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第百七十六章 諸国見廻り組巡察記 1.ガベル手前の野営地(その1)

 ヴィンシュタット駐留員の役目をアムドールに引き継いだカイトたちは、五月祭の四日後に意気揚々とヴィンシュタットを出立した。カイトは一応貴族家の問題児という設定なので、アムドールが乗って来た馬車――実はクロウがダンジョンマジックで造り上げた(れっき)としたダンジョン――に座乗しての出発である。


 その九日後にガベルから一日の距離にある野営地に到着した一行は、人目が無いのをこれ幸いと、馬車(ダンジョン)の外見を――貴族らしく重厚で高級感溢れるものから、冒険者らしく実用本位のものに――変更した。同時に着替えと変装を済ませてしまえば、マナステラの貴族カイト・オーガスティンとそのお付きの一行は姿を消し、代わってベテランっぽい雰囲気を(まと)った冒険者たちの登場である。



「着替え、終わりましたか? マリアさん……って、結局その服装にしたんですね」

「えぇ。以前の服装は憶えられていそうだから変更しろって言われたしね。ご主人様が見せて下さった……カタログ?だったかしら? あれに載っていた中から、動き易そうなものを選んだの」



 そう言うマリアが(まと)っているのは、胸の下で裾を縛った半袖のサファリジャケット、その下にはヘソ出しのチビT、下半身はジャケットとそろいのデザインの短パンという、相変わらず露出過剰気味のファッションであった。



「あたしの流儀だと魔力の流れを肌で感じ取るから、長衣(ローブ)なんかで肌を隠さない方が好いのよ」

「子供の頃、樹怪(エント)と獣人の魔術師に教わったんでしたっけ……一般的でない流儀を習うと、服装も一般的でなくなるんですね……」

「まぁ……男どもが寄って来るのは鬱陶(うっとう)しいわね」



 外見だけ(・・)は北欧風美人のマリアが露出過剰なファッションに身を包んでいれば……この場合は包まなければ(・・・・・・)と言うべきかもしれないが……そりゃ男どもが放って置く訳が無い。明かりに群がる昆虫のごとく、ワラワラと寄って来るのには閉口しているのだが、さりとて魔術の効率を落としてまで、厚着をしようという気にはなれないのであった。

 とは言え、ヴィンシュタットにいた貴族家の護衛マリアと同一人物と看破されては、今後の活動にも何かと差し障る。衣装を改めるようにとのクロウの厳命が下ったのであったが、前述のように魔術の発動に差し支えるという理由で反論されたため、妥協案としてクロウがマリアの望む衣装を提供するという事になったのである。ちなみに、軽いコミュ障を標榜するクロウこと(からす)丸良志(まるながゆき)に、ブティックで女物の衣服を買うなどという真似ができよう筈も無く、カタログから選んでの通信販売と相成ったのであった。



「けど……さすがにご主人様の世界の服だけあって、異国風な感じが半端じゃありませんね。ボタン?……っていうのがふんだんに付いてますし」



 この世界にもボタンは存在するが、どちらかと言えば装飾品的な扱いであり、一般市民の衣服では未だ紐止めが主流である。ちなみに、短パンに付いていたジッパーは、さすがに先進的過ぎて問題だというので、クロウが泣く泣く手作業でボタンに付け替えている。


 一方、マリアと話しているフレイの衣服はというと、以前と同じ長衣(ローブ)を纏っているだけである。何でも、今は亡き祖母からの贈り物だそうだが……



「……相変わらず子供っぽいデザインよね。……似合っているのがまた何とも言えないけど……」



 ロップイヤーラビット風のフードが付いているそれは、誰がどこからどう見ても子供用としか言えないデザインであった。事実、フレイがまだ子供の頃に贈られたものだそうだが、サイズ自動調整のエンチャントが(あだ)となって、今に至るも着用可能なのであった。



「で、でも、モノ自体は良いんですよ? 丈夫で汚れませんし、簡単な保護の機能も付いてますし……この耳だって、実際に聴覚向上のエンチャントがかかってますし」

「そうなのよねぇ……」



 さすがに貴族のお付きがソレは無いだろうという事で、ヴィンシュタットでは着用していなかった。なので、改めてこれを身に着けるだけで、簡単な変装になるのであった。



「あたしとは別の意味で目立ってるわよねぇ……」

電子版を購入された方はお気付きでしょうが、今回の話は電子版限定の特典SSの内容――マリアの幼少期の話――を踏まえています。また、フリンの衣裳については、書籍版二巻口絵の設定を踏襲しています。が……お読みにならなくても、特に不都合はありません。

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― 新着の感想 ―
[一言] まだ貴族モードのほうが目立たなかったんじゃ。。。
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