらのパーティ名って……誰か知ってるか?』
使役主たるクロウが今頃になってこんな反応を示す辺りで、この件に対する関心の度合いというものが知れようというものである。
『……聞いた事がありませんでしたな……』
『ロムルス、レムス、お前たちはどうだ?』
『いえ……』
『彼らもパーティ名は口にしませんでしたから……』
カイトたちを自陣に引き入れてから四年目、今更にして表面化してきた問題であった。
『まぁ……無くても話は通じてたからな……』
『ますたぁ、そう言ぇばぁ、ニールさんたちもぉ……』
『あぁ……あいつらのパーティ名も聞いてなかったな……』
今更知ったからといって何だという訳でもないのだが、気付いた以上放置しておくのも何となく気分が悪い。
――という事で、今更のように訊いてみる事になったのであるが……
・・・・・・・・
『――俺たちのパーティ名っすか?』
『そうだ。迂闊な事に今まで気にした事が無くってな。この際だから確かめておこうという話になった。……気を悪くせんでくれ』
『いえ……そりゃ構わねぇんっすけど……何だったかな……』
『……おぃ……?』
『あ、いえ……ちっとばかり事情ってやつがありまして……』
カイトに代わってパーティリーダーのハンクが説明したところによると……
『ははぁ……ヤルタ教の勇者に認定された時点で、それまでのパーティ名を変える事になったのか……』
『はぁ……以前は「ジャンピング・ガイズ」と名告っていたんですが、何でも〝栄光あるヤルタ教の戦士の名には相応しくない〟――とか言われまして……』
『……何とも上から目線の話だな』
勿体ぶった名前を貰いはしたのだが、そっちのパーティ名を使う機会はあまり無く、そうこうするうちにクロウの軍門に降ったので――
『正直、今の今まで忘れていました』
――という事らしい。
『何つーか……妙に今一な名前だったよな? ……「金の亡者」っつったけ?』
幾ら何でもそれは無いだろう――と呆れるクロウたち。
『違うのは確かですけど……何となくそれっぽい名前でしたよね』
……それっぽい名前なのか……
(『おぃ……「金の亡者」っぽいパーティ名……って、どんなのだ?』)
(『ちょっと想像がつきませんね……』)
『……思い出したわ。「黄金の勇士たち」よ』
『あぁ……言われてみりゃあ、そうだったな』
『似てるような違うような名前でしたね』
……そう言えば、「猛者」を「もうじゃ」と誤読したって笑い話があったな――と、以前に聞いた話を思い出すクロウ。
ちなみに、ニールたちのパーティ名は「遍歴者」だった。
『しかし……冒険者カードにはパーティ名は記載されんのか? 記載があれば、俺がカードを偽造した時に気付けたんだが』
クロウの持つラノベの知識では、作品ごとにパーティ名の記載はあったりなかったりと、一定していなかったように思う。ラノベ作家の端くれとしては、この際事実はどうなのかを知っておきたい。
そう思っての質問に返ってきた答は――
『パーティから放逐された者が、以前のパーティ名を詐称した事があったのか……』
『記載事項の変更は、ギルドに申請しないとできませんから。その隙を衝いての犯行でした』
『以来、ギルドがゴタゴタに巻き込まれるのを嫌って、今のようになったと聞いてます』
『成る程なぁ……』
訊いてみないと判らない事というのはあるものだ。




