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第二十章 モロー 1.バレン男爵領冒険者ギルド

王国から派遣された二人が、王都とバレンの間に横たわる山脈を徒歩で越えて登場です。本章のタイトルはモローですが、今回はモローへの途中に立ち寄ったバレンでの調査の話になります。

 ギルドの執務室で手渡された書状に目を通したギルドマスターは、顔を上げて二人の男に目を()った。



「なるほど、御用のおもむきは理解した。で、何が聞きたい?」

「最初にモローのダンジョン、今回確認されたやつではなくて、以前に討伐されたというダンジョンについて(うかが)えますか?」



 ギルドマスターは何も言わずに振り返ると、後ろの書棚から一(そろ)いの資料を引っ張り出した。



「一通り目を通して、解らん事があったら聞いてくれ。持って帰られちゃ困るが、メモを取るくらいなら構わん」



 二人の男――王国軍第一大隊から調査のために派遣されて来たダールとクルシャンク――は、手分けして資料を読み始めた。



「この……ここに書いてある遺跡というのは?」

「ああ、あのダンジョンはどうやら遺跡か何かだったらしくてな。洞窟に石段のようなものが刻んであったり、神棚……でいいのか? 何か(まつ)ったような跡があったらしい。粗末な壺みてぇなモンもあったから、必要ならあとでうちの連中に言って出してもらえ」

「いえ、そこまでは……。調査はしなかったんですか?」

「調査? 金目当てで段平(だんびら)振り回すだけの連中だぜ? そんな気の利いた事ができるもんか。ただ、さっき言ったように、めぼしい出土品だけはこっちで取り上げて仕舞い込んである」

「一覧のようなものがあったら見せて下さい。それと……新しい二つのダンジョンについて追加情報は?」

「ない。と、言うより、近づくのを禁止している」

「古い方のダンジョンについて、何か変化は?」

「ギルドとしては特に調べちゃいない。ただ、モンスターの分布調査であの辺りも見回っているはずだが、何も報告が上がってきてないという事は、大きな変化がなかったという事だろう。少なくとも俺はそう判断してる」



 しばらく相談していた二人は、ギルドマスターに向かって切り出した。



「新たな二つのダンジョンについての資料を見せてもらえますか?」

「資料ったって、判っている事はほとんどないぞ。以前に報告書を送ったろう。あれに書いてある以上の事は、逆さに振っても出てこんぞ?」

「二つのダンジョンをダンジョンと判断した理由について詳しく」

「ああ、『(かえ)らずの迷宮』については、入口から一、二歩だけ入ってみたやつがいてな、壁を見てダンジョンと判断して逃げ出したらしい。あと、うちの魔術師がダンジョンを見て、ダンジョン特有の魔力を感じた。『流砂(りゅうさ)の迷宮』の方は入ったやつはいないが、砂の壁や天井がしょっちゅう崩れ落ちてるのに、通路が一向に埋まる気配がない事から判断した」

「モンスターについては何も変化がない?」

「あぁ、報告書を出した後もダンジョンの周りだけは調べさせているんだが、何にも変化がないそうだ」

「二つのダンジョンについて、これまでのダンジョンと違ったところは?」

「報告書にも書いたが、どちらも狭い。また、『流砂(りゅうさ)の迷宮』の方は壁がぼろぼろ崩れていやがる。あんなのは見た事も聞いた事もねぇ」


「モローの近くでドラゴンの気配がしたという話は聞きましたか?」

「あぁ、だが、向こうでの噂話をきいただけで、この辺りじゃ何も確認されていないから報告は上げなかった」


「ありがとうございます。とりあえずお尋ねしたい事はこれで全部です。また何かあればお邪魔するかも知れませんが。それと、さきほどお願いした出土品の一覧について……」

「あぁ、担当の者を呼ぶからそいつに聞いてくれ」

明日はこの章の続きになります。二人がエルギンとモローを訪れます。

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