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第百八十五章 祟りの地 1.ベジン村

 不本意ながらこそこそと逃げるようにヤシュリクの町を発ってから三日後、カイトたちの一行は街道筋にある小さな村に辿(たど)り着いていた。

 旅人向けの宿すら無く、少しばかりの食糧と水を補給する以外に何も無いかと思われたベジンというこの寒村で、交渉上手のハンスが思いがけない情報を拾い出してきたのは、カイトたちが村外れの空き地で野営の準備を整えている頃であった。



「……(たた)り?」

「この村にかよ?」

「いえ、この村から分かれる道をですね、北に二日ほど少し進んだところに、放棄された集落跡地があるそうなんですよ」

「で、そこに(たた)りってやつがある、と」

「村の人たちの話しに()れば――ですね」



 ハンスが食糧の仕入れ旁々(かたがた)訊き出してきた話に()ると、そこは(かつ)ての植林地であったらしい。



「まぁ、掘っ立て小屋が十数軒あるだけの、開拓村と言うのも烏滸(おこ)がましいような小さな集落だったそうですが」

「んで? そこで何が何に(たた)ったってんだ?」

「事の始まりはですね、土のせいなのか何なのか、皆伐後に植えた木の育ちが良くなかったんだそうで」

「……それだけなのか?」

「それだけと軽く言いますけど、当の村人たちにとっては大事(おおごと)ですよ?」

「……いやちょっと待て。俺も詳しい訳じゃないが、育林というのは一朝一夕にできるようなものじゃないだろう。入植者たちにも、それなりの計画と備えがあった筈だぞ?」



 納得できぬと異論を投げかけたハンクに対して、ハンスが答えて言うところでは、



「そうなんですけど、この時は色々と状況が好くなかった。まず、木の苗が中々育たないために、現場は草や低木が茂った(やぶ)になっちゃいまして……」



 そこで繁茂した草の実をたらふく食べて、ネズミが大繁殖したらしい。それが畑の作物を食い荒らしただけでなく、疫病まで媒介したのだという。幸か不幸か疫病の症状は重篤ではなかったが、病人の看病のためになけなしの食糧と人手を費やす事になった。



「そこへもってきて、今度は冬にイノシシが現れまして……」



 細々と育った僅かばかりの苗木が、腹を空かせたイノシシに食い荒らされたのだという。それだけでなく、イノシシを狩ろうとした村人たちが数名、返り討ちに遭ったのだそうだ。



「そりゃ……災難だったな」

「いえいえ、災難はここからでして」



 積雪地帯の斜面を皆伐した上に、その後の植生の回復が遅れたために、小規模な雪崩が切っ掛けとなって斜面の崩壊が発生したのだそうだ。

 


「「「「「………………」」」」」

「集落のうち、山に近かった十軒ほどが土石流に呑まれ、ベジンへ救援を頼みに向かった村人が吹雪に遭って遭難。異変を察したベジンの村人が助けに来た時、生き残っていたのは五名足らず。入植当初は三十人以上いたそうですけどね……」

「そりゃ……祟りの一つや二つ出てきても……」

「おかしかねぇな、本当に……」

「そんな事情で放棄された訳ですが、今も二~三軒の小屋……と言うか、その残骸が朽ち残っているそうなんです。噂じゃ盗賊が隠れ家に使っていた事もあるようですが……気が付くといつの間にか……いなくなって(・・・・・・)るんだとか」

「おぃおぃおぃ」

「念の入った話になってきたな……」



 呆れ顔の冒険者五名を見渡してハンスが言うには、



「――という訳なんですが……さて、どうします?」

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― 新着の感想 ―
[一言] 続々と増える新迷宮
[一言] どう見ても、最初の伐採が連鎖してるだけじゃないか 因果を知らなければそりゃ祟りとしか感じれないか
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