第十八章 金策 4.錬金術
主人公が久々に自分のステータスを確認します。
翌日王都から洞窟に戻った俺は、ダンジョンマジックを使っての加工を試していた。原石を変形・研磨して球形にするのも、ドラゴンの骨の欠片をナイフに加工するのも、いずれも問題なくできた。茶目っ気を出して、ナイフの方にはドラゴンの姿を彫れないか試してみたんだが、ちゃんとできた。イラスト描く要領でできるもんだな。芸は身を助けるって本当だね。
『はぁ~、ダンジョンマジックってこんな事もできるんですね~』
『主様、凄いです』
『ますたぁだけ?』
『多分な……』
ダンジョンマジックといっても、これじゃまるで錬金術だな。「壊れたダンジョン」のスキルは錬金術にも通じるのか。
ふと嫌な予感がした俺は、久しぶりに自分を鑑定してみる。
【個体名】クロウ 烏丸良志(からすまる・ながゆき)
【種族】??? 唯一無二の存在
異世界からこちらの世界に移動した際の衝撃で、たまたまダンジョンコアと融合した異世界人。融合したダンジョンコアがまだ未熟なものであったため得たスキルは少ないが、その後の度重なる異世界間移動に伴って身体に膨大な歪みを蓄積した結果、常識外の魔力を保有するようになった。ただし、現時点では風魔法を除いて魔法スキルを得ていないため、魔力の使用は制限された状態にある。
【地位】ダンジョンの支配者
【レベル】12
【ユニークスキル】「壊れたダンジョン」 レベル9
★自分を起点とした半径三十メートルの範囲内に任意にダンジョンを設置できる。設置できるダンジョンの規模は術者のレベルに依存する。
★自分で設置したダンジョンの内部を瞬時に移動できる。
★自分で設置したダンジョン間にダンジョンゲートを設定する事で、ダンジョン間を自在に移動できる。
★ダンジョンの内部構造を任意に変更できる。
★ダンジョンコアを生成および育成する事ができる。
★ダンジョン壁と同様の能力をその身に纏う事ができる。
★ダンジョン内外にモンスターを召喚できる。召喚できるモンスターの種類は術者のレベルに依存する。また、召還後にモンスターを強化できる。
★ダンジョン内外でアンデッドを使役できる。同時に使役できるアンデッドの数および活動範囲は術者のレベルに依存する。
★召還したダンジョン壁の材質を任意に変更できる。変更できる範囲は術者のレベルに依存する。
★任意の場所に任意の形でダンジョン壁を召還し、これを操って攻撃に用いる事ができる。召還したダンジョン壁には属性魔力を付与できる。召喚できるダンジョン壁の規模および召喚位置は術者のレベルに依存する。
★支配下に置いたダンジョン内の任意の空間に属性魔力を放出し、攻撃に用いる事ができる。放出できる魔力の強さは術者のレベルに依存する。
【スキル】異言語理解 鑑定 従魔術 眷属強化 念話 風魔法 錬金術
シルヴァの森、バレン、ノーランド、ヴァザーリと転戦し続けた上に、クレヴァスのダンジョン構築とドラゴン退治までやったからな、色々とレベルも上がったようだ。何気に表記法も変わってるしな。それに……。
『どうしたんですか、主様?』
『……スキルに錬金術が生えていた……』
『あれっ、だったら、黄金とか出し放題じゃないですか!』
『いや、仮にできたとしても、怪しさ疑わしさが増すだけだぞ?』
『何がきっかけで……錬金術を……得たのでしょう?』
『ダンジョンマジックであれこれやってるからじゃないですか?』
『確かにあれこれやらかしておるのぉ』
『……ダンジョンマジックの中に、対象はダンジョン壁限定だが似たようなスキルがあるからな、それがきっかけで生えてきたのかもしれん。まぁ、今のところは錬金術でできる事も不明だし、あまり派手にやらかすのはよそう』
『うむうむ。そろそろお主も自重という事を覚えてもいい頃合いじゃ』
うるさいよ。
『ともあれ、持て余し気味だったドラゴンの素材も捌ける目処がついたな。骨もまだ大量に残ってるし、当分素材に困る事はないか』
『ドラゴンの骨……目立ち過ぎ……ませんか?』
『いっそアンデッド化して、こき使っちゃえばどうですかぁ♪』
その時、周囲の空気が確かに凍りついた。キーン、お前な……。
キーンの発言については、頭の片隅にでも留めておいて下さい。
明日は新しい章に入ります。




