挿 話 モローへの来訪者
本日更新分の一話目は挿話です。
『クロウ様、最近私たちの迷宮に入ろうとする冒険者が増えてきたんですが。他に、迷宮に入らないまでも周囲で何かを探し回っている冒険者が明らかに多くなっています』
『……済まん、ロムルス、レムス。それって多分俺のせいだ』
俺は仕方なく、王都で魔石珠――魔石化したガラス玉――を見られ、説明に窮してモローの郊外で拾ったと言い抜けた事を話した。
『そういう事でしたか…。迷宮の奥に進むでもなく地面を探していたので、おかしいとは思ったんですが。あ、迷宮内に入った冒険者はもちろん片付けました。彼らの屍体はどうしましょうか?』
『もう屍体は充分だろう。吸収していいぞ、ロムルス』
事情を二人に説明した後で、この先もガラス玉目当ての連中が増えるようなら少し面倒な事になるかもと気づいた。
『あ、いえ、最近は宝探しの人数も減ってきたようです。ダンジョン外の事はあまり察知できないので、確実ではありませんが』
『ふむ。洞窟外のダンジョン領域を更に拡大して、情報収集の能力を高めた方がいいかもしれんな』
ロムルスとレムスの迷宮はいずれも、ダンジョンの周囲の状況を把握するために、洞窟外にまでダンジョンの領域が広がっている。ただし洞窟外の領域はさほど広くなく、また、情報収集以外の機能は持っていない。ダンジョンとしての機能が制限される一方で、ダンジョンの魔力が漏れにくく正体を気取られにくいという利点がある。外部フィールドの拡張についてクロウとロムルスが話していると、レムスが気になる事を告げた。
『あ、クロウ様、そういえば先日、旧「モローのダンジョン」に入って行った二人組がいたんですが……』
『二人組の冒険者か?』
『いえ、それがどうやら国軍の兵士のようで、その二人が入って行った翌々日に王国のものらしき飛竜がやって来て、すぐに飛び去っていったんです』
『……何だ? 何となく愉快じゃないな。兵士はどうした?』
『しばらく残っていたようですが……今は戻ったようです』
『……気になるな……』
旧ダンジョンでの出来事についてレムスだけが報告したのは、単にレムスの「流砂の迷宮」がロムルスの「還らずの迷宮」よりも旧ダンジョンに近いからである。ロムルスも飛竜の来訪については把握していたが、詳細な情報が不明だったので、レムスに発言の機会を譲ったのである。
兵士が何かに気づいたのか? クロウは王国の兵士の行動が気になっていた。
もう一話投稿します。




