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第百六十五章 廃村アバン 2.現地視察

『……思っていたより狭いな』



 ――というのが、幽霊船(アンシーン)から廃村を見下ろしてクロウが最初に抱いた感想であった。その(つぶや)きに答えたのは、幽霊船(アンシーン)からの眺めに浮かれているパーティメンバーに代わって、目下クロウの案内を務めているハンクであった。



『まぁ、街道沿いにあるとは言え、所詮は村でしかありませんから』



 耕地の跡も含めて考えると、村としての規模はそこそこだったのだろう。ただ、住居と耕地をそれぞれ(まと)めて配置する構造になっているため、廃屋が建ち並ぶ範囲は予想したより狭くなっている。それでも現代日本の住宅地よりは、家々の間隔が広いのだが――



『……そのままダンジョンとして使うには、少々狭過ぎる……か?』



 幽霊が出るという噂があるのは好条件だが、ダンジョンとして考えた場合には範囲の狭さがネックになりそうだ。家屋にしても、何の工夫も無い同じような小屋が建ち並ぶばかりで、攻略側としても面白味に欠けるだろう。……ダンジョンマスターが気にかける事ではないかもしれないが。



『とは言っても、拡張する訳にもいかんよなぁ……』

『廃村とは言え街道筋にある訳ですから……』



 廃村の拡張などやらかした日には、色んな意味で悪目立ちするのは確実である。



『とすると、通常のダンジョンと同じように、地下に階層を追加するしか無い訳だが……それもなぁ……芸が無いというか……』

『どうするんですか? マスター』



 単に出入口として使うだけなら今のままでも問題無いが、地脈だの何だのと面白そうな立地条件が揃っている。ただの出入口として使うのは(いささ)か勿体無い。さりとてダンジョンにするには狭過ぎる。はてさて、どうしたものか……。

 ――と、考えていたクロウの脳裏に思い浮かんだのは、イラストリア・マナステラ・モルファン三国の国境にまたがる森林ダンジョン、「迷いの森」を訪れた時の記憶であった。あのダンジョンは転移トラップを巧妙に使って、侵入者は気付かないうちに地下の階層に誘い込まれる仕組みになっていた。ここでも同じ手法を使えないか?



『ふむ……地下の階層に廃村みたいなのを造って、転移トラップでそこに誘導してやるか。だとすると、先に地下の構造やら立地条件やらを確認しておいた方が良いな』



 ここの近くには地脈が走っていると聞く。それがダンジョンの開設にどう影響するか、その辺りも事前に確かめておいた方が良さそうだ。



『降下しますか? 提督(アドミラル)

『いや……まずは全景を見渡せる今の位置――空中――から確認した方が良いだろう。このままの高度を保て』



 そう言うが早いか、クロウは「仮想ダンジョン」というスキルを使用した。これは任意の領域に対して、仮にそこをダンジョン化した場合にどのようなものになるのかをシミュレートするスキルで、ダンジョン化した場合に取り込む事になる存在なども――解析結果付きで――教えてくれる優れものだ。

 そしてその結果は……



『うん?……人間らしき反応があるな? 廃屋の中に数名。……感じからすると、身を潜めているように見えるんだが……』



 確かに廃村の廃屋なら、追われている者が身を隠すには打って付けだろう。脛に傷持つお尋ね者や、街道を通る商人を狙う盗賊などが身を潜めているのも、そう考えれば不自然ではない。

 ただ、廃村に出るという幽霊の噂と併せて考えると……



『さて……これはどうしたものかな』


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