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第百六十五章 廃村アバン 1.事前情報

 その報せは、ヴィンシュタット組からもたらされた。



『廃村?』

『はい。こちらもヴォルダバンの領内ですが、テオドラム並びにモルヴァニアとの国境に近い場所だそうです』

『不作でも続いて離村したのか?』

『いえ。何でも、テオドラムとモルヴァニアの間の緊張が高まるにつれて、戦乱に巻き込まれる事を恐れた村人たちが、うち揃って村を離れたとか』

『……テオドラムという国は、つくづく(ろく)な事をせんな……』



 クロウたちが何を話しているかと言えば、新たなダンジョンの候補地の件であった。何しろクロウが保護しているダンジョンシードの数は二つ。一つは「(こだま)の迷宮」を任せるとしても、もう一つのシードを任せるダンジョンが必要である。つまり、最低でもあと一つはダンジョンを都合しなくてはならない。

 そんな候補地の探索に、ヴィンシュタット組が熱心に取り組んでいる理由はただ一つ。早く外に出たいがためである。


 ハンス・ヘンデルというアンデッドをにわか学者に仕立てて、グーテンベルグ城の調査という名目で外に出る計画は立ったものの、ここヴィンシュタットの留守番が見つかるまでは外出はお預け。それまでに外に出る機会を得ようとすれば、ダンジョンを通して外に出るしかない……。

 ()くして、ヴィンシュタット組は一方(ひとかた)ならぬ熱意をもってダンジョン候補地の探索に励んでいたのだが、その勤勉さを神が――何の神かは判らないが――認めてくれたのか、新たな候補地となりそうな物件を探し当ててきたのであった。



『で? ダンジョンとして使えそうな場所なのか?』

『はい。勝手ながらダバル殿とネス殿のご意見も伺ってみました』

『……手回しが好いな。それで?』

『場所的に洞窟型ダンジョンには向きませんが、ゴーストタウン型のダンジョンなら可能ではないかとのご意見でした』

『ほほぅ……ゴーストタウン型……』



 中二心満載のクロウとしては聞き逃せない話であったが、話はそれだけではなく……



『実際にそういう噂があるようです。村の跡に幽霊が出没すると』

『何か成仏できない理由でもあるのか? 恨みとか心残りとか?』

『いえ……その辺りがどうもあやふやでして……』



 テオドラムのせいで不本意な移転を強いられたのは事実らしいが、旧村にそこまで執着した人物はおらず、単なるデマの可能性が強いという。しかし、人も通わぬ廃村で幽霊が目撃されるというのはどういう事か。



『それなんですが……一応は街道筋にあるので、廃村となった今も夜営場所として利用されているようです。あと、ネス殿によれば、(くだん)の村は地脈の上にあるようだと……』

『地脈だと?』

『はい。その恩恵で、村としての立地条件は好かったようですね』

『地脈か……ダンジョンの成立場所としてはどうなんだ? 不自然とかいう事はあるのか?』



 あり得ない場所にダンジョンなど造ると、余計な好奇心を(あお)る事になりかねない。今回のダンジョンの目的はあくまで出入口としてであり、余計な注目を浴びるのは好ましくない。……ダンジョンであるというだけで注目を集めるのは不可避だと思うが、クロウとしては、だからこそ余計な注目を集める要素は回避しておきたかった。



『いえ、地脈には魔力が集まり易いので、魔物や精霊が集まったり、エルフたちの村が作られたりする他、ダンジョンとなる事も珍しくは無いとか。これにはダバル殿も、うちのマリアも同意見でした』

『なるほど……なら(むし)ろ、カモフラージュには持って来いの場所と言えるな』



 改めてその所在地を確かめたところ、テオドラム・ヴォルダバン・モルヴァニアの三国が国境を接する場所の近くである。



『悪巧みをするのにも、色々と都合が好さそうな位置取りだな……』

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― 新着の感想 ―
[一言] 戦争を恐れて移動して廃村になったのなら、 戦争の危機が去れば戻る村人が多数いそうなんですけど。 しかも街道沿いで野営者が多いって、ダンジョンに不向きでは。。。 配下アンデッドが自由に出入りす…
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